5月31日、全日本第2戦は、もてぎ大会となった。いつもなら、もてぎの前にもう1戦が開催されているものだったが、今年はちょっとスケジュールが組なおされていて、その点では新鮮でもある。ただし世界選手権の2週間後、世界選手権で使ったセクションを手直しして開催されるというもてぎサイドのスケジュールはいつも通り。世界選手権の12セクションのうち、4セクションは使われていない。
今回の参加はIASが11人、IAが27人、LTRが4名、IBが50名だった(DNSで実際にスタートしなかったライダーを含む)。参加者が少なめなのは、前年比で倍ほどになったエントリーフィーの影響がありそうだが、渋滞対策としては、もしかしたらこれが一番効果的対策になっているのかも知れない。ただそれでも、渋滞がまったくなかったわけではなかった。渋滞を待っていても比較的焦らなくて済んだのが、今大会だった。
スタートしてすぐ第1セクション、そこから第11セクションまで、北ゲートに向かって下っていくセクション配置。舗装路を移動すればすべてのセクションが観戦できるもてぎスタイル。反面、セクションとの距離は他の全日本大会と比べてちょっと遠目。
セクション難度は低めで、神経戦になるのではないかと下見を終えたライダーは感想を語っていたが、それは1点を争う大会になるということではなく、失敗が5点に直結するという意味だった。オールクリーンするかもしれないライダーが出るかもしれない大会で5点を取ってしまったら、さぞ動揺が大きいことだろう。
IAS(国際A級スーパー)
氏川政哉が勝った。開幕戦に続く2連勝だ。
氏川はこれまでに、開幕戦で勝ったことはあった。2連勝もしたことはある。されど開幕2連勝は初めてだし、ヤマハに乗って開幕戦勝利をしたのも初めてだった。10セクション2ラップとSSを2セクション、合わせて22セクションで18クリーン。減点したのは全部で4セクション、5点は二つ。どちらもこの日のIASでただ一人の好記録だった。2ラップ目は9クリーン。鬼門の第8セクション以外は全部クリーンした。
この日のセクションは、神経戦といわれていた。例年、世界選手権の後の全日本もてぎ大会は、世界選手権セクションを使って世界選手権よりむずかしいのではないか、といわれる難セクションが多かったのだが、今回はその点は調整がうまくいっていたかと思われる。とはいえ、オールクリーンを競うタイプの神経戦ではないとはいわれていた。失敗すれば即5点になる設定が多いから、5点を取ったら命取りながら、誰もが5点を取る可能性はあり、5点を取らないように細心の注意を払う一方で、万一5点をとってしまった時にどんなふうに試合を立て直すか、そんなところに神経を使わなければいけない神経戦、ということのようだ。
この日の氏川の危機は、第8セクションで墜落、マシンを壊してしまったことと、その第8を結局2ラップとも走破できなかったこと。第8はほとんどが5点になった難セクションだったが、1ラップ目に小川毅士(2点)が、2ラップ目に野崎史高(1点)と柴田暁(3点)と、そして小川毅士がクリーンで抜けている。優勝に水を差すものでもないが、第8の攻略は氏川の課題にはなった。
1ラップ目2位、2ラップ目も減点をまとめて結果2位となった武田呼人は、ホンダのワークスマシンと2年目のつきあいとなって、ようやく減点をまとめ方が身についてきた様子。武田も第8は2回とも5点で、それ以外に最終第11とSS第1で5点になっている。4つの5点が全部なければもちろん優勝だが、そのうちふたつをクリーンしたとしてもまだ氏川が優勝する計算になるというのが、この日の神経戦たるゆえん。この日はSSに入るまで3位で、SS第1で5点となって万事休しながら、結局1点差で野崎と小川毅士を退けて2位に入ったところが大金星だった。これで武田は2戦続けて表彰台登壇だが、ランキングトップの氏川には早くも14ポイント差をつけられた。2連勝の氏川と勝負をするには、ともかく勝たなければいけない。順位争いには無関係ではあったが、SS第1でふらりとバランスを崩して岩から落ちるシーンなど、強さや安定感を備えるには、もう少し時間がかかるのかもしれない。IAS未勝利の武田に、その日はいつやって来るのか。まだかかる気もするし、もうすぐのような気もする。
3位表彰台は野崎だった。野崎はここのところ、ついてない。世界選手権ではスタート早々にマシントラブルで1レースをあきらめなければいけなくなった。それ以外にも細かいトラブルがあって、なかなか本人のあるべき姿を見せられないでいた。今回は、そんな野崎が久々に、らしい調子を見せてくれた一戦となった(ほんとうの絶好調とはちょっとちがう)。野崎の5点は4つ。スタート早々、第3での5点は痛かった(もちろんここも難セクションの一つではある)。しかし野崎のこの日一番の残念は、SS第1だった。10セクション2ラップを終えて野崎は2位につけていた。氏川には9点差だったからSSで逆転するのは無理っぽかったが、3位には1点差、4位に4点差。2位を守るのが野崎の使命だった。しかしSS第1の出口付近、ライバルが大きく迂回してターンをするところ、野崎は岩の上でくるっと向きを変えて華麗にアウトしてきた。ところが5点。野崎はその採点にちょっと納得いかない様子でもあったが、野崎のホイールにはテープが巻き付いていた。テープ破断での5点だった。野崎にとっては不幸中の幸い、武田もSS第1で5点だったのでここでは順位は変わらず、しかしSS第2で野崎は痛恨の1回足つきがあって、ここで武田に逆転を許してしまった。小川毅士とは同点ながら、クリーン数ひとつの差で、3位表彰台を守ったかっこうになった。最後はひやひやだったが、この表彰台が、野崎の2026年の本格スタートとなるにちがいない。

