今度の日曜日は、福島県議会議員と、それに合わせてあちこちの自治体の議員選挙があって、我が村でも村議会議員選挙が予定されていた。
県議会は2日に告示で、村議会は7日に告示。村議会の方は選挙期間が1週間もないんだけど、これがふつうなんだそうだ。ぼくは震災前にここで選挙をした経験がないので知らなかった。震災後、あちこちに避難した人がいて、選挙活動も広範囲にやらなきゃいけなくなったので、活動期間が県議会とかと同じになってたんだけど、今回、ようやく本来のシステムに戻った、ということになる。同じ日に選挙をやる葛尾村は、県議会といっしょに2日が告示日。葛尾は川内村より帰還が遅かったから、今はまだ通常営業に戻っていない、ということなんだろう。
県議会選挙、ぼくらの選挙区は双葉郡選挙区で、定数は2だった。告示の日の夕方、立候補者が2名だったことが判明して、選挙は無投票となった。
村議会の方は、誰が出るの、誰は引退するのという話はあったんだけど、最終的には立候補が締め切られないとわからない。票読みは1票の単位でできるらしいけど、誰が立候補するのかはわかんないらしい。
フタを開けてみたら、定数10のところ、立候補9名で、村議会の方も無投票になった。無投票は20年くらい前にもあったらしいけど、定数割れは初めてということだ。もし2名欠員なら、来年あたりに欠員選挙をすることになるってことだけど、1名欠員の場合はもうそのまんま、なんだそうだ。
ということで、大きな波乱もなく選挙は終了した。いつも期日前投票の会場になっている役場の応接室玄関には「無投票なので選挙はやんないよ」というお知らせが掲示された。まちがって投票に来ちゃう人がいるのかもしれない。でもそんなことより、いろいろもやもやしちゃって困っている。
新しく議員になった9人は、8人が現役で、一人が元職。結局、新人は一人もいなかった。6期目となる人がひとり、5期、4期、3期、2期がそれぞれふたりずつだった。最高齢は79歳で、最年少が61歳。平均年齢を計算したら、71歳になった。任期が切れる4年後には(全員がお元気でいれば)平均年齢は75歳になって、二人が80歳以上になる。
村は保守的で、高齢化はぐんぐんと進んでいる。議員さんはそういう村の代表だという点では納得の顔ぶれかもしれないけど、いやいやさすがに高齢化がすぎるだろう。村には若い人の移住者もけっこういるけど、そんな彼らの希望や悩みをこの年齢層が拾うことができるのかなと、ちょっと心配ではある。
後継探しは各方面、いろいろやっていて、でもよほど手を上げる人がいないんだろう、ぼくにもやらないか、と声をかけてくれた人はいたけど、ぼくは日本語のお行儀が悪くて、議会で話をするしつけを受けてないからもちろんお断りだけど、そんなぼくでも、4年後に選挙に出たら70歳以上の新人になってしまう。ぼくではもうダメだ。
高齢化少子化は、日本全国的に進んでいて、過疎地の村はその勢いがはるかに早い。全国の大学とかから、この地域の調査とかにきて、この地域の将来についての課題とかを発表してくれる取り組みがあるんだけど、いつも思うのは、彼らの発表は無意識にひとごとで、自分たちの問題ではないんじゃないか。自分たちの住む都市部にそこまでの高齢化は訪れないんじゃないかと思ってないかなぁ? ビルが林立する都市部とカメムシが飛び交うイナカとはいろいろちがうのはもちろんだけど、行き着く先は大差なくて、村の方が30年とか50年先行してるだけなんじゃないかと思うんだ。
今回無投票になって、それはいろんな経費削減になってよかったような気がするけど、選挙は4年ごとに行われる(ときには捕まっちゃうリスクを覚悟しながら)刺激的な行事であったはずで、それがスカッとないものになって、4年後、みんなの興味が維持できるかどうかもとても不安。投票率は低い低いと嘆いていればいいけど、立候補者が定数を大きく割って、そのうちひとりもいなくなってしまったら、開高健じゃないけど、いったい日本はどうなるのだろうか。9名の議員様達は、次の選挙に向けて、定数を8に改定するアクションを起こす(もうやってたらしいけど、今回には間に合わなかった)らしい。それはそれとして、それじゃ本質的な解決にはなんないんじゃないかなぁ。
今回の選挙から、村議会議員選挙にも、供託金が必要になった。15万円。事前にいわき市の法務局かなんかへ行っておさめなければいけないらしい。告示の日の午後、選挙ないなら、今から立候補してこようかなと冗談を言ったら、いまから平(このへんの人はいわき市というより、昔の名前の平と呼ぶ人が多い。今でもいわき市の中心街は平だけど)に行ってたら間に合わないぞとつっこまれた。その前に、15万円持ってなかった。ダメだ。
供託金を払うと、法定得票したらだけど、ポスター作ったり選挙カー用意したりする費用が助成されるらしい。選挙の中の人になんてなったことがないから、いろいろびっくり。でもそのマニュアルを見ると、むずかしいのだ。たとえばポスターは、写真を撮ってデザイナーがデザインして印刷して完成する。だけど助成金は印刷屋さんに一括して支払われる。デザイン屋さんは印刷屋さんから仕事をもらうカタチになってないと、助成の対象にはならないことになる。
選挙には金がかかるというご指摘を受けての助成なのかもしれないけど、金が出れば出るで、最大限にいただこうと知恵を回すことになるから、投票はなくても、結局税金が使われることになる。ワイロなんてばか丸出しだと思うけど、合法的かどうかはともかく、へんてこな金が飛び交うという点では、結局なにも変わってない、ということみたいだなぁ。
合法、といえば、ずいぶんと前から一票の格差がいわれている。ぼくも都会人だった頃はそりゃそうだろうと思ってたけど、ど田舎に引っ越してみると、全国選挙なんかになると、イナカの投票箱を締めて都市部にある開票所まで届けるためにくねくねと峠道を走っている最中に、自分ちの選挙区の当確情報が出ちゃったりする。こんな投票箱、山に捨てちまうかとあほらしくなるという話を聞いたことがある。これはうちの村の話じゃないけどね。
今は、一票の格差は正しく存在するべきだと思ってる。田舎者のわがままに付き合っているときりがないけど、過疎部の人口減少をほんとに切実に思っているなら、一票の格差をしっかりつける手もあるんじゃないかなー?(そんなことしたら、票がほしいだけの能なし候補者が過疎部に殺到するんだろうけども)
ついでに話をすると、県議会は関係ないんだけど、一票の格差是正のあおりをくって、福島県では会津の選挙区と中通の白河市あたりの選挙区が合併させられた。 地盤が緩いところに作ってしょっちゅう道路工事をしないと路面がぐにゃぐにゃになってしまう甲子トンネルってのができたから、それで行き来は楽になったろうという名目なんだけど、もはや選挙とはなにかが崩れている気がする。青函トンネルができて、函館と青森はおんなじ選挙区になっちゃうよね、きっと。
というわけで、今回の選挙は波風立たずに終わったけど、未来のことを考えると、波風立たないばかりが平和じゃないんじゃないかなぁと、すいません。もやもやするだけでなんの解決策も提案もありません。