大きな災害が相次いでいます。災害支援にトライアルは最適。しっかり腕を磨きましょう。

2025年のヴェルティゴに、乗る

ヴェルティゴ・ニトロ、その2025年モデルに乗ってみた。ヴェルティゴは昨年経営システムが変わって、現在は1996年にモンテッサCOTA315Rでデビュー年にチャンピオンとなったマルク・コロメが代表を務めている。モンテッサからガスガスに移り、さらに開発キーマンとしてスコルパ>OSSA>ガスガス>EMと、幾多の名車をつくりあげてきたコロメが、新しい舞台でどんな活躍をしていくかも、気になるところだ。

小川毅士は、これまでに乗ったヴェルティゴの乗り味を思い出しながら、まず250ccに火を入れて走り始めた。毅士選手の印象だと、ヴェルティゴはたいへんに元気のいいエンジンで、250ccでも300ccかと思わせるほどのパワー感を感じさせてくれていた。もちろん300ccはさらにパワーがあるから、まず、そのパワフルぶりは群を抜いているといってよかった。


ということで、ヴェルティゴのマシンを走らせる際には、毅士選手といえど、そのパワフルぶりをちょっと覚悟してかかっていた。ところが

「もう、別のマシンみたいな特性になっている。おだやかというか、落ち着いた印象になっている」

それは全モデルに比べて、パワーが劣るということなんだろうか?

「全開で開けたときのパワーは、おそらくほとんど変わっていないと思う。ただパワー感がちがう。走り始めたときの第一印象もそうだし、実際にトライしての印象もそう」

それはエンジン特性を変えて、パワーが一気に出るパワー感をなだらかに動かした、ということなのだろうか?

「いや、トルクの山が動いたということじゃなくて、全体的にパワーを抑えてある印象。おそらくは、前モデルは全域でパワーがありすぎて、これは圧倒的多数の人にとって、乗れないくらいにパワフルすぎる、ということになったのではないかと思う。このモデルは全体的に出力の出方がフラットになっていて、誰にでも乗りやすいと思う」

その特性は、IASライダーがIASセクションを攻めるときでも問題がない?

「いや、さすがにそれはちょっとおだやかすぎて物足りない。急激なアクセル操作をするとついてこない感じはあるんだけど、逆に、圧倒的多くの人、IAの中位くらいまでの人が、その急激なアクセル操作をすると、かえってよくないことが起きてしまうから、たくさんの人に乗ってもらうには、こっちのモデルの性格の方が、メリットは大きいと思う。全日本に出ないんだったら、ぼくもこっちの特性のバイクに乗りたい」


前モデルと比べてのその特性は、250ccと350ccとではちがってるんだろうか?

「同じような特性だと思う。300のほうがパワーよりに振ってある印象はあるんだけど、それは300ccが250ccに比べてトルクがあるから、もうちょっとパワーがほしいって時にはついてきてくれる、それで300ccのほうがパワーのある印象になっているのだと思う。つまり基本的にはどっちも同じようなフィーリングだけど、たぶん、300ccの方がトルクが上げてあるって感じかな?」

乗ってみての第一印象は?

「これは2025年モデルだから、という問題ではなくて、個体差のようなものが大きいと思うんだけど、正直なところ、これまでヴェルティゴのクラッチは、そんなにキレがいいイメージはなかったんだけど、それが今年はすごいクラッチの切れが良かった。250ccは逆にキレがよすぎて、レバーをちょっとさわっただけでパワーが切れるので、ちょっとタイミングを取りづらいみたいくらいにもなっちゃった。もちろん切れすぎのクラッチは調整のしようがあるし、切れが悪いのも調整できるんだけど、調整して、各パーツのマッチング次第では、ここまでクラッチが切れるのは、ちょっとした発見だった。それにはもちろん、調整するためのノウハウも必要になってくるわけだけど」

さわっただけで切れるクラッチは敏感すぎて使いにくいかもしれないけど、手が小さくてレバーを大きくストロークさせられない人にはいい仕様になるかもしれないですね。

「そうだね。本当にもう、1mm動いてるかどうかくらいで切れちゃう感覚だった。ただ切れがいい分、半クラの範囲も小さくなっている。クラッチ関係のいろんなパーツがすごく高い精度で揃ったんだろうけど、こういうクラッチになるのか、という発見。ダイヤフラムクラッチにはあんまりなじみがないから、どうやったらこういう仕様に仕上げられるのか、逆にもっとゆっくりの仕様にするにはどうしたらいいか、ダイヤフラムなりの技術があるんだろうけど、興味深いところだった。機械として精度がいいというのは、それだけ聞けば悪い印象はまったくないだろうけど、精度がいい、がイコール乗っていていい結果が出るかどうかとはまたちがうという気もする。250ccに比べると300ccのほうがもう少し半クラッチの幅がある。たぶん250ccの方が機械としての精度は高いんだろうけど、乗っていての感想は、半クラッチの幅がある300ccの方が乗りやすかった。ということで、クラッチについて、いろいろおもしろかったけど、これは新モデルの特徴だとか、250ccと300ccの差異とはちがう次元のことになると思う」


ほかにはどんな?

