雪は降ったって春は春。シーズンは開幕してます。えいえいおー

わな免許の試験

わな免許をとりました。

なわ免許

イノシシが悪さをするのに困り果てている今日この頃、うちらの地域がイノシシ捕獲(捕獲なのか保護なのか忘れたけど)のモデル地区になり、まずは免許所持者を増やしましょうと県の人からいわれて、じゃ、おれもとるか、と何人かが手を上げて、ぼくもついでにとらされる(まぁ手を上げたは上げたんだけど)ことになった。

正直、猟がしたいわけじゃなくて、イノシシがおとなしくしててくれればなんにもしなくたってかまわない。ジビエ料理が食べたいとか、野生動物をしとめたいとか、そういう欲求はさらさらない。まず、うちのあたりのイノシシは摂取制限とか出荷制限がかかっている。とっても売れない。勝手に食べるのは黙認の範囲だと思うけど、売れないようなものを食べる人もあんまり多くないから、それで原発事故以降、イノシシの捕獲量がうんと減った。

それじゃイノシシも増えほうだいだっていうんで、1頭あたりいくら、という報償金が出る。猟の達人になれば、これでけっこう稼げるんだけど、何だってそうだけど、そんなに甘いもんじゃない。毎日わなの見回りをして、かかっていたらとどめをさして(鉄砲は持ってないから、その他の方法で命を奪うことになる。この期に及んでも、動物虐待はしてはいけないことになっているから、その方法もなかなかたいへん)手続きを踏んで処理場に持っていって処理をしてもらうのが一連の流れ。なんだかんだと、片手間にやっていたんでは、まともにとれない。ちゃんととろうと思うと、技術も時間も必要になる。

とまぁ、あんまり明るい未来ではないのだけど、まずは免許を取ろう。ここには先輩が4人入るんだけど、免許とっちゃった人は断片的な情報しか教えてくれなくて、まぁなんだかわかんないけど、やってみようと、試験の申し込みから始めてみた。そしたらまず、お医者さんの診断書がいるという。麻薬はやってないか、精神状態は大丈夫か、という点について、お墨付きが入るんだそうだ。

どこの病院でやってもらうのか、先輩Yさんちにいったら、Yさんはお留守で、奥さんのTさんが「どこか行って、診断書書いてもらってたぞ、船引のO病院だったぞ」というんで、いっしょに免許を取る3人で行ってきた。「麻薬やってますか?」「やってません」「はいわかりました」みたいな、だいじょぶかな、みたいな診断で診断書をもらって、試験の申し込みをする段になって、いきなり試験なんか受けて大丈夫なのか、みんな講習会みたいなのに行ってるって話だぞという話になった。そういう情報を知ってるなら、早く言ってくださいよ。で、講習会の申し込みをしてみたら、近々の講習会は満員御礼で、次の講習会だと、試験に間に合わない。診断書はとってしまったから、3ヶ月の有効期限のうちに試験を受けなければいけない。とすると、1回遅らせて講習会を受けるのがよいのではないか、ということになった。ところがぼくだけ、遅らせた試験の当日は和歌山に行かなきゃいけない。「おまえは若いから、ぶっつけでやっても大丈夫だ、行ってこい」と言いくるめられて、ぼくだけぶっつけで試験を受けることになってしまった。不安だ。

Yさんちへいって、教科書と問題集を借りてくる。試験は70点取れば合格らしい。ちょっとやってみたら、2/3くらいは正解するみたいだから、なんとかなるかもしれない。脈はあるけど、でも不安なのは変わらない。だけどもトライアル大会が控えてたり締め切りがあったりして、試験勉強は結局試験直前までお預けになった。Yさんに「受かるかな?」と聞くと「聞いた話だが、村の別の連中が7人でぶっつけで試験を受けにいったら、一人しか合格しなかったって話だ」なんていう。ひえー。

これが運転免許だったら、なんとなく一般常識もあるし、なんとかなる部分もあるだろうけど、猟はやったことがないし、野生動物にもめったに出会わない。イノシシと馬の区別くらいならつくけど、タヌキとアライグマの区別はつかないと思われる。わなにかかったイノシシは見せてもらったことがあるけど、自分でわなをかけたことはない。なんとかやってみないと、7人中6人の中にはいってしまいそうだ。落ちたら恥ずかしいから、SNSで世界中に宣言したりはしないことにした。試験の申し込みをしたら、県の人から受け付けましたと電話がかかってきて「講習会は受けられますか?」と聞かれたので、満員で受けられませんでしたと答えると、電話の向こうの動揺をなんとなく感じてしまって、またまた不安になった。そういえば、試験を受けるなんて、もう何十年ぶりかもしれない。この前フォークリストの免許を取った時には、もうちょっと山を教えてもらってたから、あんまり不安はなかった。とにかく、鳥の名前を覚えなきゃいけないというのが、一番敷居が高い。

結局試験勉強は、試験の前の日だかに、丸一日、教科書を読んで問題集を解いて、それで終わった。実技試験もあるので、アニマルキャッチャーという簡易わなを持ってる人にお願いして、さわらせてもらった。それでほぼ試験勉強のすべてだ。どきどき。

