ぼくは割とキーボードおたくですが、このたび、9,100円也のキーボードを買いました。
買ったのはここから[https://skyloongtech.com/skyloong-gk61-qmkvia]。高いと思われるかもしれないけど、ぼく的には、これはバーゲンセール級のお買い得キーボードでした。
このキーボード、日本でよく使われているJISキーボードではなくてUSキーボードであること、親指シフト入力をするのに適した分割式のスペースキーがあること、コンパクトであることなどがぼくにとってビビビとくるところです。分割式スペースキーとUSキーボードは両立しないことが多いので、こういう配列のキーボードは貴重です。
ちなみに親指シフトとは、富士通(の神田泰典さん)が開発した日本語入力システムで、Qの列からZの列まで3列を使って日本語入力を完結させるもので、JISかな入力より覚えやすくて効率がいい。でも普及にまい進したのが富士通一社で、いまとなっては新品で買える親指シフト入力マシンはキングジムのポメラだけとなっています(たぶん)。
ぼく自身は、最初に買ったワープロマシンが富士通のOASYS(1985年ごろ、もっと前だったかも)で、これでキーボード入力を覚えました。ただし親指シフトをおぼえるとつぶしがきかないといわれ、親指シフトキーボードなのにローマ字入力を習得しました。習得といっても人さし指一本でやるさみだれ打ちです)その後、東芝J3100(ダイナブック)+親指ぴゅんで親指シフトを覚え、DOS/V、Macと親指シフト入力を続けてきました。どれも親指シフトキーボードは標準装備されていないのですが「J」を押したら「と」が入力される、キー配置変換ソフト(エミュレーションソフトというんだけど)を使わせてもらって、ほとんど不便がない入力を続けてきました。こういうソフトは、有志が開発して、使用料もほとんどの場合無料で使わせていただけます。天国みたい。強いて不満といえば、他人の機械ではローマ字入力をせざるを得ないこと、OSやマシンが新しくなったとき、エミュレーションソフトがちゃんと動く保証がないことです。40年の間、3度くらい、悩んだことがありました。
これまでキーボードは、10年ほどHHKB Profesional JPを使っています。親指シフトは本来ならスペースキーの手前に左右の親指キーを配置するものですが、エミュレーションソフトを使う場合は左親指キーをスペースで、右親指キーを「かな」キーで代用したりします。エミュレーションソフトを使っても、物理的にキーが不足するのはいかんともしがたくて、長ーいスペースキーを持っているキーボードで親指シフトをするのはなかなかたいへんです(シフトキーとかを使ってスペースキーの長いUSキーボードで親指シフトする苦肉の策もあるんですが、それはぼくにはどうしてもなじめなかった)。
ふつうの人にとっては、JISキーボードでもUSキーボードでもどっちでもいいかって話だと思うんですが、記号の配列が異なるのと、微妙にキー配列にずれがある。あと、日本ローカルのJIS配列使うより、USキーボードの方が世界標準という、なんというか、なんの根拠もなくえらくなった気分も味わえる。だからずっとUSキーボードには憧れていました。憧れていたけど、親指シフトははずせないから、これまでずっとJISキーボードだったわけです。
そんなところに、目の前(のパソコンのディスプレイ)に現れたのがこのキーボード。USキーボードなのに、スペースキーが左右ふたつに分かれている。これ、最高じゃないか。

これを教えてくれたのは自作キーボード界隈の方でして、このキーボード、QMKという特殊のプログラミング言語を使ってキー配列を自由にカスタマイズできるのです。キー配列をカスタマイズするとどうなるかというと、ざっと40年にわたってお世話になってきたエミュレーションソフトが、ついに不要になるということなんです。
購入サイトはなんとなくあやしげだし、日本語ないし、へんなオプション出てくるし、なんせ自作キーボード界隈の話だから、完成品のキーボードが送られてくるのか、一部のパーツが送られてくるだけなのか、それすらもあやしい。でもまぁ、9,100円なら最悪だまされても1週間くらい泣けばいいかと思って、買ってしまいました。
オプションのあったキースイッチは KTT Rose Sea Blue。3種類の中から選べるんだけど、どれがどうなのかさっぱりわからない。キーストローク(1.2mm〜2.0mm)と作動圧(38gf〜45gf)の中で、ちょっと深めのキーストロークのものを選んでみました。このキースイッチが気に入らなかったら、キースイッチだけ買い直して交換することもできるわけです。

