雪は降ったって春は春。シーズンは開幕してます。えいえいおー

草なぎくんへのお誘い

 草なぎ剛くんは、かわいそうだったなぁ。世論がこぞって草なぎくんの味方になったのは、せちがらい世の中にあって、少しは和める結果だった。警察関係は職務を全うしたのかもしれないけど、ヒステリックに騒いでおばかっぷりを発揮したのは、最近文句を言うことで株を上げた気になっている大臣さんと、なんでもヒステリックに糾弾するクセがついているテレビのみなさんでした。
 法治国家というのは、法律に基づいて善し悪しを決める社会のことだと思うけど、ぼくらの法治国家は、法を犯した人を徹底的に陥れるのが大好きな国家だ。そのくせ、えらい人たちはぎりぎりで法律の抜け道を探すのが大好きだ。今回は、草なぎくんがすっかりモグラたたきの標的になってしまった。社会正義を守るためかもしれないけど、ちょっとゲームみたいにも見える。


 というような社会的な話をしたかったんじゃないんだ。
 地域の総会に出席して、神妙に会計報告などを聞いていたら「おい、行くぞ」と肩を叩かれた。そういえばさっき、夜桜の写真を撮ってくれというような話が進んでいたけど、それが今夜のことだったのか。村の時間は、外から見るとのんびりゆっくり進んでいるように思えるんだけど、実はとっても規則正しく、忙しく動いている。今村で、一番のんびりやっているのが、ぼくのような気がしてきた。
 雨の中、カメラと三脚を持って自慢の夜桜の咲いているお庭まで拉致されていく。前の区長のHYさんちで、ここにしだれ桜が植わっている。なんでも有名な三春のしだれ桜からのれん分けしてもらったそうだ。三春のしだれ桜と親戚ってわけだ。
 Yさんは、ご自慢の桜をライトアップしてみた。作業灯だけど、遠くから見ると闇夜になかなか美しく浮かび上がっている。美しいので、デジカメで写真を撮ってみたけどうまくいかなかった。それで「おまえ撮れ」ということになった。
 ライトアップしてあっても、これがなかなか、写真を撮るようにはセッティングされていないので、ヘッドライトを照らしてみたり、S商店のTさんにライトを持ってもらったりして、なんとか数枚を撮影。ふだんは写真1枚を撮るのは30分の1秒もあれば事足りるんだけど、こういうのは15秒とか30秒かかる。時間をかけて写真を撮るってのは、なんとなくいいもんだ。ぼくはまだ、田舎ではゆっくり時間が流れているという幻想を持っているので、写真を撮るのもゆっくりのほうがいい。
 そうそう、こういう写真を撮っていて気がついたけど、デジカメってやつは、20秒の露光を与えると、メモリーカードに書き込むのにもだいたい同じくらいの時間がかかるんだね。1枚撮影して結果をモニターしようと思うと、20秒待たなきゃいけない。それでシャッターを押した20秒の間に、今度はどこから撮ってみようかな、なんて思いながらあたりをうろうろしてみた。あぁ、たった20秒が待てないなんて、ぼくの時間ももっとゆっくりでいいのに!
 Yさんちの夜桜は、まぁこんなもんかな。もうちょっと早く声をかけてくれれば、天気のいい日にじっくり写真が撮れたと思うけど、桜がいい時期はぼくはロシアにお出かけしていたかもしんないし、今回は雨の夜桜でよしとしよう。
 で、しこしこプリンタで夜桜をプリントなどしていると、区長から電話あり。
「おーい、きのう、桜を撮ったろう。今、T地区のWMさんちにいるんだが、ここも桜がきれいだから、ちょっと来てみないか」
 飯の食いかけだったけど、さっさと飯食って、出かけてみる。出かけてみるといえば、このへんでは「おれは帰るぞ」と言わずに「おれは行ってみるから」と言う。ちょっと試しに帰ってみるだけなんだもんねー、という感じがいい。まねしてみたいんだけど、新参者は、まだちょっと恥ずかしい。そのうち自然に口から出るんではないかと、その日を待つことにしているんだけどもね。

0904桜その2

 さて、Mさんち。Mさんとは一度いっしょに酔っぱらったことがあるけれど、おうちに行ったことはない。お墓の向かいだって区長は言ってたけど、お墓ははるか土手の上にあるから、その向かいのおうちなんて特定できるもんかいなと心配してみたら、ライトアップされた美しい桜ですぐわかった。桜の季節は、こういう目印もいいもんだ。
 今晩も雨。中ではおいしそうな梅干しの焼酎のお湯割りで宴会中だった。梅干しは、地域の名産にしようする計画があった。というか、今も進行中。ここんちの梅がいかにおいしいかは、またおいおい。実はまだちゃんと味わったことがないんだ。
 じゅうじゅういい香りを立てているお肉や焼酎はともかく、まずはMさんご自慢の桜を撮影してみる。この桜は、Mさんが子どものときにはすでに存在していたそうで、ただしその頃は直径10cmほどだったそうな。樹齢65年から70年というところかな。
「10時になったら自動的に電気が消えるぞ」
 Mさんのご自慢。電気が消える前に撮影を完了して、持っていったフォトプリンタでプリントしようかと思ったら、なんとインクがなくなっちゃった。帰ればスペアがあるから、ちょっと戻ってインクをとってくると主張したんだけど、いいから肉を食っていけと、おじさんたちは強固。とりに戻る時間なんてほんの5分10分なんだけど。
「今日写真をもらっちゃったら、次にくる用がなくなるじゃないか」
 ってことで、ぼくは次なる機会にも、Mさんちにやってくる用を作ることができた。
 実は、さすがの高田島でも、今年の桜はもう終わりかけている。去年より1週間ほど桜の季節が早いみたいだ。温暖化なのやら桜の気まぐれなのやらはわかんない。たぶん温暖化なのだろうけど、世間が温暖化を声高に叫んでいるのは、なんとなく裏がありそうで信用できないニシマキでした。
「来年はもうちょっと早く写真を撮ってくれよ」
「来年は、もっと早く言ってくださいよ」
 なんてやりとりをしたあと、ちょっと提案してみました。来年は「夜桜お花見ウィーク」をやろう。桜がきれいなおうちで毎晩ちょっとずつお花見をしましょうって企画だ。おじさんたちも「やろうやろう」とのってくれたけど、来年になって覚えていてくれるかどうかわかんないし、ぼくも覚えていられるかどうかわかんないので、ここに書いておきます。
 村外の方で、このお花見ウィークにのっかりたい方がいらしたら、来年の花見の季節までに連絡ください。花見ウィークがいつになるかは、ここんちの桜に聞いてみなけりゃわからないですけど。
 そうそう。その頃まで仕事を休んでいるとは思えないけど、草なぎくんにもぜひ来ていただきたいもんだ。酔っぱらい運転はご法度だけど、ここだったら、少々はめを外して裸になったって、誰も気にしちゃくれない。どうせ仕事を干されるんだったら、今からでもこっちに来て、桜は散っちゃったけど、しばらくのんびりできればいいのにね。それができないから、都内の公園で裸になっちゃうんだろうけど。
*写真は1枚目がYさんちの、2枚目がMさんちの夜桜。桜だってことは見ればわかると思うけど。