大きな災害が相次いでいます。災害支援にトライアルは最適。しっかり腕を磨きましょう。

イタリア、2ヶ月後の勝利

全日本選手権のシーズンオフは、ストーブリーグに入る前に裁定問題が持ち上がって、いまだ決着が公表されていないが、海の向こうでも同じような問題が起きていた。そしてこちらは、結論が出て、発表に至っている。

ことはトライアル・デ・ナシオン(TDN)で起こった。ウイメンズTDNの優勝争い、発表されたリザルトでは、優勝はスペインで2位がイタリア。両者は同点で、クリーン数7個の差でスペインが勝利となっていた。

これに対して、イタリアチームには納得しない空気があった。1ラップ目の第12セクションで、ソフィア・ラビーノはクリーンしたのに、結果は5点となっていた。このセクション、イタリアの3人はクリーンが二人と5点が一人だから、チームスコアとしてはクリーンになるはずだが、二人が5点と記録されていたから、イタリアのスコアは5点になっていた。これが正しくクリーンならば、優勝はスペインではなくイタリアになるはずだ。


イタリアは試合後、FIMに対して結果を不服として提訴していたが、FIM審判はこの提訴を棄却してりザルとが決定していた。それに対しイタリアは国際控訴裁判所にこの件を控訴した

クリーンが5点になったのは、報告を読む限り、タブレット係の入力ミスだと思われる。日本で問題になっているパンチミスと同様のミスになる。タブレット入力の場合、オブザーバーが示した減点をタブレット係が認識し、タブレットに入力してそれをライダーに見せ、ライダーが確認した上、各々のライダーが持つIDカードをタブレットにタッチしてライダーと減点を紐づけして入力を確定する。IDカードをタッチするアクションは、パンチカードを渡して受け取るより減点を確認しやすいから、まちがいがあっても気がつくだろうというシステムだが、それでもまちがいは起きた。ラビーノはクリーンをしていながら自身の5点のスコアを確認スルーしてしまったことになるが、それがどうしてそうなったのかはわからない。単なる確認ミス、だったのかもしれない。


当日、イタリアによる提訴はFIMによって却下となったが、それは、ライダーが確認しているはず、という点を重視したものと思われる。イタリアは3人のライダーのセクショントライの模様を記録した映像を証拠として提出、これを見ると、イタリが主張する、二人がクリーン一人は5点であることが明らかなのだというが、ただし裁判では、映像を証拠とは認めないとしている。それは、オブザーバーの判定は絶対であり、その後の証拠によって判定が覆ることはない、というそもそも論に基づいている。

今回判定が変わったのは、タブレット入力による判定は絶対で覆ることがない、というFIMの主張に、裁判所が異議を出したからだ。FIMの認識では、タブレットの採点を修正するのはトラブルによるときに限るとしていて、これを機械のトラブルとしてFIMに対して、人的ミスもトラブルのうちであるとしたのが、裁判所の判断だった。


もうひとつ、バックアップシートというのがある。トライアルGPのスコアはタブレットに入力されて本部に伝わるが、それはそれとして、現場のオブザーバーは自分が下した採点を手書きで記録している。タブレットのシステムが故障した際にはそのバックアップで結果を補填する、ということだが、FIMは当初、バックアップは破棄されたと証言している。バックアップがないからタブレットに入力されたスコアが唯一絶対の結果だというのがFIM側の主張だったが、ところがその後、バックアップのコピーだとするデータが忽然と現れて、このバックアップにあるスコアと動画などから散見されるスコアとが一致していることも確認された。動画映像の類いは証拠採用されないということだが、状況証拠や心証証拠としての役回りは果たしたのかもしれない。ここへきて、FIMのタブレットに残るデータが絶対であるという核心部分が崩れてきて、裁判所はイタリアの主張を認める方向へ動いていく。むしろ、バックアップを組織としてきちんと管理していなかったのは職務怠慢であると断罪さえしている。

とはいえ、ライダーは自分の減点について入力確定時に確認をしているはず。それについて規則は「記録を知る責任がある」としている。FIMとしてはこれが減点を改定しない根拠だったが、これもFIMが却下。「記録を知る責任がある」との文脈に、そのスコアが最終的なものになる旨(変更はできないということ)ではないとしている。

結果を覆すのはむずかしいのではないか、が、現場の空気だったという。しかし裁判の判断はちがったようだ。この「判決文」では、やるべきことをやらずに結果を押し通した主催者とFIMが糾弾されていて、イタリアチーム側には非がないと認定されているように読める。この件でイタリアチームは提訴するための1,320ユーロ(ざっと20万円ほどか)を用意する必要があったが、これは全額返還されるという。イタリアが負担すべきとなったのは(時間と気苦労の他には)裁判の座でイタリアが連れてきたイタリア語通訳の謝礼金だけ、というのがおもしろい。ちなみに裁判はフランス語で行われ、フランス語と英語の通訳は裁判所として準備した。それ以外の言語については裁判所の関知するところではない、ということのようだ。

FIMが取り仕切る世界選手権では、これが採点トラブルの一つの前例となるかもしれない。おさらいをしておくと……。

・一度決定されたリザルトでも、正しさが証明されれば結果が変わる
・タブレットに入力された数値の確認は、必ずしもライダーの責務ではない
・現場を撮影した動画などは、証拠としては採用されない
・採点は、タブレットの入力、バックアップシートによって確認される


ということのようだ。イタリア側としては、FIMはスペインとずるずるでスペインを勝たせるためにバックアップシートを隠匿したんだろう、なんて考えているみたいだけど、自然山的にはあんまりそうは思えない。たとえばいっぱいいるオブザーバーの中のひとりふたりが、誰かの肩を(意識して、あるいは無意識に)持ってしまうのは、管理の限界もあってむずかしいかもしれないけど、FIMという団体がそれをやってしまったら、トライアルがスポーツではなくなってしまう。今回は、スペインを勝たせたい、イタリアを勝たせたくないではなくて、一度決めた結果を覆されるのがいやだ、という権威主義だったのではないかと想像する。主催者たるもの、どーんとかまえてなにものにも動じぬ姿勢は大事だけど、認めるところは認めて、頭を下げるところは下げなきゃいけないと思う。今回のFIMは、そこをまちがっちゃったんじゃないかなぁ。

ともあれ、2025年暮になって、イタリアには大きな喜びの知らせが飛び込んだ。

Photos:FIM, Makoto SUGITANI