大きな災害が相次いでいます。災害支援にトライアルは最適。しっかり腕を磨きましょう。

小川毅士、快勝の3勝目。IAは野本佳章が勝利

2026宮崎の小川毅士

令和8年熊本地震で被災されたみなさまのご無事と今後の安全・復興をお祈りします。この大会は宮崎県で開催されましたが、熊本空港まで飛行機で駆けつけた関係者や選手も多く、優勝した小川毅士選手もその一人でした。かくいうワタクシも、金曜日と日曜日は熊本に一泊しました。来年、全日本選手権が再び開催されて、再びこの地を訪れるまで、どうぞお大事にお過ごしください。

震災の2週間と2日前の2026年7月12日、宮崎県えびの市矢岳高原トライアルコースはいいお天気でした。日差しは厳しかったけれど、高原の風は涼しく、日陰は気持ちのいいトライアル観戦日和でした。

2026宮崎。10セクションの上から

小川毅士が快勝した。SSを走る前、10セクション2ラップを終えたところで勝負は決まっていた。13点差。ぶっちぎりといってもいい。IASでの勝利はこれで3勝目。最初は2014年、2勝目はつい去年、2025年。2勝目から3勝目はあっという間でもあり、長い半年でもあった。

2026宮崎の表彰台の氏川政哉と小川毅士


毅士が勝利する時は、いつも突然だ。2ラップ目の途中で、門永監督に状況を聞くと「今日はラッキーなことも多いけれど、優勝するほどではないんじゃないか」と答えが返ってきた。ラッキーとは、間に合うか間に合わないかでセクションアウトをしたら笛は吹かれていなかった(アンラッキーの場合は笛が鳴っている)とか、ゲートマーカーが動いたか動かないか微妙なところで減点なしとなった(アンラッキーの場合はもちろん5点になる)とか、そんなこんならしい。運不運で勝敗が決まるとなると、ギャンブル勝負みたいに感じてしまうかもしれないが、実力を充分に持っているものが争える運命勝負があるものだ。

2026宮崎の小川毅士の危機

たとえばこんなシーン。今回のセクションは、持ち時間ぎりぎりのところが多かった。一つ一つの難度はそんなに高くは見えなかったが、とはいえ、IASのIASらしいポイントが難易度120だとすると、長いセクションに設けられているのは難易度80〜90くらいかと思われる。目をつぶってクリアできるレベルではない。時間に追われて走っていると、ついこういうことは起こりうる。このセクションでは、多くのライダーがタイムオーバーで5点になっていた。この時も、これは明らかに間に合わないシチュエーションだったが、カウントをされながらセクションの残りを淡々と走ったところ、残り時間はコンマ5秒だったかコンマ3秒だったか、ともかく間に合った。これくらいのタイミングだと、オブザーバーのストップウォッチを押すタイミングでも影響があるかもしれない。間に合うはずが間に合わなかったトライだって多々あった。この日はほとんどすべてが、いい方向に転がった。

2026宮崎の小川毅士


この日、毅士は第1、第2と5点になった。どっちも5点の多いセクションだったのが不幸中の幸いではあったが、なんとも幸先が悪い。ベータSINCROファクトリーに乗り換えて3戦目、前回7位の雪辱を晴らしたいところなのだが。流れが変わったのは第4セクションだった。特に難攻不落というわけでもないが(柴田暁と野崎史高にクリーンが出ている)、それぞれに細かいミスが出る。タイムオーバーのリスクのある長いセクションでは、行けるはずのポイントなのに落ちる悪循環とみんなが戦うことになった。1ラップ目のクリーンは柴田一人、毅士が2点、氏川政哉が3点。これで毅士は一躍同点トップに出た。毅士、柴田、氏川、そして武田呼人が13点。武井誠也が14点、久岡孝二が16点、復調の兆しを確実に見せながら圧倒的に強かった流れは取り戻せないでいる小川友幸が18点。5点の間に7人がひしめいている。