小川毅士のこの日は、あと一歩届かずの4位だった。開幕戦も4位、今回も4位だ。ただし今年の毅士は、開幕戦を去年の愛車で走り、世界選手権をシンクロのスタンダード(市販のまま、という意味ではなく、トレッキングなどに適した仕様のスタンダード)で走り、今回は世界選手権でハイメ・ブストが乗ったマシンにまた乗り換えた。今年のこれまでの3戦、全部マシンがちがうという状況での戦いだった。そして今回、第1セクションでテープを切って5点という悪夢から試合が始まった。続いて第3でも5点、みんなが落ちた第8こそ2点で抜けるも、1ラップ目は7位と低迷してしまった。ところが2ラップ目に覚醒して、鬼門の第8まで全部クリーン。第9、第11とミスがあったが、2ラップ目だけなら3位だった。SSで4点差を逆転できれば2位までポジションを上げられるところだったのだが、SS第1での2点で、4位を決定づけてしまった。第1でテープを切っていなかったらもちろんだが、SS第1でクリーンしているだけでも、2位の座が手に入ったところだったのだが、残念至極の結末だ。

5位となった柴田は、1ラップ目の第7までを1点と、ここまでは2位だったのだが、その後3つの5点でポジションを落とし、ライバルが2ラップ目に減点を減らしてくるのに対して1ラップ目と似たようなスコアとなり、開幕戦の2位から今回は5位となった。それでも、SS前の時点の柴田は6位で、ふたつのSSをクリーンすることで5位までポジションを上げたものだった。SSの2クリーンは氏川と柴田だけで、キレのいい時の柴田のキレがピカイチなのは誰もが認めるところだが、前半の好調に対して、後半の減点が多いのが気になるところ。勝てそうで勝てないライダーには、こういういい悪いの波が大きいから、でもある。

6位の久岡孝二も、実力だけならもっと優勝戦線にからんできていい一人だ。されども久岡はこれまで、3位表彰台が一回あるだけだ。今回はSSで小川友幸を逆転して6位を得た。

