雪は降ったって春は春。シーズンは開幕してます。えいえいおー

はずれ

 スペイン、ポルトガルと世界選手権開幕戦2連戦を観戦して、今年の藤波がえらく強いのを確信して大喜び、今年の藤波は強いぞとみんなに自慢していたのだけど(ぼくが自慢してどうするとお思いでしょうが、ヨーロッパでは藤波が勝つとみんなぼくら日本人に「おめでとう」と言ってきてくれる。そのうち、ぼくが優勝したような気になる。 ヨーロッパでトライアルを見ると、こういう気分も味わえます)、これはもっとちゃんと伝えなくてはと、藤波について書きました。
 ようやく書いたぞと思っていたら、アメリカから悲しいお知らせ。「期待を裏切らない藤波」なんて書いたばっかりだったけど、こういうことが起きるのが勝負のおもしろいところだと、泣きながら納得している今日この頃です。


「気合いだー」
 と叫ぶおっさんがいる。あのおっさん自体はどうも生理的に受け付けないタイプなんだけど、ものごとに気持ちが大きく影響を与えるのはとても理解できる。昔々、砂漠のど真ん中で「パンクしたらいやだなー」と思いながら走っていたらパンクした。パンクは運だという人は多いと思うけど、気持ちがパンクを呼んでいるという気がしないでもない。
 最近はすっかりドライバーになってしまった池町佳生は「パリダカを走っていると、次はどんなトラブルが起きるんだろうとわくわくして楽しみなんです。実際にトラブルが起きると、考えていたのとちがうトラブルのことがほとんどで、そうすると“そうかぁ、そういう手できたか”とまた楽しくなる」と言っていた。ほんとは泣きべそかきたいこともあったんだろうけど、こういうふうに考えられればそうとう強い。
 池町のパリダカ論とは月とスッポンで小さくて申し訳ないけど、最近では「雨よ降れ降れもっと降れ」と思いながら街を歩いている。折り畳み傘を忍ばせていることもあるし、何にも持ってないこともある。何にも持っていない時にはどうやって雨を凌ぐか、とっさのときにどこに飛び込んで雨宿りするか、自分がどんな行動に出るのか、それを楽しみに街を歩けば、気分はパリダカの池町なのである。
 トライアルでも、ようやく最近、メンタルの勝負がというのが少しだけ感じられるようになってきた。最初は、しょうもない失敗をするうちの小娘に対して「油断してただろう」「だせーなー」と愚痴を垂れていたんだけど、世界選手権だか全日本だか、どこかで見聞きした会話を思い出して、セクションイン前に深呼吸させてみたら「なんだかとっても具合が良かった」とライダーに好評だった。それで、その後、自分でもトライの前には深呼吸することにした。
 新潟で小川友幸が久々に優勝して、勝因を尋ねたら「メンタルでしょう」と答えをもらった。小川のメンタルの弱さというか、持っているべき実力を発揮できずに脱落していく構図は自他共に認めるところだけど、小川に限らず、誰だってこういう面はある。実力をちゃんと発揮しようと思うと、最後はメンタルの勝負になるんでしょうね。
 アメリカの藤波は、土曜日の2ラップ目、第1〜第3までを連続5点となったのが敗因となった。その原因を聞いたら「集中力不足でしょう」と答えをもらった。小川の勝因も藤波の敗因も、メンタルだ。
 テクニックがないのにメンタルを鍛えてもしょうがないという意見もあろうけれど、池町のパリダカ用メンタルがニシマキの雨の日用メンタルにモディファイされたように、小川や藤波のメンタルも日常の生活にきっとモディファイして使えるにちがいないから、彼らのメンタル勝負はおおいに注目したいところ。
 それにしても、がんばれ、藤波貴久。
(写真は、ポルトガル大会の街にお住まいの、犬)