川内村の隣、田村市都路町に、うなぎが食べられる店がある。近いのに、あんまり行ってない。行けてない。そこに行ってきたので、うれしくて書いてみます。
うなぎが好きだ。子どもの頃には、家でいいことがあったときとか、病気になって注射を打たれて泣きべそをかいた日とかに、食べさせてもらえた。都会っ子だから、ハレの日に餅をつく、という感覚はなくて、田舎にきてから、そういうものだと学習しているところだけど、都会っ子的には、それがうなぎだった。庶民のハレの日のごちそうだから、白焼きとかうな重より、うな丼がなつかしいきがしている。
お店は、都路の目抜き通りである古道にある。今は田村市市役所の支所になっている元都路村役場前にある、プレハブでできた仮設の商業施設、DO〜MOにある。もともと、原発事故の避難騒ぎの頃に、店がない、食べ物屋がない、という生活環境をなんとかするためにできたもので、そこで食堂をまかされたのが門馬さんだった。
門馬さんは、もともと国道288号線沿いで、関西うなぎを食べさせるということで名のしれた浪花屋さんをやっていた。まだ引っ越してきてない頃、このお店でうなぎを食べたことがあって、おぉ、関西風うなぎがこんなところで食べられるなんてと感激した覚えがある。
引っ越してきてしばらく、浪花屋が閉店してるのを知って、がっかり。小野町にも老舗のうなぎ屋さんがあるのだけど、もちろんそっちは関西風じゃないのだ。浪花屋さんは、関西に由来のある名前なんだと思う。初めていったとき、いろいろお話を伺ったことがあったけど、中身は忘れてしまった。
ふるす食堂の名前は、みんなまた戻ってこいよ、という願いをこめた古巣だと思ったけど、ここの地名が古道というのもかんでいるのかもしれない。最初、ふるす食堂にうなぎのメニューはなかったけど、やがてうなぎが復活して、今に至っている。
ぶらっと通りかかったときに食べようかなと思うと、ご主人が仙台の市場までうなぎを仕入れにいっちゃったから今日は食べられません、5時くらいまで待っててもらえば食べられるかも、とか、臨時休業です、とか、うなぎがなくなってしまった、とか、なかなか出会えないという点でも、ぼくにとっては貴重なうな丼だった。
月曜日、都路の北にある葛尾村でちょっとした集まりがあったので、その途中にうな丼を食べてから、と考えたのだけど、月曜日は定休日です、ということでまた撃沈した。
葛尾村での会議はせせらぎ荘というところが会場で、ここにはお風呂がある。その日の集まりは会議を終えてからそのままみんなで飲んで食べて泊まってしまえ、という企画だったので、さてロビーの机で一杯やり始めていると、お風呂上がりにのそーっと近寄ってきた人がいた。一瞬、酒の匂いに吸い込まれてきたのかと思ったけど、それが本日休業でお風呂に入りに来ていた門馬さんだった。集まりの中に都路の人がいたので、門馬さんは知り合いのその人のところに寄ってきたのだ。けっして、酒によってきたのではなかった。
今日行こうと思ったんだけどお休みだから、明日行こうかと思うんですという話をして、年には念を入れて行く前にも「これから行きます」と電話を入れて、今日こそは食いっぱぐれないぞとでかけていった。
予約してきました、きのうもお会いしましたけど、とお店に入ると、ちゃんと予約席が用意してあった。アンパンマンが待っている店というのは、この前、東京は新橋ですごいお店に出あったのだけど、その話はまた別の機会にしたい。
メニューは、以前は特上と上とミニってのがあった。うなぎ屋さんの特上っていうのは、うなぎの質がいいより量が多いというのがふつうみたいで、ここだけじゃなく、お気に入りのうなぎ屋さんはそういうところが多い。特上はうなぎ好きでも後悔する人が多いらしい。ここんところのうなぎ事情で、お値段はまた上がってしまっている。お安くはないので、苦しんで大量のうなぎを食べるのはもったいない。そしたら、いまどきはハーフってのがあった。ここんちのうな丼は1匹全部が一人前なので、その半分がハーフということらしい。
そして、まずは骨をご馳走になる。ちょっと塩が強いけど、お茶菓子として食べるとたいへんおいしい。ほんとはお茶じゃなくて日本酒の方が似合うけど、その場合は帰る足を確保しなければいけないから、ちょっとたいへんだ。
2年前の9月にミニと上をいただいていたので、ミニと上とハーフの上と、丼みっつお見せしましょう。見せるだけで、ご馳走はしてあげません。上は3,800円、ハーフ上は2,000円。ミニはやってないこともあるみたいだけど、1,000円でした。9月と2月だから、つけものがちがっているけど、つけものもおいしかった。
関西風だから、ふにゃっとしたいかにもうなぎという食感より、かりっとしている印象。もっとかりっとしていてもいいし、もちょっとご飯がかためのほうがタレご飯がよりおいしいような気はするけど、やっぱり安定の関西蒲焼きのおいしさ。
それでも、浪花屋さんの頃から食べているという地元の門馬さん友だちによると、最近、ようやく味が戻ってきたと手厳しい。こういううるさい地元のお客さんがいるから、鍛えられるというところはあるんだろう。客と店主が友だちで言いたいことを言いあう店は、一見さんには入り込みにくいかもしれないけど、たいがい、うまい。
そんなわけで、幸せになったのでみんなにも自慢したくなった。2年前に食べたときのうな丼の写真を探していたら、その当時に作られた地図がありました。2年たっているから、多少変わっているところもあるかと思うけど、これもあわせてご紹介しておきます。