大きな災害が相次いでいます。災害支援にトライアルは最適。しっかり腕を磨きましょう。

全日本IASランキング、ようやく決着を見る

12月10日、MFJ中央審査委員会が裁定結果を発表した(MFJ第2500100号)。10月26日開催の全日本第7戦での結果について、武田呼人が抗議を出し、当日の審査委員会で棄却されたのを不服として控訴、さらに11月17日に控訴棄却となったのを不服として上告したものに対しての最終的な決着となった。

結果はみたび棄却で、これで正式結果が出ないままだった全日本第6戦の結果も確定、これに伴って正式結果が出ないままになっていた2025年IASランキングも発表された。第6戦の結果は黒山健一が3位、武田呼人が4位。ランキングは黒山がチャンピオン。仮に抗議が通ったとしてもこれは変わらない。武田のランキングは7位。こちらはランキング6位と1ポイント差だったから、武田の主張が認められれば、武田はランキング6位となっていたはずだった。

今回上告を棄却したのは中央審査委員会で、前回はMFJ国内規律裁定委員会。それぞれの委員会はメンバーが異なる。別のメンバーが、別の視点も加味して審議したということになる。

提訴・上告に至る事実関係については、すべての関係者間で争いがないとされている。黒山がSS第1で1点をついたのは事実であり異論がない。SS第1でオフィシャルがパンチをまちがえてクリーンとしたのも事実であり異論がない。その結果、1点差で黒山が3位になった、黒山のSS第1が1点なら、黒山と武田は同点で、クリーン数差で武田が3位となる計算だ。しかし当日の審査委員会も規律裁定委員会も中央審査委員会も、黒山のSS第1での減点はあくまでもクリーンとする旨の決定をした。


武田側は事実に準じて順位を変えるべき、と主張する。対して審査委員会は、パンチは絶対であり、次のセクションにトライしたら覆らないという合意があるから変えられない、との姿勢を崩さなかった。裁定委員会も中央審査委員会も、多岐に渡る検証をした結果、この決定を追認したということになる。

SSということもあって、多くの人が目撃し、動画も残っている。誰の目にも明らかな事実を結果に反映できないのはおかしいという主張は正論で、これがなんで通らないのか、憤りを感じる人は多かった。

パンチは絶対、はMFJの定めたルールだが、一方、競技監督により暫定結果から追加減点が通告される場合があるとも定められているので、この条文から黒山に追加の1点を課すことは規則と矛盾しないというのが上告側の意見だった。

しかし中央審査委員会は、競技監督によるこの追加減点は競技役員への暴言やセクション改変などの不当行為へのペナルティが対象で、減点のまちがいについてはこの限りでないと断じている。ただし、競技監督による追加減点が不当行為によるペナルティに限るという条文は存在しない。

中央審査委員会が棄却の大きな根拠としたのは、ルールの画一的運用だった。競技の格となるルールが変わってはシリーズ戦としての運営開催が困難になる、正しい事実に則っての結果決定ができない問題はあるが、ここはトライアル委員会が規則の見直しや再発防止策を徹底すべしとしている。

一貫した大会運営が重要であるのはもちろんだ。今回、議論のまな板に上がっている、いったん受けたパンチは次のセクションをトライした時点で変更できないという運用(MFJ規則にこの件はない)は、第3戦の公式通知で発令され、第4戦のライダースミーティングであらためて質問を受けて、今後はこのやり方で徹底するとの返答があったものだ。第3戦での公式通知がシリーズ全戦に運用される競技規則に相当する扱いという解釈は、このあたりの経緯からのものと思われる。第3戦公式通知としての通達文書はその後も閲覧ができたが、MFJサイトの規則書にはこの文言はないから、これが全日本ルールとして認められるかどうかは、今もなお不透明といわざるを得ない。

全日本選手権に100人の選手が参加して10セクション2ラップを戦うとすると、パンチの回数は2,000回に及ぶ。その確認は担当オブザーバー(たいていの場合、セクションのチーフオブザーバーでなく、出口を担当するサブのような役割のオブザーバーが担当している)とライダーにのみ委ねられている。それとは別にチーフオブザーバーなどが手元に減点を書き留めておくバックアップシートのシステムもあるのだが、悪天候に耐えられないアイテムだったり人手が足りなかったりして、機能していないことも多々ある。そしてパンチが唯一という運用が独り歩きして、バックアップシートはあっても意味がないかの存在となっている。つまり現状、規則としてまちがいを正すシステムはなく、まちがいがないかどうかを(審査委員会を含めて)第三者がチェックするシステムもほとんどない。この状況で試合結果を迅速に(正確を期すのはもちろん重要だが、それで結果発表が翌日になったり表彰式が夜になってしまったら、それも大問題だ)行なうには、基本的には現在の、パンチは次のセクショントライで決定するとの運用は、現状ではある程度妥当とするしかないと考えられる。


