藤波貴久が、左手首を骨折した。7月23日、南フランスのカルパントラで行われたインドアトライアルでのことだった。
このインドア大会はs世界選手権などのタイトルのかかったものではなく、興業目的で開催されるもので、ライダーは自身の調整のために参加する。
事故が起きたのは90度ひねりながらヒューム管に登るセクションだった。なかなかむずかしいポイントで、トニー・ボウこそクリーンをしたものの、他のライダーは安全のためにも1回足をついて切り抜けていた。この大会は2ラップ制だったが、藤波も1ラップ目は1点ついてこのポイントを抜けていた。
同じように走った2ラップ目、ところがちょっと勢いがよすぎた。ヒューム管に登って回した先にはフロントが降りる場所がなかった。そのまま下まで落ちることになった。
とはいえ、インドアではこういうアクシデントはままあることで、藤波もよく直面しているシーンである。ところが運悪く、藤波のパンツがハンドルに引っかかり、さらにはキルスイッチのリストバンドも引っかかってしまった。こうなると、藤波は思ったようにマシンからの離脱ができない。
それでも本人の意識では、一段低いヒューム管に横腹から落ちて身を守ったつもりだった。一段低いヒューム管から、さらに床に落ち、おそらく横腹を強打したからか、しばらく息ができずに苦しんでいた。そしてその後、手首の異常に気がついたという。
横腹から落ちたつもりではあったが、手首をヒューム管に打ちつけたか、あるいは手首をついてしまったのかもしれない。その時点で骨折はほぼ明らかだったので、直接スペインへ帰って診察を受け、今後の対策を練ることになった。診察の結果、藤波の負傷は舟状骨(しゅうじょうこつ)骨折とわかった。
土曜日の夜に負傷して、日曜日、月曜日と検査などをし、火曜日には手術。今シーズンは最終戦イタリア大会がまだこれから開催となる。そしてこの大会は、藤波が久々にランキング3位を獲得するかどうかの大事な戦いでもある。
藤波には、9月第1週に開催される世界選手権最終戦を欠場する予定はまったくなく、どんなに厳しくてもこれに参加してランキング3位を目指していくつもりでいる。
InstagramやFacebookでは、左手にギプスを巻いてトレーニングをする姿を披露している藤波(写真は藤波のInstagramとFacebookからいただきました)。くよくよしていてもしかたがない、全力でこの事態にぶつかっていく、というポジティブシンキングだが、コミカルで元気いっぱいの写真はサービスショットであり、事実はもうちょっと深刻のようだ。
しかしいつものとおり「手術をすれば骨はくっつくので、あとは痛いのを我慢するだけ」とこわいことを言っている。
藤波には2006年にアウトドアシーズン直前のインドア大会で左手人さし指を骨折、苦しい序盤戦を戦った苦い思い出がある。左手人さし指はクラッチを操作する大事な指で、ほかに代わりができなかったので、痛みに耐えながら走ったのだが、開幕戦は6位となったあと、なんと第2戦では優勝している。藤波貴久の底力は常人には計り知れないところがあるが、しかしまずは、お大事にしてしっかりなおしていただきたいところ。そのうえで、最終戦で今シーズンを締めくくる戦いを見せてほしいものだ。
世界選手権最終戦は、9月10日・11日に開催される。