当日、受け付け開始の1時間くらい前に試験場につくくらいにでかける。駐車場では、みんなクルマの中で教科書を広げている。ほかにやることもないので、ぼくも真似をする。んなことをしていると受け付けが始まった。いかにも猟をしそうな人はあんまりいない。若いお姉さんもいる。試験場に座ると、またみんな教科書を広げる。そんなにむずかしい試験なのかとまた不安になるも、やがて試験が始まった。

試験は30問だった。70点とろうと思うと、24問正解しないといけない。これを問題の片隅で計算して、えー、6問しかまちがえられないのか、とまた不安になる。3択だから、回答するだけなら、10分もかからないで終わっちゃう。でも確証がないから、もう1回見る。正しいものはどれか、誤っているものはどれか、をまちがえたりするから、油断できない。自己評価的に正解と思われるものをチェックしたら、19問だった。あと何問か正解しないといけない。でも確証がない問題は、むずかしいというより、知らない(勉強し損ねた)のだからこれ以上がんばりようがない。それでも3度4度と考え直してから、席を立った。問題についての質問には答えられない。印刷がかすれているなどの問題があったら手を上げろと言われていたけど、なにやら聞いているおっさんがふたりばかりいた。なにを聞いていたのかな?

筆記試験が終わったら、そのまま適応試験に並ぶ。何人かずつ部屋にはいって、体操をさせられ、からだが動くかどうかチェックされる。目の検査をして、耳の検査をする。音が聞こえたら手を上げろというから、どんな小さな音がするのかと思ったら、部屋中に響く大音響でブザーが鳴る。これ聞こえない人はよっぽどだ。隣で順番を待っているお姉さんが、マスクの下でぷっと吹き出していた。

近所の吉野家で早い昼飯を食い、12時ごろに筆記試験の合格発表があるというので会場に戻る。不合格者は名札を返却してさようならになる。どきどき。幸い、ぼくの番号はあった。ぼくの前のおっさんは、試験中に質問をしていたおっさんだけど「今日はちょっと肌寒いな」といいながら帰り支度をしていた。もうひとり質問をしていたおっさんもいなくなっていた。勉強していなかったのかもしれないけど、意地悪な試験問題に対応できなかったのかもしれない。お気の毒なことだ。

筆記試験の合格者は実技試験になる。隣のおにいさんが、教科書を広げ、一生懸命鳥の名前を覚えようとしている。聞く限り、実技試験では鳥の判別問題は出ないのだけど、あれ? 鳥も出るのか? とあわてていると、気配を感じたのか「鳥も出るんでしたっけ?」と聞いてきた。「で、でないと聞いてますけど」とおどおど答えたら「あーよかったー」と安堵している。いやいや、それで落ちてもぼくは補償できないぞ。

番号を呼ばれて試験会場にはいると、わなが並んでいる。使っていいのと使っちゃいけないのを言いなさいと。これとこれとこれは使えます、これこれこれは使えませんとお答えする。そしたら、これをセットしろと、箱わなをわたされた。なにをとるわなかなぁ。たぶん子ウサギくらいしか入れないくらいに小さなわなだ。

練習してきたのとちょっとちがうけど、うろうろやっていたら、それは両手でやるんだ、なんて教えてくれて、それでセットができた。うまくできてるのかどうかはわからない。

次の部屋では、写真を見せられた。とってもいいのは名前を、とっちゃいけないのはとっちゃいけないと答えろという試験だ。イノシシみたいに分かりやすいのは、登場しなかった。キツネはとってもいいです、それはとってもよくて、えーと、タヌキですと答えると、試験官が「え?」と写真を確かめている。あわてて、あ、まちがえました、アライグマでしたと答える。次に出てきたのはアライグマではないからタヌキだ。

そんなあんばいで試験は終わった。夕方までかかると思っていたけど、ほぼ昼休み終了と同時に試験は終わった。筆記試験はすぐ合否の発表があるけど、免許試験の合否発表は5日間ほど待たされた。筆記で通れば大丈夫だと言ってくれる先輩もいたけど、安心はできないからしばしどきどきでした。

福島県のホームページで合否を確認して合格。免許の送付願いをして、送られてきたのは運転免許証みたいなのじゃなくて、お免状でした。これがあれば猟ができるわけじゃなくて、今度は狩猟者登録をしなきゃいけない(いまここ)。なんだかむずかしいのでサイトを見ると、狩猟読本を見ろなんて書いてあったりする。講習を受けると狩猟読本をもらえる(この代金を含めて講習代を払っている)けど、ぼくは持ってない。発行元の大日本猟友会のサイトを確認すると、都道府県の猟友会で手に入ると書いてあるから電話して聞いてみたら、おじいちゃんが電話口に出て「講習会で配ってるけど、売ってないなぁ。免許更新のときにも配るから、すでに免許持ってる人にもらったら」とのんびりしたお答えだった。ちょっと解さないけど、まぁいいや。

ペンギンに見えるウサギ

ということで、なんの技術もない新米猟師は、なにをすればこの地で活躍の場があるのか、これから模索していきたいと思っているところであります。

2枚目の写真は、獲物ではなくて、ペンギンに見えてしまったうちのウサギ。わながあれば、自分から寄っていくタイプに育っています。