「すべての面を走ってくれるという印象かな。逆に言えば、リアサスが跳ね上がってこないという面もあるんだけど、たとえばステアにバーンと当てても、暴れることなく上までスルスルって走っていくような感じ。これはどういうことなんだろうとちょっと不思議な感じにさえなる。いまどき、こういう言い方はしないかもしれないけど、すごい後乗りができるマシンだなという感触がある。逆に、後乗りしなで 体が先に行くと、うまく走ってくれない。ちょっと後ろ側に残しながら行くと、まった跳ねずに全部面を走って上がってくれる。これまで、後ろが跳ね上がるからそれを見越してからだを前に持っていったところで、ずっとからだを残しておけるから、これまでとはちがう走り方ができる、ということかな」

いいことだらけ?

「ただ跳ね上がる前提で、からだが前に入る癖がついている人とかは、このマシンだとじっとからだを動かさずに待っていなければいけないことになる。だからうまく使えればかなりの戦闘力になるけど、これは好みが分かれるところなのかもしれない。ざっと分類すると、飛んだり跳ねたりの派手なライディングしかできない人は、このマシンだとちょっと苦労する。オーソドックスな走りもできる人には、このマシンの特性はけっこうな戦力になるんじゃないかな? ぜんぜん跳ねないし、すごい乗りやすいと思う」

「あと、ちょっと新しい乗り味だなと思ったのは、フロントの浮き方がおもしろいというか、今までの乗り方のままだと、ちょっと不思議な感覚になる。ステアを無意識に上がって、たとえばそのままフロントをつっていこう、なんていうときに、フロントタイヤが勝手に落ちてしまう。つっていくぞと意識していればつったままでも走れるんだけど、ぼくたちのいつもの感覚で無意識にやると、スッとフロントタイヤが下りてくる。特にフロントが重たいって感じはないんだけど、重たいから落ちてくるんだと思う。それがまた、さらに落ち着いた乗り味を作り上げている印象がある」


「この落ち着いた乗り味は、フロントをつったりダニエルをしたりする以外にも、落ち着き傾向ゆえの特徴がでてくる。いろんな動きがゆっくりしている。IASのセクションを走破するようなタイミングからすると、ちょっと待ちきれないくらいのスピード感なんだけど、実際のところ、そこまで早い動きができるライダーは多くはないから、この仕様は多くの人にとって歓迎できるはず。この、遅いという感覚と重たいという印象はちがうんだけど、ふだんぼくのライディングを見ている人からすると、いろんなタイミングで待っている時間が長いから、重たそうに乗ってるように見えるかもしれない。ただ乗ってる側からすると、マシンのタイミングに合わせているだけで、けっして重たくは感じていない。早く動けない多くのライダーにとっては、ますます重い印象はないんじゃないかと思う」

「ただ、重たいなと思うこともあった。それは振る時。サスペンションの動きがゆったりしていて、ぼくの感覚とタイミングが合わせにくい。動きを待ちきれなくて動いちゃうと、重たいな、という感想につながってくるんだけど、それがリンクを変えた結果なのか、ユニットそのものの特性なのかは、ちょっと特定できないけど、いずれにしても、マシン全体が落ち着いた特性をコンセプトにしているのはまちがいない」

「このあたり、ちょっと乗っただけでこのマシンなりの乗り方になっていない。ある程度乗り込みで解決すると思うけど、そういった慣れの問題の違和感より、このマシンについてはとにかく面をとらえて走ってくれるところに、メリットを感じられるかどうか。そこが大きいんじゃないかな。そしてこの、素早い動きができるライダー向けのマシンづくりから、多くのライダーにとって快適なマシンづくりへと流れが変わってきているのは、ヴェルティゴに限らず、どのメーカーのマシンでも感じる。自分のマシンも含めて、素早い動きが前提の動きをする筆頭株はベータだったのだが、ベータも去年あたりからマシン特性が変わってきている。そしてその中でも、ヴェルティゴはなかなか落ち着いたほうに振った味付けがされていると思う。なんなら、RTL以上に落ち着いてるかもしれない」


このマシンには、他のマシンと同様、晴れモード、雨モードの切り替えがある。毅士選手自身、実戦で使うことはあまり多くないというが、きっちりテストしてもらった。

「モードを切り替えても、性格としてはそんな大きくちがわない感じ。フィーリングは同じような感じだね。トルクが単純に細くなる太くなる、みたいなところじゃないかな。雨モードの方がトップのトルクが細いから、躊躇なく回しやすいみたいな使い方はできると思う。エンジンの回り方はどちらのモードも同じ」