今回の裁定問題が世に出て、トライアル関係者・あるいは部外の方々から、トライアルなにをしているんだ、正しいものを正しいと認められない競技があるもんか、との声があがっている。当然だと思う。それでもトライアルの現場では、2,000回もの採点のすべてを、可能な限り正確にスムーズにおこない、結果票をまとめ上げる努力が続いている。その過程でできたルールや運用が現在の姿だ。ルールや運用が完璧でないのは今回露呈したが、時代が変わるなどの背景もあって、完璧なルール、完璧なルール運用はこれまでにも皆無だといっていいと思う。それを情けないと嘆く向きもあろうかと思うけど、オリンピック競技だって大谷のピッチングにだって誤判定はついてまわる。誤判定しない努力はもちろんだが、誤判定が起こったときにどうするかの準備もきっちりしておく必要がある。


今回の裁定は、大会審査委員会(主催運営)と黒山健一に訓戒、トライアル委員会には規則の見直しと再発防止策の提出を求む、というものだった。大会運営のミスは怒られてもしかたない。ただおそらく当日も、この採点以外にも、まちがいはいっぱいあったのではないか。実際、あの採点がおかしかった、自分のこの採点はまちがいだった、という声はそこここで聞く(まぁしょうがないだろう、レベルから、その判定は絶対おかしいというレベルまでいろいろだ)。採点をいきなり完璧にはしきれないから、今後も訓戒相当の事案はずっと発生し続けるのではないか。しかしおそらく、主催者が毎回訓戒を受けることはない。安くないお金を払って審査委員会に正式抗議をするのは、過去にさかのぼってもそんなにひんぱんには起きていない。

もう一方の黒山のほうはどうか。ライダーはパンチの減点を確認しろと規則に書いてあるから、確認が不充分であるがゆえに訓戒処分ということだ。しかし実は、仮に1点をクリーンとパンチされ、これは儲けたと思ったとしても、規則には「セクションでのパンチの点数は、その場でライダーが確認しなければいけない」とあるだけだ。規則の揚げ足取りをすれば、正しいかどうかを確認しろ、とは書いてない。なにも見ずに、パンチミスを知らずに次のセクションに向かったら確認を怠ったことになるが、1点がクリーンになったのを「確認」していたら、ルール上はひとつも問題がない。だからなぜ訓戒処分なのかは、よくわからない。黒山はSNSで、もう4位にしてください、とお願いしたけど4位にもしてもらえなかったとの旨を吐露している。

それにしても、2025年はシーズン当初からルールがへんてこきわまりなかった。シーズン終盤にして、その一端が表に出てきて騒動になった、ということだが、騒動にならなくても、ルールは相当におかしかった。一貫したルール運用がシリーズ戦では重要であるという主張はその通りだが、2025年シーズンだけを見ても、規則が途中で変わったり、ルールの運用が変わったりはあった。次のセクションを走ったら減点は変わらない、との運用も、実はシーズン途中で徹底されたものだ。そんなころころと変わる規則に対して、関係者みんなが(トライアル委員会もMFJ本部も各主催者もオブザーバーもライダーもチームメンバーも)声を上げて指摘していたかというと、そうでもなかった(もちろん一部に指摘をしていた人もいたけれど、だからといって規則が劇的に改まるわけではなかった)。

規則はあらゆるケースを考慮して念入りに作られるべし。規則書は前もって熟読すべし(これがなかなかかちゃんとはできない)、不明点は前もって確認しておくべし、その上でルールに従って競技に参加すべし、が正しいやり方だと思うのだが、今回のケースは、ライダー・オブザーバー・主催者・審査委員会、すべての関係者が、そのいずれについてもちょっとずつ、あるいは重大なる瑕疵が生じていたのではないかと思われる。規則書に則って、この関係者の中で誰が一番正しかったか、まちがいを起こさなかったかを考えてみると、黒山健一だったのではないか、という気がしないでもない。


この件を受けて、パンチカードはさっさとやめてタブレット採点にしろという声も聞いたけど、デ・ナシオン女子の部でタブレットの入力ミスで問答が起きたように、タブレットだってまちがいは起きる。FIMも結果を覆すまでには一筋縄ではいかなかったけど、最終的には正しい(と思われる)結果が正式結果となる流れは残っていた。日本のシステムには、残念ながらそれがなかったのだ。

SSに限っては、たった10人が2回の採点だから、パンチカードを持たないトライでも問題なさそうだが(それなら今回の事案は発生しなかった)、そういう理由でSSをパンチカードなしで運用し始めると、逆にSS以外ではまちがいがあってもしょうがない、ということになってしまうかもしれない。

今回の裁定問題は、当事者の順位だけでなくいろんなことを考えさせられる起爆剤になったのだが、さて、2026年の規則はこれらの教訓をきちんと反映したものになっているだろうか。それが、今回正義を求めて(かかる費用も少なくない)提訴に持ち込んだ武田側、矢面に立たされた黒山、結果が出るのを待たされたその他のライダー、関係者、ファンのみんな、それぞれの忸怩たる思いに応えることになるのではないだろうか。