大きな災害が相次いでいます。災害支援にトライアルは最適。しっかり腕を磨きましょう。

Y.R.A.と野崎史高、南アルプスの高原にて


Y.R.A.、ヤマハ・ライディング・アカデミーなるオートバイ講習会をのぞかせてもらってきた。お客さんは静岡市のオフロードバイク隊と、周辺の自治体のバイク隊など、そのお仲間のみなさんたちだ。

講師は4名さまいて、そのうち一人が野崎史高。みんな教えるについては百戦錬磨で、この中では野崎は一番新米ということだった。年齢がどっちが上とか、世界チャンピオンになってるかどうかより、Y.R.A.の活動実績を積んだ者の方が先輩になる。そゃりそうだ。

とはいえ、トライアルの先生は野崎一人なので、入門・基本を他のみなさんが担当して、トライアルに特化した部分は野崎先生が一人でやる。

静岡のオフロードバイク隊をはじめ、各災害支援に向けたバイク部隊のを活動については、存在は知っていたけど、その訓練を見たことはなかった。取材のお誘いをくれたのは野崎選手本人。Y.R.A.では初めてという、トライアルのデモンストレーションを組み込んだという。

しかしさて、これがとんでもない山奥でビックリだった。最寄りのインターを降りてから1時間半、しかもその距離たったの40km。延々とくねくね道をあがると、南アルプスの稜線の見えるなかなか天国みたいな草原風景が広がっていた。


なんでこんなところでと聞いてみると、ここは静岡市所有のスキー場なのでオートバイの訓練とかも比較的やりやすいということらしい。ここまで峠道を上がってくるだけでそうとうのオートバイ訓練になるとも思うんだけど、ここでの訓練目的は、オフロードだ。

こんな天国のような環境でオートバイに乗れる静岡市のオフロード隊のみなさんは、そのしくみがちょっとおもしろい。みなさんは静岡市の職員であって、オートバイ隊に所属するかどうかは、それぞれの任意で、それぞれの職場を持っていらっしゃる。住民課の誰かだったり税務課の誰かだったり産業課の誰かだったり、ということだ。人事でオフロード隊に移動はしない。免許を持っている必要があるし、このお仕事は、通常のお仕事以上に、オートバイに乗るのがある程度好きじゃなければ務まらないからだ。

ただしボランティアではなくて、今回の2泊3日も業務だし、ずらりと並んだセローも、静岡市の所有物だそうだ。すごい。なんせこの講習スケジュール、お昼からお昼までの2泊3日という長丁場だ。一般の人だったら、それだけ休んでスクールを受けには来られないし、なかなかうらやましい限り。その分、しっかり身につけて帰らないといけないから、気合いを入れる必要もありだ。


この講習会は、実は長い歴史があるそうで、古くは伊藤敦志さん(3度の全日本チャンピオン)や木村治男さん(初代全日本チャンピオン)が担当されたこともあるということだけど、木村さんも敦志さんも取材に来いとは言ってくれなかったから、今回、野崎先生に誘われて初めてその存在を知るところとなった。自然山通信は野崎先生のお誘いにはほいほいとでかけていく前例ができてしまった。野﨑先生も、ちょっと変わったネタに誘ってくれるから、つい誘われてしまう。ちくしょう。


野崎デモは、開校に先がけておこなわれた。先生の腕前や、トライアル技術によってオートバイがどんな動きをするのかなどを知ってもらうにはいい導入だ。とはいえ、こんなことはすぐには(たいていは永久に)できないし、へたに真似しようと思うとけがするかもしれないから、見てる方もへんな期待と興奮はしない方がいいかもしれない。

Y.R.A.では、野崎史高はTY-Eに乗るワークスライダーとしてではなく、インストラクターとしてお仕事をする。Y.R.A.の野崎先生が、TY-Eに乗ってデモをするのはちょっと筋がちがうので、この場でTY-Eが走るのは各方面の理解があって実現したとのこと。TY-Eの登場は、受講生の皆さんにも大注目だった。

講習会は、よく見かけるトライアルスクールのように、初級者と上級者に分かれて始まった。組み分けは自己申告だそうだけど、初級者クラスには免許とりたての人もいた。免許とって、自分のバイクを買ったんだけどまだ届いてないという方もいらした。今のご時世、オフロードライディングをしようと思うのは、ひととおりバイク遊びを経験した人が多いけれど、お仕事として手を上げてしまったからには、最初からこんなメニューでライディングスクールを強いられるわけだ。なんともうらやましい

講習メニューについては、大きく見ればよくあるスクールのメニューを外れることはないけれど、この会場のロケーションがとにかく広大ですばらしい。鹿よけの柵の門を開けて1周してくると、ちょっとしたマディやつづら折れっぽいのもあってオフロードツアーとしても満足度高い。景色がいいと、それだけで楽しい。


静岡市のオフロードバイク隊はみんなセローに乗っている。225ccが多いけど、250ccもいる。災害時にいち早く偵察に向かうにはトライアルテクニックとトライアルバイクが最強とは思うけど、一般道をふつうに走る必要もあるだろうし、日本のメーカーから購入できる安心感は、やっぱり大きい。こういうバイクは作り続けなければいけませんね。


このメニューで、野崎他、先生たちが乗っていたのはトリッカーだった。トリッカーはセローと同じフォーマットのバイクながら、小径ホイールを装備するなどして、より小回りが得意な仕様になっている。今回の先生たちのトリッカーに装着されていたタイヤは、純正ではなくて、りっぱなオフロードタイヤだった。トリッカーが市販された当時は、あのサイズにはロードタイヤに毛が生えたくらいのものしかラインナップがなくて、オフを走るにはホイールを交換したり、けっこう苦労していたものだった。このこのタイヤなら、お金も手間もそんなにかけずに、そのまんまで充分楽しめる。トリッカーはもう生産してないけど、今また世に出してくれたらいいのになぁ。


中にお一人、もう20年オフロード隊の活動をやっていて、トライアルバイクも持っていたことがあるという方がいらして、さすがにとてもとてもお上手だった。セローでトライアルは、野崎先生が雑誌などで披露してくれているけど、野崎先生と同じとはいかなくても、しっかり修業して、正確にフロントを上げることができて、正確にアクセルを操作できるようになると、正確に走らせられるようになるんだなぁとあらためて感動した。

白バイのみなさんも、訓練の当初にはトライアルバイクを使用する。オフロード走行のいろははトライアルから始まる。みなさんも、ぜひトライアルやってほしい。


ということで、下界の喧騒と猛暑を離れた別天地でのオフロードスクール。お仕事で学ぶという責任感からか、見る見る上手になっていくのにも感心したものだけど、野崎スクールの例に漏れず、笑いに包まれながらの楽しいスクールとなった。

静岡市の皆さん、たとえ富士山が爆発しても、心強いみなさんが腕を磨いています。安心してください。でもあなたもぼくも、非常時にお役に立てるよう、日ごろからしっかと心構えをしておくべきだと思ったのでありました。

下の動画は、オフロードバイク隊の取り組みをヤマハ発動機がショートムービーにしたもの。なかなかかっこいい。