雪は降ったって春は春。シーズンは開幕してます。えいえいおー

デ・ナシオン

ひまわり園

 いろいろ、本当に、いろいろあったけど、1年ぶりにトライアル・デ・ナシオンに、日本チームが参加することになった。
 これまで、日本は世界を代表するチームとして、確実にトップ3の枠の中で戦ってきた。雑誌屋的には、世界のトップを狙える実力を持っているのが日本だと言ってきた。ライバルはスペインと、イギリス。過去、日本は何度か2位となったことがある。それぞれ、イギリスに勝ったことも、スペインに勝ったこともある。つまり日本は、いまだ勝てないでいるライバル国はひとつもない。充分に勝つチャンスはある。
 日本は、世界に名だたるトライアル王国なのだから。


 それでも、ぼくは日本が勝つのは、そうとうにむずかしいだろうと思っている。それは、ライダーの能力じゃないところにある。いってみれば国力、みたいな話で、資金面から始まってモチベーションの高さとか、ライダー個々の持てる実力と共通するところがある。
 資金面については、いまさら言うまでもない。諸外国には、日本はGNPが高いお金持ちの国と見られている。けっしてそんなことはないのは、日本人ならよくご存知だ。加えて、TDNが開催される国々は、日本から遠い。出かけていくだけで、安くない旅費がかかる。百歩譲って、選手が大金持ちならいいかもしれないけど、現実は(たぶん)あんまりそうじゃない。さらに、毎年同じライダーが選出されることで、特定の何人かに金銭的負担がのしかかるようになった。
 バックアップ体制もなさけない。2002年を最後に、MFJが代表チームの派遣を中止したとき、関係者やファンは、TDN参加は続けるべしという結論を導いた。でも言うはカンタン、責任もってTDN派遣を後押しするひとは、ほんの何人かしかいないと思われる。そんなのはMFJや選手会にまかせておけばいいと思うひとは大半だし、どっちにしても他人事のひとはやまほどいる。それぞれの立場を考えればもっともな話だけど、決起集会で盛り上がっても、そのあとが続かないではどうにもならない。
 まず、一番の問題はお金なんだが、仮に選手の遠征費が耳を揃えて捻出できたとする。現状は全遠征費の1/3も支援ができない状況なので、全額支援というのは夢物語なのだが、仮にそれができたとする。それでも日本としてどうかなぁと思うのは、現地での日本勢のパワーだ。
 ここでいう日本勢ってのは、選手のことじゃない。まず、会場の日本人が圧倒的に少ない。日本ほどではないが、同じ島国として、イギリスはたいていのヨーロッパから近くない。それでもイギリス人は、我が王国のためならと、TDNにはこぞって応援にかけつける。TDNでは、男の子だけじゃなくて女の子の大会もあるから、男の子の大会の日には、女の子チームのメンバーもいっぱいいる。そういう面々が、みんな我が国の勝利に向かってひとつになる。それがデ・ナシオンだ。
 一方日本は、まずひとつにまとまる以前の人数しかいない。選手が4人、ときどき3人のときもある。それにトライアル委員長の西さんと、選手会長の小谷さんが加わることもある。ライダーには、マインダーがひとりずつ。女子チームが3人加われば、一堂に会せば相当な数になる。でも、ちょっとしたレストランで会食ができてしまうくらいの人数だ。それで、日本人は全員だ。他に、はるばる日本から応援にきてくれる人がいないわけではないけど、ここ10年ばかりは、あの人とこの人とこの人とと、名前を挙げて数えられるくらい。とても応援団などといえない少数精鋭だ。
 数もともかく、その少ない人数が日本の勝利に向けてひとつになれるかというと、これがまたむずかしい。日本人は、だいたいおとなしい人が多いから、選手の耳に届く、あるいはよその国がびびるくらいの(サッカーのサポーターみたいな)応援はなかなかしてくれない。しかも、出場している選手たちは日本のトップライダーばかりだから、よけいなことをして足を引っ張ってはいけないと考える。ルールの問題もあるし、それはそのとおりだ。
 ところがよその国ときたら、みんなが気持ちをひとつに戦う。金曜日に個人の世界選手権をこなし、土曜日にデ・ナシオンを戦った女子選手は、日曜日には男子チームに付かず離れずついて走り(自分の試合を終えたらコースを走ってはいけませんなんて、ヨーロッパでは怒られない。ほんとうはいけないのかもしれないけど、それがふつうになっている。ヨーロッパは、よくも悪くもそういうところだ)ライダーに水をあげたりしている。
 水なんぞ、マインダーが持っておるではないか。よけいなことをしやがると思う人もいるだろうけど、ヨーロッパの人たちにとっては、これが気持ちだ。でも残念ながら、歴代の日本女性陣が、男子チームのサポートに回ったことはなかった。コースがわかんないとか、オートバイ盗まれるとたいへんだからとか(そしてそういう心配はとても大きい)、よけいなことをしてはいけないとか、規則上そんなことをしてもいいのかとか、いろんな心配はあるんだけど、少なくとも、他の国がみんなやっていることが、日本はできていない。
 これは、誰がいけないの、という問題ではなくて、なんというか、国民性の問題なんだと思う。イギリスなんて、場慣れしているというか戦い慣れしているというか、たとえば「どこそこと同点だぞ」なんて追いつめられると、男も女も、がぜん強くなる。まわりでユニオンジャックを振り回す応援団も、がぜん頼もしい。
 国としてのニッポンよ、なんとかしようではないか。そういう意味では、ライダーのポテンシャルが(とはっきり言うのも申し訳ないけれど)日本のトップを4人集めたわけではない今回の日本代表チームは、新しい日本チームの行く末を占うという点で、よい指標となるにちがいない。
 ところでついでだから、デ・ナシオン募金についての愚痴を書かせてもらおう。MFJが(遠征費を含めて)主体の体制がなくなって、2003年以降はみなさんのご厚意と参加費の自費出費によって、日本チームのトライアル・デ・ナシオンの参加はなりたっている。女子も含めると選手だけで7人。マシンなしで旅行するだけでも、ひとり50万円くらいかかる(もっとうんと切り詰めることもあるいは可能だけど、もっとかかってしまうこともある)。マインダーの渡航費、マシンの調達費、マシンを運ぶためのでっかいレンタカー代などを含めると、ひとりあたり150万から200万円くらいの費用になる。7人だと、えーっ、1400万円! ぎりぎりで100万円としても、700万円だ。
 これだけの金額を毎年集めようと思うと、そうとう本気の募金活動をしなければいけない。最初の年は、それでもけっこうがんばったのだ。でも、募金活動をがんばると、募金に熱心な人が行くところに出くわした人ばかり募金をしていくことになる。知らんぷりをしている人は、いつまでたっても知らんぷりだ。そのうち、募金箱を持って歩いていると、そーっと陰に隠れるひとが出たりする。別に無視してくれてもいいんだけど、募金をする気はあるけど、毎回毎回お金を出してもいられないという人だっていると思う。そういう気持ちを考えると、募金をするのも楽じゃない。
 募金の詳細は、すべて明らかになっているわけではないからわかんないけど、関係者って、どれくらい募金してくれているのかな? 自然山通信の募金リストには、本当にごくときどきだけど、ライダーやライダーのお父さんの名前でお金が送られてくることがある。ありがたいです。でも、知らんぷりの関係者も、とっても多いんですね。
 デ・ナシオンについて、意見をお持ちの方も多い。今回も、そんなのにお金を使うなら、国内の普及活動にお金を使ったらどうだというごもっともな意見はあったらしい。ごもっともだけど、それは2003年に募金を募ってまでデ・ナシオンに参加するべきかどうか、一応みんなで悩んで決めたのだ。今さら言われてもなぁというご意見なのだ。
 そしてやっかみ半分で言えば、関係者にしても無名の方々にしても、こういう活動に批判的な意見をおっしゃる方々は、当然かもしれないけど、たいてい募金をしてくれていない。金を出さずに、口だけだそうという人がいっぱいいらっしゃる。ご意見を聞くなら、ありがたくお気持ちをいただけた方から、先にお聞きしたいもんである。

