ご存知の方はご存知の、ぶっ壊れた原発が見える丘。ここにはWEBカメラがあって、高倍率で原発の今を見ることができます。今は少し離れたところに住んでいらっしゃるここのご主人から、特命を受けたのでいってきました。これは重要なミッションだった。
今はここに住んでない、と書いてもいいのかなと少し躊躇しました。ふつう、こんな情報を全世界に向けて発信してしまえば、それはこの家が不在であると宣伝しているようなものですから。しかしこのエリアは、現在原則として1戸たりとも在住している世帯はないはずで、まぁしかし、とんでもないことをしてくれたもんだよなぁと、あらためて思います。
さてミッションは、温度計の位置をなおすという任務だった。それはつまり、WEBカメラで気温を計測しようというプロジェクトが立ち上がったのだった。それは、ぶっ壊れた原子炉の正確な温度がつかめない東電に技術提供してあげたいくらいのプロジェクトだ。
採用されたのは、温度計を壁にぺたりと貼り付けるというものだった。WEBカメラが首を振れる位置に貼り付けておけば、当地の気温が知りたいときにはいつでも観測ができる。便利だ。
しかし、ご自宅でWEBカメラをチェックしたご主人はびっくり。なんと温度計が40℃にもなっているではないか。こりゃ温度計が壊れたのか。いやいや、貼り付けたのが日なただったから、直射日光の西日を浴びるとぐんぐん温度計の針が上がっちゃって、気温10℃くらいなのに、温度計は40℃くらいまでいっちゃうのだった。
これを解決するには方法はひとつ。温度計を貼り付ける場所を変えて、直射日光が当たらないところに設置することだ。
こちらがWEBカメラから見た日当たりのいい温度計。この日は特にお天気がよかったから、温度計はぐんぐんと上昇したのでありました。
その翌日、ぼくは任務を遂行しに現地へ。作業はわずか3分だった。長時間現地にいると累積被曝が多くなるからとか、そういうことじゃない。このあたり、すでに空間線量は0.2μSv/hを切っていて、こんなところから原発がそのまんま見えちゃうのは、逆に申し訳ない気がする。あちらの現場では、全面マスクで顔を覆い、高い線量をくらいながら、一刻を争うように仕事をしている人たちがいる。10kmちょっとへだてたこちらは、なんとも平和だ。
位置を確認するのにiPhoneで映像をチェックしていたら、WEBカメラの映像はサーバーを経由しているからちょっとタイムラグがあって、ほんの2分前に位置を修正している自分の姿を確認することができた。
というわけで、これからどんどん寒くなります。ここの温度計がどれくらいまでさがっていくのか、この冬の楽しみになりました。
ぶっこわれた原子炉もこんな感じで温度が下がっていってくれるといいんだけどなー。
ところで、こちらのWEBカメラへのアクセスですが、みんなに見てもらうのは了解をいただいてるんだけど、URL公開はちょっとためらわれるので、ご用の方はメッセージください。こっそり教えてあげます。
*2019年追記:その後、この山小屋は当時の持ち主のお知り合いに譲られて現在に至っています。敷地内に立ち入ったりするのは、おうちのひとに断ってからにしてくださいまし。