MFJが、2024年の競技規則書をネット上で配布している。
MFJの競技規則書は、従前、ライセンスを取得した人に冊子としてもれなく送られていたが(エンジョイの人には届かなかった。エンジョイは年会費安いし公式戦に出られないからまぁいいかなんだけど……)、IT化というか経費削減というか、2022年版からは、MFJサイトで閲覧してねということになって現在に至っている。PDFの競技規則がMFJサイトで閲覧できるようになったのはこれ以前だったので、ライセンス会員全員に冊子が届くシステムがなくなっただけで、いろいろと合理性は増したってことになるんだろう。ITに弱い人、紙の冊子が好きな人、PDFを閲覧できる電子機器を持って現場に出る習慣がない人には困った改革かもしれないが、いやいやスマホで閲覧可能だから、いつも持っていられるし、防水スマホなら濡れても大丈夫だし、なんなら困ってから現場でダウンロードすることもできるし、便利なことばっかりだ。自然山通信でも(活用してるかどうかはともかく)全日本などにはスマホで閲覧できるようにしてでかけている。
さてその規則書の2024年版について。規則は多岐にわたっているので、トライアルルールだけでなく、総則やアンチドーピングの項も読んでおかないと、思わぬ損失を被ることもある。たとえば昇格基準とかは総則の附則にあって、関東選手権と中部選手権のNB(J含)からNAへの昇格基準が変わっている。関東では今までの100点10人から80点10人に。中部は昇格条件が65ポイント以上獲得だったのだが、上位12人となった。中部は条件が異なるので微妙だけど、関東は少し昇格しやすくなったといえる。
アンチドーピングについては全面刷新という感じになっているけど、こういう方面は畑違いっぽくてとっつきにくい。ただ風邪薬や市販薬、栄養ドリンクもひっかかるのがあるということだから、特にポイント獲得圏のライダーは熟知しておく必要ありだろう。これも含めて、前年からの変更点は文字の色が変わっているから把握がしやすい。特にペナルティーについての項目は、見ておかないと損をするというか、競技に参加する資格がないってことになる。
トライアル規則は、9項目について変更や追加があった。最も大きな変更は、ハンドルバーの接地で5点になる項目が復活していることだ。2023年、大きな波紋を呼びながら、明快な採点を目指して廃止されたこの項目だが、転んでいても5点にならない不思議なルールとして、2年間だけの記憶として残っただけで、廃止されることになった。ただし2024年ルールは「車両が停止している、かつフォルトの状態でハンドルバーが地形に接地した場合」に5点になる、というものだ。ハンドルが地形(地面であることもあるし壁であることもある、ということ)に接地しただけではその減点1点のみだけど、その際に足をついていたりすると5点になるという解釈になる。この場合でも、マシンが動いていれば(ハンドル接地の1点と足つきの1点以外の)減点には問われない。
余談なれど、MFJのルールはノーストップでないストップルールだけど、エンジン停止とハンドル接地については、マシンが止まっているかどうかが採点の鍵になるから、日本の公式戦のオブザーバーは、ストップについてまったく無頓着というわけにはいかないのだった。
その他「マシンから降りた」の定義も正確性を増した。「車両のサイド、または後方に両足をついて車両から降りてしまった場合」に5点だった2023年から「車両のサイド、またはリアフェンダー後端の後方に両足をついて車両から降りてしまった場合」と少し文言が追加されている。なんとなくオートバイの後方に足をついた、では5点にならない。しかしこれ、測量のようなオブザベーションが必要になりそうで、その点もちょっと心配。
エンジン停止関係では、これまで足やタイヤ以外のマシンの一部が接地する、前進せず、エンストの3点がそろって5点になっていたが、2024年はアンダーガードの接地は許されることになった。通常アンダーガードの接地は減点にならないから、エンストだけアンダーガードが取り沙汰されるのは採点的にもシンプルになった。トライアルにとって、アンダーガードは前輪、後輪につづく第三の車輪になった、ということかもしれない。
その他、エントリー忘れに対する寛容な処置の変更もあった。これまで締め切りをすぎたら問答無用で参加はできなかったが、締め切り後5日間はレイトエントリーの期間となって、この間にあわててエントリーを済ますことができる。ただしこの期間のエントリーフィーは通常期間より1万円も高いから、さっさとエントリーを済ませたほうがいいのは今まで通りだ。
その他、2023年からできたサイレンサー後端の形状規制や以前からあったものの適用があいまいで、2023年から突然車検で厳しくチェックされるようになったレバー端の形状などについては、2024年規則も変わりない。
他に変化があったのはナンバープレート(ゼッケン)への記述(全日本出場ライダーの場合)で「プレート下部にライダーの氏名を記入する」「記載する氏名は必ずライダーの氏名とし愛称は認められない」となっていたが、これが「プレート下部にライダー本人の苗字または名前を記入するものとする」「ゼッケンに記載する苗字または名前は必ずライダー本人の苗字または名前とし愛称は認められない」となった。苗字または名前、もしくはその両方、と描いてないところを見ると、フルネームを書いてはいけない? そんなことはないですよね?
EPV(電動マシン。電動マシンについてなんと略したらいいのか悩んでいた。エレクトリックモーターではEMになってしまうし、モーターバイクだとモーターサイクルとほぼおんなじになっちゃうし、EVでもいいんだけど、EPVはスマートかつわかりやすい気がするので、これからはこれに統一しよう。EPVはエレクトリック・モーター・ビークル、だと思う)についてはプロトタイプや市販車の扱いなど子細に記載されていて、いよいよトライアルのEPV化が進んでいる兆しを感じさせる。
ともあれ、サイトへ行って閲覧、ダウンロードするのはタダだから、公式競技に出る人も出ない人も、トライアルに興味がある人を含めて、もれなく競技規則には目を通していただくようにお願いしたいです。ルールは左のQRコードか、下のリンクからどうぞ。