酔っ払いうさぎ

 すいません。愚痴のほうが長くなりそうだから、これくらいで。今年のデ・ナシオンは9月12日、全日本選手権中国大会の1週間後におこなわれる。そしてその中国大会の当日は、世界選手権最終戦。最終戦はチェコで、デ・ナシオンはポーランド。チェコとポーランドはお隣だから、よそのチームのみんなは、チェコに参加して、そのままポーランドへ移動して、みんなで練習などしてすごす。FIMもそのつもりで、女子世界選手権の第2戦はチェコで開催され、第3戦はポーランドの金曜日に開催される。女の子たちは、1週間ちょっとヨーロッパに滞在すると、世界選手権に2戦とデ・ナシオンに参戦できることになる。とてもお得だ。お得だけど、日本の女子選手で、この得点を使ったことのある選手は、一人もいない。これも、休みがとれないとか、そんなに滞在してる金はないとか、日本の代表として行かせてもらうのに(というほどお金の援助はないんだけど)自分のための試合に出ちゃいかんでしょうとか、日本的なつっこみはいっぱいあるのだけど、ヨーロッパの人たちは、みーんな、日本人って、何がしたいんだかさっぱりわかんないと思っているのだ。ヨーロッパのひとはなにがしたいのかって? そりゃ、トライアルがしたいのだ。
 最初の写真は、うちの村の山の中にできたひまわり園。鉄塔の下であんまりロケーションはよくないんだけど、こうしてみると、ヨーロッパのお花畑みたいだ。
 と、安物の薪ストーブの前で一升瓶を枕にうたた寝をするぐうたらうさぎ。