2026宮崎の小川友幸


結果的に、毅士がトップを誰かに譲ったのは、このあとたった1回だけ。第7セクションで5点になった時に、武田が1点差でトップに出ているが、次のセクションでは毅士1点、武田3点で再び毅士がトップに出ている。ただ毅士はこの戦況を知らない。前回同様、国際A級をも追い抜いていこうというハイペースでセクションを回っていたから、ライバルの動向は知らぬままだ。その分、自分のトライに集中ができていた、のかもしれない。逆に、毅士に少し遅れてセクションを回っていた久岡は、クリーンこそ少ないものの(1ラップ目、毅士はクリーンゼロだった)5点最小限でセクションを走破していく毅士の姿がプレッシャーとなって、5点を連発してしまった(ただし久岡には1ラップ目ふたつのクリーンがあった)。

2026宮崎の柴田暁


毅士がトップをしっかりキープし始めたのは、2ラップ目中盤だった。2ラップ目序盤は、リードはあってないようなもので、第1セクションで1点を取った毅士は武田に同点トップに並ばれている。しかし毅士の2ラップ目、5点はたったの二つ。ライバルがタイムオーバーや時間に追われて岩からずり落ちていくのを尻目に、毎セクション、確実にリードを広げていく。第7セクションの時点では、すでに10点を超えるリードを築いていた。

前回勝利の和歌山・湯浅大会では、SS第1まで勝利が決まらず、緊張のSSとなったのだが、今回はノープレッシャーだ。SS第1は絶対的難関で、岩の高さも殺人的だったが、手前の助走が複雑になっているのがみんなを悩ませた。まったく歯が立たなくても、惜しいところまで登っても、結果は5点。そんなトライが続いた。初めて走破したのは氏川だった。氏川は右端のテープぎりぎりの岩から一気にジャンプしてこの岩を攻略した。これは氏川の大金星だった。けれどふつうならここにラインは見えない。テープは岩の上で左右に多少揺れているから、その瞬間、わずかに左に揺れてきたら、テープを切ったり、テープの外側を走ってしまう恐れがある。氏川のあとにトライした武田、そして小川友幸は、真正面からトライして、失敗した。これで氏川は一気に4位から2位にポジションをジャップアップさせていた。一か八かの賭けだったのかもしれない。それがうまくいった。

2026宮崎の久岡孝二


そして最後の小川毅士。毅士は正面突破だった。そして足つき2回で抜けた。ラインと行き方はそれぞれ微妙にちがったものの、岩への正面突破で攻略したのは毅士だけだった。勝利者としての面目躍如だった。SS第2は、最後の超大岩が鬼門だった。飛びつき用のきっかけも用意されていたので、岩に飛びつくのは彼らにとっては簡単だったかもしれないが、岩が丸いもので、着地地点がちょっとずれると、岩から滑り落ちてしまう。うまく岩に乗せたのが小川友幸と氏川の二人。小川毅士はわずかラインがずれて、岩から滑り落ちて試合終了となった。

2026宮崎の武田呼人


結果、毅士のリードは11点、氏川がSSで2位に躍進し、小川友幸が3位となって負傷からの復帰以来、初めて表彰台を獲得した。今シーズン、3戦連続表彰台に乗っていた武田は、氏川に逆転されて4位となった。しかし今シーズン、氏川に次いでコンスタント、高順位でフィニッシュしているのが、武田だが、ランキングでは前回初勝利を挙げた柴田が2ポイント差で2位を守っている。

2026宮崎の氏川政哉


ライダーが化ける、とよく言われる。毅士はまだ化けるには至っていない。勝てる力量を持っていることを証明はしたけれど、勝ち方はいまだ模索中かと思われる。初優勝したばかりの柴田は、これからだ。今化けつつある、あるいはすでに化けたのは、氏川だ。氏川は開幕2連勝したが、勝った2回より、勝てなかった続く2戦に、氏川の強さが見える。この2千、氏川はSSまでトップとは遠いポジションにいた。しかしどちらも、終わってみれば2位。タイトルを目指すライダーにとって大事なのは、いい時には勝利することより、悪い時に何位になるかだ。この2戦、氏川の走りはけっしてよくなかった。あっけない5点も多かった。しかし氏川が2敗したそのいずれも2位に踏みとどまったのは、最善の結果でもあり、チャンピオン候補としての王道でもある。シーズンはこれから終盤、大逆転劇の可能性はまだ残っているが、チャンピオンライダーに化けてしまったライダーに勝つのは簡単ではない。はたして氏川は、本当に化けたのか。残り4戦は、そこに注目だ。