このキーボードはQMKでカスタマイズする前提で買ったので(すぐできるとは思ってないし、なんならできないかもしれない。でもまずは買っちゃわなければ可能性はゼロだと思って買ってみた)、しばらく箱に入ったまま放置されていたのですが、これではもったいないと、つなげてみました。キータッチは、HHKBよりかちっとした感触で、少しうるさいけど、いい感じ。ただ、Aの隣にコントロールキーがなければ許せないぼくには、Aの隣にCapsLockのあるキーボードはそのままでは使えませんでした。
それでまた放置。でもやっぱりなにかしたくなって、エミュレーションソフトの設定をいじったりして、QMKでカスタマイズする以前に、まずはこのキーボードをエミュレーションソフト経由で使ってみました。
正直、長年慣れ親しんだ日本語入力の使い勝手(親指シフトキーと記号キーとの同時打ちとか、半角にしたりカタカナにしたりの変換指示をどう割り当てるかとか、なにより悩んでいるのが日本語入力のオンオフ。「かな」キーとか「無変換」キーがUSキーボードにはそもそも存在しないから。このあたりも、もしかしたらQMKなるものを駆使すればなんとかなるのかもしれないけれど、現状はまだまだ手が出ないので、これも使ったことがないVIAとかに手を出してみて、最低限のカスタマイズを完了。このキーボードを使って親指シフト入力ができるようにはなりました。
これまで使っていた2万円のHHKBに比べて、この9,100円(もっと安く売っている販売サイトもあった)のキーボードは、タッチがはるかにかっちりしています。ぼくがこれぞ最高と認めるキーボードは、Apple II GSの純正キーボードか、東芝J3100SS、ダイナブック初期型のもの。これはその打鍵感によく似ている(気がするけど、なんせ30年くらい前のことだからホントに似てるのかどうかはあやしい)。かっちりしているというと聞こえはいいけど、カチャカチャうるさいとも言う。そういえば、初めてHHKBを触ったとき、静かで上品なタッチだけど、打ちごたえがないなと思ったのを覚えている。それはそれで慣れちゃったけど、今、あらためてかっちり系に触れてみると、ぼくはこっちの方がお好みだったんじゃないかと(今さら)気がつきました。
QMKを使えるようになるまでのお試しのつもりが、HKKBはしまいこんで(たまたま、キーボード本体の大きさはHHKBと9,100円はほぼ同じだったので、9,100円の箱にHHKBを押し込めた)9,100円(正しくはSKYLOONG GK61というのですけどね)のキーボードを本格的に使うことにした次第です。

今まで、親指シフトゆえにしかたなくJISキーボードを使っていた身としては、スペースキーが左右に分離しているUSキーボードは理想のキー配列(でも、実用上、それほど大きな差はなくて、一度は左ハンドルのクルマに乗ってみたい、程度の欲求かもしれない)です。もしQMKを使ったカスタマイズがうまくいかなかったとしても、VIAというもう少し簡単なキー配列カスタマイズアプリが使えたりするし、今まで通りのキー配列変更ソフト(ぼくがMacで使っているのはLacailleってやつ)を使うこともできる。Lacailleはキー配列変更もするけど、親指シフトを可能にするソフトでもあるので、ぼくは長らくこれを使っています。考えてみたら、1989年に東芝J3100SSを買ってしばらくして親指ぴゅんを使い始めて、以来、PC9801になったりDOS/VになったりMacになったりOS Xになったりはしたけど、入力についてはずっとこの手のエミュレーションソフトのお世話になってきました。

このSKYLOONG GK61というキーボード、かっちりしたキータッチは、いまのところお気に入りだけど、キースイッチを交換することもできるし、力の弱い小指で操作するキーだけタッチのやわらかいスイッチに交換するというカスタマイズもできそうだし、もっと静かなキーにすることもできるのかもしれません。そうそう先日、全日本に移動する合間に、秋葉原の自作キーボードのお店というのにちょっと寄ってみました[https://yushakobo.jp/]。いったい、何を見たらいいのかもわからないすごいお店で、最後に勇気を出して少し質問したら、ほんとにていねいに親切に答えてくれたのだけど、質問すればするほど、どうもぼくの出る幕ではない、という印象を強くするあぶないお店という印象でした。いつか、このお店を活用できるように進化してみたい気もするし、おっかないからそうはなりたくない気もする。
というわけで、このご報告は志し半ばのまだ途中です。思っていたことが完結するかどうかも、わかりません。志し半ばで最終的にそのまま挫折することになったとしても、このキーボードはなかなかいい買い物でした。キーボードなんて、1,000円とかでも売ってるんだけど、ちょっとこだわりのキーボードは3万円とかそれ以上するから、このお値段はたいへんバーゲン。すばらしい。ちなみに、ぼくが買ったところよりさらに安いところもあった。もちろんどっちでも、ちゃんと届くかどうかも含めて、自信を持ってお勧めできるほどではありません。[https://ja.aliexpress.com/item/1005006670475859.html]
キーボードおたくとしては、しばらくぶりにわくわくする対象が現れて楽しいのだけど、たいていの人には、なにそれ、おいしいの? 状態だと思いますが、誰にも届かないかもしれないご報告まで。
ちなみにこれは、ぼくのちょっと前までの仕事環境なり。
https://www.shizenyama.com/shizenyama/38003/