そして7位が小川友幸。このポジションに小川友幸がいるのが驚きなのか、大きな負傷から復帰してこのポジションにいるのがすごいと思うのか、評価は簡単じゃないが、それでもフィジカルコンディションは開幕戦よりははるかによくなっているという。今回、まず第1セクションで5点になった。セクション中盤でのミスが響いてタイムオーバーで5点になったものだが、これで大きく出遅れながら、1ラップ目は3位だった。第1がクリーンなら、トップ争いに加わっていたかもしれない。しかし2ラップ目、みんなの鬼門、第8セクションでマシンがまくれて墜落。着地した時に足を痛めて、その後のセクションもいまひとつとなった。古傷を痛めたということではなく、肉離れっぽい、とのことだが正しくは検査待ち。小川は応急処置を施して戦列に復帰したが、減点を減らしてきたライバルの前に順位を落としてSSを前に5位。2位まで6点差、4位まで2点差だから、逆転のチャンスはあった。

ところがSSで、驚くべきことが起きた。SS第1を美しくクリーンしたかに見えた小川に出された判定は5点。なんとキルスイッチのストラップを手首に巻いていなかった。キルスイッチ導入当時にはときどきあった失敗だが、最近では珍しい。しかもそれをやったのが小川友幸だったからびっくりだった。「インしてすぐ、ストラップをしていないのには気がついた。なんとかならないかとも考えたけど、なんともならない。キルスイッチはずれてるんじゃないかとかという声も聞こえてきて、これはもうどうしようもないと思った」と失敗を語った小川だが、トライ中にキルスイッチについてあれやこれやと考えながらのクリーンだから、さすが小川友幸といったところでもあった。ともあれ今回の小川は7位。開幕戦の6位から順位は落としているが、内容的にはまったくちがって手応えがあったという。とはいえ、第8の大クラッシュについては、本人は完璧と踏んでトライしての結果なので、もしかすると限界での練習ができない結果が出たかと、完全復帰にはまだ時間がかかるのかもしれない。




8位、田中善弘、9位、武井誠也、10位、平田貴裕。SSに進出できなかった1名は高橋寛冴だった。
国際A級

IASに残留基準をランキング10位までとしたため、元IASが大挙して参加しているIAクラス。開幕戦では1年だけIASを走った宮澤陽斗が勝利したが、この第2戦では2年間IASを走った浦山瑞希が勝利した。2戦続けて元IASが勝利、しかもベテラン勢ではなく若手が勝った。そしてこの二人は、ともに今年の勝利が初勝利だった。二人とも、IASへのステップアップを決めた一回目のIA時代は、ついに未勝利のままだった。そんな二人が、IASを経験してIAに復帰したとたんに勝利したのは、いろいろと考えさせられる。IASで戦うということは、ライダーを鍛えあげるについては確かなようだ。

宮澤は今回は5位だったが、この二人を含め、トップ10に元IASは8人いた。こんな逆境で10位以内に滑り込んだのは黒山太陽と永久保圭だった。同い年の二人の戦い、開幕戦では永久保に軍配が上がったが、今回は黒山が2位。元IAS勢の牙城を崩さんと、力を蓄えつつある。

2戦を終わったばかりだが、2戦続けて表彰台に乗ったのは磯谷玲一人だけだった。磯谷は1ラップ目はパーフェクトな走りでトップに立ちつつ、2ラップ目に崩れて3位。開幕戦では最終セクションまでトップだったから、無冠の帝王ここにありという感じ。磯谷もIA未勝利のライダーの一人だ。

元IAS勢の中にはIAチャンピオンもIA未勝利ライダーもいるが、今回走ったのは10人。その全員がポイントを獲得している。

レディース

参加者の増加が開設当初から命題だったレディースクラス。関東、中部、近畿の女性ライダー人口の多いところでは参加者が増えるも、それ以外の地域ではなかなかメンバーが集まらないのが課題だった。ところが今シーズンは、中部ではじまり関東が第2戦だというのに、どちらもスタートしたのは3人だった。今回エントリーは4人だったが、清水さやかが体調不良で参加を断念、3名の参加となった。小玉絵里加は活動の幅を広げるということで今回からエントリーを見合わせ、開幕戦から続けて参加は中川瑠菜と寺澤心結の二人だけとなった。負傷療養していた米澤ジェシカが戦列に復帰している。

