2月4日、バルセロナ(スペイン)のパラウ・サン・ジョルディで、2024年Xトライアル開幕戦が開催された。優勝は34回の世界チャンピオン、トニー・ボウ。2位にハイメ・ブスト、3位にガブリエル・マルセリと、2023年ランキングと同様の顔ぶれが表彰台に上がった。
バルセロナのインドア大会は1978年に始まり、これまでに46回の歴史を刻んでいる。パラウ・サン・ジョルディは、1992年のバルセロナオリンピックの際に建設された屋内競技場で、設計者は日本の磯崎新さん。以後、一貫してここがバルセロナ大会の会場となっている。ボウの勝利は16回。ボウのXトライアルタイトルは17回だが、16回の勝利のうち1回はベータでのもので、2回ほど勝利を逃している計算。ボウから勝利を奪ったのは、アダム・ラガだ(1回はガスガス、1回はTRRS)。
今回はラウンド1、ラウンド2が大接戦だった。セクションが若干やさしめだったということかもしれないが、ファイナルに進出するにはとにかく1点を争って減点を減らさなければいけないむずかしい戦いとなった。ラウンド1では、第1セクションをボウが唯一クリーン。5人が5点となった第3セクションではボウも1点を失ったが、ラウンド1はこの1点のみで走りきった。2位にブストの3点、3位にマルセリの4点と続く。4位にはシェルコに乗り換えたアダム・ラガが6点で入り、5位が7点のマテオ・グラタローラ。さらにブノア・ビンカスが9点と続いて、ライバルの減点次第では、ファイナル進出の可能性はまだ誰にでもある感じだ。TRRSのエースとなったアニオル・ジェラベルトは10点、ノンタイトルインドアで好調を示したトビー・マーチンは12点で7位、8位と並んだ。
ラウンド2はやはり5セクション。ファイナル進出はラウンド1とラウンド2の減点をトータルするから、まだまだ油断ができない。こんな中、第1、第2をクリーンしたのは3人。ボウ、ブスト、そしてグラタローラだった。マーチンは第1で1点、マルセリは第2で1点。第3ではボウとブスト以外が5点となり、ボウ1点、ブスト2点。結局この減点以外にボウとブストの減点はなく、これで決着した。3位以下は大混戦だ。グラタローラが5点、マーチンが6点、マルセリが7点だが、ラウンド1とラウンド2をトータルすると、ファイナル進出の最後の一席を獲得したのはマルセリだった。4位〜8位はここまでで順位が確定する。TRRSでのデビュー戦となったジェラベルトはビンカスに9点差で8位となった。ラガ、マーチン、ビンカスは1ラウンドだけならいいスコアがあるも、両ラウンドを安定してまとめることができなかった。ラガとマーチンは同点だが、これはラウンド1とラウンド2の走破タイムで順位が決まっている。
そしてファイナル。難度をあげた6セクションでは、まず第1でブスト一人がクリーンしてリードをとったが、第2でボウだけが3点で抜け他二人が5点。第2〜第5はブストとマルセリがことごとく5点となり、ボウは第5以外をきっちり走破して絶対的リードを築いた。ブストとマルセリは大接戦だったが、わずか1点差でブストが2位を獲得した。
マーチンや移籍直後のラガ、あるいはビンカスの好調が伝えられてきたが、本番ともいえるXトライアルが始まるや、やはりいつものライダーがいつもの強さを発揮する。いつもの順位をひっくり返すのは、そうそう簡単ではないようだ。とはいえ、グラタローラ、ラガ、マーチンはそれぞれラウンドごとにいい結果を出しているので、スコアをうまく揃える安定感が出れば、さらに上位進出の可能性はありそう。
世代交代や新たな才能の出現の可能性は感じさせつつ、結果はこれまでと変わらず。強いライダーには強いだけの理由があり、強くあり続けるための努力が隠されているという事実を、あらためて思い知らされた開幕戦となった。
Pos. | Rider | Round1 | Round2 | Final | ||||||||||||||||
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1 | 2 | 3 | 4 | 5 | S.T. | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | S.T. | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | Total | ||
1 | トニー・ボウ | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 | 2 | 1 | 3 | 2 | 0 | 5 | 0 | 11 |
2 | ハイメ・ブスト | 1 | 0 | 2 | 0 | 0 | 3 | 0 | 0 | 2 | 0 | 0 | 2 | 0 | 5 | 5 | 5 | 5 | 1 | 21 |
3 | ガブリエル・マルセリ | 1 | 1 | 2 | 0 | 0 | 4 | 0 | 0 | 5 | 0 | 0 | 5 | 2 | 5 | 5 | 5 | 5 | 0 | 22 |
4 | マテオ・グラタローラ | 2 | 0 | 5 | 0 | 0 | 7 | 0 | 0 | 5 | 0 | 0 | 5 | 12 | ||||||
5 | アダム・ラガ | 1 | 0 | 5 | 0 | 0 | 6 | 5 | 0 | 5 | 0 | 0 | 10 | 16 | ||||||
6 | トビー・マーチン | 1 | 0 | 5 | 1 | 5 | 12 | 1 | 0 | 5 | 0 | 0 | 6 | 5:00.0+3:09.5=8:09.5 | 18 | |||||
7 | ブノア・ビンカス | 3 | 0 | 5 | 0 | 1 | 9 | 0 | 2 | 5 | 1 | 1 | 9 | 4:54.2+3:55.0=8:49.2 | 18 | |||||
8 | アニオル・ジェラベルト | 5 | 0 | 5 | 0 | 0 | 10 | 5 | 2 | 5 | 0 | 5 | 17 | 27 |
この大会には、Xトライアル(世界選手権)のインターバルに、ウィメンズトロフィーも開催された。こちらは5名参加で、ベルタ・アベランが初勝利を果たした。エマ・ブリストが2位、ソフィア・ラビノが3位となっている。ブリストは第1セクションでの5点が敗因だったと試合を振り返っている。
Women’s Trophy Barcelona | ||||
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Pos. | Rider | Machine | Nation | Penalty |
1 | ベルタ・アベラン | スコルパ | スペイン | 4 |
2 | エマ・ブリスト | シェルコ | イギリス | 7 |
3 | ソフィア・ラビノ | ベータ | イタリア | 8 |
4 | ナオミ・モニュエール | モンテッサ | フランス | 11 |
5 | アリス・ミンタ | スコルパ | イギリス | 22 |