毅士選手の感想をまとめると、デビュー当時のヴェルティゴは、フューエルインジェクションらしい、回しただけ回る(2ストみたいに開度が一定なのに回転が上がっていくことはない)、その代わり低回転からしこたまパワーがある性格だったが、年式によって変化があって、回転がある程度自動的に上がる2ストローク的になりながら、パワーもインジェクションの恩恵か飛躍的に出ている、というのが前モデル。ところがこれは、毅士選手でさえ、このパワーはちょっとと言わしめるほどの圧倒的なもので、それがメーカーとしても反省点になったのか、使いやすい出力特性にアレンジしたのが、現行モデル、ということになる。

毅士選手でさえ、このパワーはちょっとというくらいだから、前モデルに乗りきれるライダーは皆無なのではないかと思われるも、実際は、走り込んで慣れていくと、もう少しパワーがほしいと思うようになる。ということで、現行モデルではパワーがないと注文をつけたがる層も出てくるかもしれないが、毅士選手によれば、それはIAの上位レベル以上で、ほんの一握りの人になるのではないか、ということだった。IA中盤、あるいは多くのアマチュアライダーにとっては、状況に応じた細かいアクションを強いられることなく、アクセル開けてクラッチをつなげばバイクが勝手に行ってくれるような快適な走破性を手に入れられるだろう、ということになる。


250と300のどっちがいいか、というのはむずかしいところで開けて走るのにためらいがない人は300ccに乗ればより得られるものがあるかもしれないが、パワーに気持ちが負けて開けられないようでは本末転倒になる。そういう人には250ccのほうが開けやすくて気持ちのいいトライアルができそうだ。もっともこれは、ヴェルティゴに限ったことではなく、全メーカーに共通するところだ。

「このモデルは、全域でパワー感を抑えられているけど、たとえば中速のパワーが出ているというのもいいことばかりじゃなくてこのパワー感だとこれくらい開ければこのステアは上がれると想定して挑戦すると、中速がたっぷりで、それに比べて高速域がわずかに細いと、感覚を調整しきれなくてステアから落ちる、という可能性もある。下から上まで、ライダーが開けられるだけのパワーが自然に出てくるエンジンが扱いやすいというのは、そういう意味合いでもある」

さて、ここで基本に戻って、このマシンの操安性(操縦安定性)について聞いておこう。

「前と変わっていないと思うけど、スイングアームも変わってるから、進化はしてるんだろうね。ポジションが大きいとか小さいについても、特に違和感を感じなかった。ぼく自身の感覚からすると、ハンドルからフロントタイヤまでの距離は、ちょっと遠いかな、という印象。でもそれはすぐ慣れるレベルの話だと思う。フロントフォークの長さは他と変わらないし、キャスターが少しだけ寝ているのかもしれないけど、どこからそういう印象が出てくるのかはちょっとわからないな。タイヤが遠いというのはほんのちょっとのことだけど、感覚的な話できちんと計ったわけじゃないです」


ヴェルティゴとしては、このモデルはかなり完成度の高い1台と見ているようだ。このモデルでは、トランスミッションのギヤに穴が開いて、軽量化とオイルの撹拌を狙っているようだが、そういう細かい信頼性アップが、今後の開発のメインになっていくのかもしれない。

もともとヴェルティゴは、マシンからエンジンを降ろさずにミッションを抜き出すことができる画期的な設計をとっている。とても簡単に作業が可能だという。実際には、これはセッティングの変更より、メンテナンスに有効という意味合いが大きいらしいが、その恩恵に浴した人はそんなに多くはないかもしれない。

完成の域に達した乗りやすい最新のヴェルティゴ。フューエルインジェクションの老舗(というほど歴史が深いわけではないけれど)マシンは、安心感を増している。

2025年モデルの主な変化について

このモデルでは、バッテリーがクロスボウ製に変わっている。クロスボウはヴェルティゴのサブブランドともいっていいもので、かつては自転車も作っていた。今回はハンドルバーもクロスボウ製になっている。バッテリーは当然リチウムイオン製だ。

今回のモデルチェンジで最も大きいのがリンクだという。構造も変わり、削りだしからプレートで押さえるようになっている。これは軽量化に寄与しているが、落ち着きのあるライディングは、このリンクによるところが大きいようだ。リンクの変更は、サブフレームから変更になっているから、従来のリンクをつけたり、従来モデルに新型のリンクをつけるのは不可能ではないながら、なかなかの大工事となりそうだ。


エンジン内部での大きな変化は、トランスミッションのカウンターシャフトに小さな穴が開いて、シャフトの中にオイルが通るようになったこと。この穴からオイルが吹き出してきて、より潤滑性能が高まった。従来製品もシャフトは中空構造だったが、これは軽量化のための中空で、積極的に潤滑を考えたのはこのモデルからだ。

タイヤはダンロップの803GPが装着されていた。803GPは絶版となっているが、タイヤの製造時期は2023年末となっていた。ジオマックスへの切り替え時期のものをおさえた、ということかもしれない。