雪は降ったって春は春。シーズンは開幕してます。えいえいおー

同窓会

07とある庭園

 私事ですが(日記なんだから、それでいいじゃんね)このところ同窓会づいてます。小学校の同窓会に続いて、高校の同窓会に行ってきた。全員同い年という共通点はあれど、小学校の同窓会は親戚の甥っ子姪っ子に会うような感じ。高校の同窓会は(当時の関係がどうで、そしてぼくがまったくもてなかったとしても)初恋の思い出との再会の場となる感じで、趣がちがう。小中高一貫教育なんかで育った人は、このコントラストが味わえないわけですね。かわいそうに。


 学校の同窓会はこのふたつだけだけど、考えてみると、四十雀トライアルにでかけたのも同窓会みたいなもんだ。あれこそ究極の同窓会かもしれない。なんせ戦艦武蔵の沈没から生還した人もいるくらいの強者ぞろいだけど、若造としては、そんなお仲間に入れてもらえるのもうれしい。同窓会も、同級生だけじゃなく全体の部に参加したら、四十雀のノリになってくるんだろうけど、残念ながらいまだ参加したことはない。尊敬する和田誠さんが先輩だし、同窓の集いには興味はあるんだけど。
 さてさてしかし、30年ぶりに出会う人に今のニシマキを解説するのは至難でした。自然山通信の使命と存在を解説するのもむずかしい。トライアルについて10人にひとりが知っているのが幸いといえば幸いだった。どこから聞いたのか、ニシマキはずっと砂漠に行きっぱなしだと思っているのもいた。そんな人には、ぼくが行きはじめた頃のぎりぎり冒険の香りのあったパリダカと、その後のコマーシャリズムをバックボーンとしたシステマチックなパリダカとのちがいを説明しなければいけなくなる(ぼくはそのコマーシャリズムからドロップアウトした。と書くとかっこいいな。あらゆるところからドロップアウトしているのがぼくの歴史です)。
 パリダカの話、サハラのど真ん中でクルマを壊した話、一夜明けてそこから出てきた話、世界20カ国の仲間とジャングルで泥遊びをする話。誰に話をしたのかは忘れちゃったけど、こういう話はまじめに生活されているみなさんにはさぞ縁遠かったことでしょう。日記に書いた、鈴鹿サーキットはつきつめるとオフロードコースだという話に興味を持ってくれた人も(ほんの少し)いた。
 こういう話は、みんなぼくの経験談だけど、何度か話をしているうちに、自分の経験を話しているのではなく、過去に話したシナリオをなぞるようになってくる。講演てのはもうかるらしいけど(一度だけ、赤面もののやつをやったことあるけど、いくらもらったかは忘れた)講演が商売になったら、シナリオを何本持っているかが勝負になるんでしょうね。
 でもやっぱり面と向かってお話するときには、シナリオではなく実際のシーンを思い出して語りたい。砂漠やジャングル三昧をしていた日々からも、もう20年前後の月日が流れるので、だいぶ記憶もあやしい。若い頃は、事実をそのまま記録すりゃいいのに、歴史の研究ってのはどうしてこうもいろんな異説が出てくるものかと思ったけど、自分史でさえあやしいのだから、歴史があやしいのも当然でしょう。時間の流れとは、そういうものだ、きっと。
 ぼくらは商売で過去の事例を語っている。特に写真は、未来の映像は撮りようがない。すべて過去を振り返るめめしい商売が、ぼくらの仕事だ。その取材対象である選手たちは、過去のことを振り返るのは得意ではないし、好きじゃない人が多い。彼らの頭の中は、近い未来に自分が勝利を得ることばかりが渦巻いていて、終わった試合は終わったことだ。そういう人たちと話をして、過去の成功や失敗を聞きだして思い出話を綴る因果な商売をずっとやってきた。
 いやいや、ライダーが過去の話に無頓着かというと、そうとばかりはいいきれない。語るのは苦手なのに、書いたものを発表すると「あの場面とこの場面は反対だった」なんてつっこみをしてきたりする。イタリアとフランスのどっちだったかは覚えていなくても、登りそこねた岩のかたちは正確に覚えていたりする。これは職業柄なんだろうね。小学校の同級生の歯医者は、顔や形をいわれてもわからん、思い出させるなら歯型を見せろと言ってた。記憶を引きだすトリガーには、いろんなものがある。
 同窓会のみなさんには、自然山の読者やトライアル愛好者はいなかったけど、いろんな旧友に「日記を読んでる」と言われました。お恥ずかしい。しかしありがとう。されどトライアル仲間のみなさんには「読んでる」なんて言われたことはほとんどない。これは読んでないということなのか(さびしい)、空気のような存在なのでいまさら報告はしないということなのか、どっちだろう。
 豚もおだてりゃ木に登るので、読者がいると思うと、日記を書こうとがんばれます。ほめて育てるというのは、トライアルに限らず、いろんな選手とコーチの関係を見ても重要です。同窓会にいって、ちょっと豚になったニシマキでした。
 写真は、例によってなにも関係ない、東北道か常磐道のパーキングエリアにあった庭園。抹茶が飲みたくなりました。