●IASクラス・トップ6のセクションごとの順位表

Pos.1Lap2LapSS
1234567891012345678910S1S2
12
5
8
13
16
17
21
23
26
31
32
35
35
40
43
43
44
44
45
50
52
57
23
7
9
13
18
18
22
24
27
32
32
37
39
44
49
50
55
55
58
63
66
66
35
8
10
13
18
18
23
26
28
33
33
38
42
45
50
50
55
55
58
63
68
68
45
8
11
13
18
20
25
26
29
34
34
39
43
47
51
52
55
56
60
65
68
73
55
8
11
14
19
21
26
27
31
36
41
41
44
48
52
52
55
57
60
65
70
75
65
10
13
16
21
21
26
28
31
36
41
44
46
49
52
53
58
59
64
69
74
79
75
10
13
18
23
23
26
28
33
38
43
48
53
58
63
66
71
73
78
83
88
92
苗字の1文字をとったら同じになってしまうのが2組あったので、全員名前の一文字で表しました。
同点の場合は、最終順位が高い順に並んでいます。


●国際A級。野本佳章、IA再登場即優勝

IAS残留を10人に限定する規則変更を受けて、IASの出場資格を失った野本佳章(ちなみに2025年ランキングは13位だった)が、仕事の合間にIAクラスで今シーズンの初出場を果たした。

2026宮崎の野本佳章


野本は2009年にIAランキング2位でIASにステップアップ、以後、15年間IASを走り続けてきた。当初はお父さんをアシスタントにつけていたが、最近はすっかりライダー一人の参加。それでいて、けっこうな難所を走破もし、失敗しても無難にマシンをコントロールするなど、IASの中でも独特な個性を発揮していた。

もともと野本は、アクロバチックな激しいセクションが好きで、ていねいに走らせていくポイントは、あんまり得意ではない。そういう意味では、IASこそ野本の舞台といえる。IASに比べれば、IAは走破不能と思われるセクションは少ないし、その代わり、勝つためにはすべてのセクションで集中力を切らさず、細心の注意を払って走り続ける必要がある。どっちかというと、そういうのは野本の本領ではない。IAになったらトライアルやめちゃうかも、なんてことも言ってた野本だが、しかしきっちりIAに出場してきた。

今シーズン、宮澤陽斗、浦山瑞希と、IAS経験者が勝利している。宮澤と浦山はIA初勝利だった。野本は2009年、ランキング2位になった時に、終盤戦2連勝の実績がある。とはいえ、それから15年IASで勝利には縁がなかったから、勝ち方を覚えているかは不安なところだ。開幕3戦で、いずれも初優勝が出ている。第4戦も、あるいは誰かが、初勝利を狙ってくるかもしれない。


しかして、大会序盤、4連続クリーンで快調なスタートを切ったのは、やっぱり野本だった。第5セクションでは5点になったが、その後も5点なしで1ラップ目をまとめた野本は、2位本多元治に7点差でトップだった。10点台は野本と本多の二人だけだった。

2026宮崎の表彰台にて。野本佳章。


2ラップ目、1ラップ目に4連続クリーンした序盤セクションで二つの5点。ここだけで12点も減点してしまった。しかし第5でやっぱり5点になった後は、4連続クリーン。1ラップ目よりは減点を(だいぶ)増やしたが、2ラップ目は18点だった。

2026宮崎の本多元治


2ラップ目のトップは本多で16点だった。2ラップ目の本多は最終セクションまで5点なしだったが、最終第10で5点になっている。これがクリーンなら野本とは同点ながら、クリーン数で3つほど野本が上回るという戦況だった。

2026宮崎の黒山太陽


3位は黒山太陽。初優勝からの2連勝はならなかったが、この日は調子が悪かったそうで、調子が悪い中でこのポジションをキープは立派。これで黒山はランキングでも宮澤を抜いて単独トップに立った。