トップ争いは二人。開幕戦では第1セクションでテープを切って5点となって万事休しながら、きっちり追い上げてチャンピオンの面目を保った中川だったが、今回はひとつの5点が致命傷になった。第8セクション、がらがらのヒルクライム。いつものように慎重にアクセルを開け、グリップを維持しながら頂点を目指した中川だったが、マシンは無情に横を向いて上るのをやめてしまった。調子がいいとは言えなかった中川だが、それでもトップに出るチャンスをうかがいつつがまんのトライを続けていたところに、この5点は決定的だった。

IASでは前半セクションにクリーンが多く、後半に5点が多かったが、これはクラスによって千差万別。寺澤にとって、前半は減点しやすく、後半はクリーンが出せるものだったようだ。中川が5点を取ると、そこから寺澤は3連続クリーンで中川を大きく引き離した。2ラップ目、中川は1ラップ目の寺澤と同スコアをマークしてラップトップとなるも、1ラップ目の10点差は取り返しがつかなかった。

13歳の中学生ライダーの初優勝。レディーストライアルに世代交代か。世代交代といえば、日本のレディースの最初の世代交代は小林由利子さんだったと思う。当時、日本GPの時にだけ併催されていたレディースクラスで、ぶっちぎりのうまさを発揮した。その次が萩原亜弥さんで、1989年大会で優勝した時は13歳(と3ヶ月)。今回の寺澤は同じ13歳だが、13歳1ヶ月で最年少。全日本格式としては、西村亜弥>山中玲美>中川瑠菜(17歳6ヶ月)と最年少記録が更新されていて、今回の心結が現在の記録となる。
国際B級

辻本雄河が開幕戦に続いて2連勝を果たした。1ラップ目はふたつの5点で3位と出遅れたが、2ラップ目に5点一つでベストラップをマークして3点差での勝利となった。

岩間隆介は初表彰台だが、開幕戦も4位と安定していて、ランキング2位につけている。

今回自身はじめて表彰台に乗ったのは楠貴裕。2022レディースチャンピオンの楠(旧姓山中)玲美さんのお連れ合い。実は初表彰台が初ポイントだった。

2戦を終わって、ポイントを獲得したのは25人。15人ずつポイントを獲得できるわけだから、ポイント獲得者はかなりばらけているといっていい。そして、1ポイント獲得でランキング25位につけるのは辻本龍司。辻本雄河のお父さんだ。
オープントロフィー

オープントロフィーは1名が参加。関東選手権NAに参戦中で、ランキング2位につける森田智樹。減点59クリーン3は、IBのリザルトに混ぜると35位相当になる。
スタート順と渋滞と参加費と
会場では、無料の公式プログラムが配布されたが、ここに記載されているスタート時刻と公式通知で通知されたスタート時刻が異なっていて、ライダースミーティングで確認するまではみんな「あれれ?」という感じになっていた。ミーティングでは、すべての情報は公式通知で確認しろ、という原理原則を徹底することになったのだが「紙に印刷したのはまちがってます、ごめんね」とひとこといってくれればスムーズなのになぁと思ってミーティングを聞いてました。今どき、紙に印刷したものははやらないということなんだろう。印刷するのにがんばったって数日かかるだろうし、電子的に発表できる公式通知はどんどん更新ができる。これからはこういうやりかたになっていくんだろうけど(世界選手権はもうすっかりそっちだ)、もし表記時効に訂正があった場合、訂正があったことも伝えてくれないと、これまた混乱が起きそうな気がする。
スタート時刻の変更は、LTRのあとIAのスタートまでにインターバルを置いたためで、このインターバルがよかったのかどうか、何ヶ所かで重体は見かけたものの、1ラップ目の渋滞に2ラップ目の渋滞がからんでぐちゃぐちゃになるという過去の悪夢は解消されていた。もっとも今回は参加者が少ないから、参加者が多いことで起きる渋滞は起きようがなかった。これまで、全日本のエントリーフィーは全戦共通が常識的だったが、去年あたりからちょっとずつ事情が変わって、今回の大会は昨年比で倍以上の値上がりとなった。それでも出場するライダーもいれば、それがゆえに欠場するライダーもいた。それぞれの思いとお財布事情は、さまざまだ。