●レディース。中川瑠菜、一敗からの2連勝

2026宮崎の中川瑠菜


4名の参加。今年は4名以上の参加がないこのクラス。トップのレベルは向上しているとしても、参加者が少ない選手権にはあんまり価値がないから、主催側はなにか対策を講じた方がいいと思う。NB以上で地方選手権に参戦実績のある人、という参加資格なのに、セクションの大半がIBと同じという設定だから、向上心旺盛なレディースでないと、おいそれと出場できないのではないか。

今回は小学生の泉心愛莉がメカテクノとともに初登場。5点ばっかりじゃないといいな、といいながら笑顔でスタートした。

2026宮崎の泉心愛莉


その泉はクリーン1、5点6でまずまず目的を果たした。3位の米澤ジェシカはクリーン7、5点4で44点だった。

2026宮崎の米澤ジェシカ


優勝争いは、今回も中川瑠菜と寺澤心結の二人。減点は米澤の半分くらいにまとめたが、クリーン数は9と、米澤とそれほどの差がない。寺澤には5点がなく、中川は5点が一つという神経戦だった。

中川の5点は1ラップ目の第5セクション。それでも1ラップ目のスコアは中川が寺澤を4点リードしていた。2ラップ目は寺澤がラップトップをマークしたが、しかし中川が1点差に迫っていた。トータルでは3点差で中川が勝利した。

2026宮崎の寺澤心結


今、全日本レディースはものすごい勢いで世代交代が進んでいる。優勝争い、チャンピオン争いもとても興味深いものになっている。だからこそ、このクラスが少数精鋭のままレベルアップを果たすのか、参加者を増やして層の厚みを求めるのか、どっちに向かっても、このクラスは消滅しないで続いてほしい。

●国際B級は上福浦明男が勝利


125ccマシンを駆る上福浦明男が、2018年にIBチャンピオン争いをした時以来、10年ぶりの勝利を飾った。

2026宮崎の上福浦明男


5点が取れない神経戦。1ラップ目の上福浦は細かい減点がかさんで辻本優河と同点2位となったが、2ラップ目にラップレコードの5点をマークして勝利した。辻本は2ラップ目も7点をマーク、他にも2ラップ目の岩間隆介が7点をマークしていた。

今回の10位までに入った10人が喫した5点が全部で12個だったということで、いかに神経戦だったのかもわかる。ただしクリーン数は上福浦、辻本の12個が最高。5点にはなれないが、クリーンを連発するのもむずかしいという、なかなかテクニカルな設定だった。

今大会はIAS、IA、LTR、IBの4クラスがいずれもベータライダーによる勝利となった。

●スタート進行について


このところ、全日本の参加者が少ない。参加者減は歓迎すべきことではないかもしれないが、参加者が少ないことで、国際B級も含め、すべてのライダーが1分に一人ずつのスタートとなった。渋滞対策効果としては、てきめんだった。もちろんややこしいセクションではいくばくかの行列はできるのだが、致命的な渋滞はIBの2ラップ目とIA、IASの1ラップ目が重なる頃に訪れる。仮にIBだけの大会だったら、1分一人スタートでも1分二人スタートでも、大きな問題にはならないんじゃないかと思われる。今回のIBは50人弱。1分一人スタートだとスタート進行に50分かかる。1分二人だと25分で済んでしまうから、IBの先頭から最後までが濃縮された状態でセクションを回ることになる。

参加者は多い方が楽しいから、参加者100人オーバーが再び訪れる日がくればいいんだが、できればその場合でも1分一人スタートだといいな。スタート進行に1時間も2時間もかかってしまうではないか、という声も聞こえてきそうだが、トライアル・デ・ナシオンでは、世界選手権(GP)、ウイメン、インターナショナル(T2)を合わせると30チームを超える。今は1チーム3人だが、かつては1チーム4人だったんだけど、スタートは一人1分間隔で配分されるから、30チームなら120分、40チームなら160分(2時間40分)かかることになる。TDNは日が短い秋の開催だから、一番スタートはまだ夜が明けていない真っ暗な中を出ていったのを見たことがある。もしかしたら当時は、2分に一人ずつだったかもしれない。だとしたらスタートするだけで4時間、5時間の長丁場だ。そんなになっても、スタート間隔を維持するのが、世界選手権の譲れないところなんだろう。日本も、真似してくれないかなぁ。オブザーバーの皆さん、主催関係者の皆さんはたいへんだろうけれど。