雪は降ったって春は春。シーズンは開幕してます。えいえいおー

公認する(そして検定合格)

アニエーゼの証明書
 日記をさぼってしまっています。ごめんなさい。
 この日記がさぼるときってのは、書くことがなかったのではなくて、書くことはあるんだけど、どう書いていいのかわかんなくて、困っている間に時間がたってしまうことが多い。個人の日記なんだから(一応)、なんでも書いちゃえばいいんだけど、最近は日記に書いたことで大騒ぎになることも多いんで(しょこたんとか)、意気地なしには悩みどころです。
 今回の、書くべきことは、MFJ公認大会においての公認車両問題です。


 公認車両問題については、自然山通信の掲示板で、ずいぶん活発に議論されてました。大騒ぎと見る人もいるけど、多少感情的な意見もあれど、どれも理解できる意見だし、内容もなるほどと思えることが多い。いろんな意見が並んでいて、これが今のトライアルライダーが思っている実情が並んでいるんだと思うと、意義があると思います。
 公認車両については、自然山通信2月号でちょっとだけ触れました。3月号では、現段階での現在までの公認車両のリストを掲載しました。自然山WEBでも掲載しようかと思ったけど、同時期にMFJのサイトに同じリストが掲載されたので、今は用済みになってます。従来は一覧されているものがなくて、規則書のリストに機関誌で発表された追加の車両を加えて管理していないといけなかったから、一覧表ができて、便利になった(もともとこれで当然だとは思うけど)。
 で、公認車両とはなにか。MFJというくくりのもと、チャンピオンを争うなどの選手権に参加するには、マシンや装具のいくつかは、MFJの公認をとっている必要がある。トライアルではマシンとヘルメット。以前はタイヤも公認制度があったらしいです。ロードレースでは、レーシングスーツも公認制度がある。公認制度はなんのためにあるのか、ヘルメットやレーシングスーツは安全性の確保のためだと考えるのが納得しやすい。されど実際には、規則にのっとった構造などをしているかどうかを検査して公認しているわけで、もともとは安全のために作られた規則といっても、運用的には安全を保障するものではない。現実的には、参加者が公平となるように、みんなが同じ規格のものを使って競技をしましょうという主旨となっている。ついでにいえば、公認をするには公認申請料が必要で、それがMFJの収入になる。今回の問題で「MFJの金もうけ」というニュアンスの意見もあると思うんだけど、MFJの収入はライセンス発給代と公認代がほとんどなのだから、それはお気の毒だと思う。ガソリン税でマッサージ機を買っちゃうお役所よりは、MFJはフェアにやってらっしゃる。
 今回の問題は、公認車両であるかをちゃんとチェックして、公認大会に参加するにはちゃんと公認車両を使っていただこうという、これまでも守られていたはずの規則を、あらためて徹底しましょうという申し合わせをしたところ、大騒動になってしまったわけだ。公認車両という規則があることは知っていたけど、どれが公認車両なのかがはっきりしなかったり、あるいはそういう制度を知らずに大会に出ていた人にとって「聞いてねーよ」ということになるんだろう(もちろん原理原則でいえば、規則書が配布されているのだから、見ない方がいけないんだけど)。もしかしたら、ほんとは公認をとっていないマシンなのに、なんとなく出場できてしまっていたケースもあるかもしれない。これまでOKだからといって、規則に反していることはやめようというのは、理屈の上では、当然だ。
 しかし、規則が変わらなくて、これまで参加できていたマシンが、今年から参加できないと言われたら、やっぱりびっくりする。誰かがいじわるをしている気がするかもしれない。参加したい人を締め出してなにがおもしろいのかと思うかもしれない。でも、トライアルにはいじめっ子はいない。今回、参加できなくなった悲劇の対象は、最初に出した公認が切れてしまう、ちょっと昔のマシンたちだ。全日本選手権では、5年も前のマシンは、ほとんど見かけなくなっている。新しいもののほうが性能は優秀だし、仮に性能が一緒でも、古ければいろんなところが疲労していて、いいことはない。だからみんななるべく新しいマシンを使っている。ところが全日本選手権を走る国際A級、国際B級の面々は、公認車両にしばられることはない。彼らは競技規則さえ満たせば、自作のマシンでも参加ができる。
 一方、ちょっと古いマシンが登場するケースの多い地方選手権や県大会などに参加する国内A級や国内B級には、公認制度がばっちり働く。昇格ポイントのつかない承認大会の場合は、公認非公認を問わずに参加できることが多い。だから今回の問題は、地方選手権や県大会に参加する国内A級と国内B級に限っての問題ということになる。大騒動になっているということは、それだけこの層が厚いということで、逆説的にいえば、悪い話でもないのかもしれない。
 規則は守りましょう。もしも、規則が実情に即していないなら、規則を変える必要はあるかもしれない。でも、少し古いマシンが出場できなくなったからといって、公認制度全体がおかしいのかどうかは、微妙なところだ。それに、公認制度はロードレースもモトクロスも、モタードもスノーモービルも、あらゆるMFJカテゴリーに共通する制度だ(トライアルマシンがスノーモービルのレースに出られるという意味ではない)。仮にトライアルでは公認制度が不要だとしても、モータースポーツ全体で公認制度が不要とならなければ、公認制度は残される。技術委員会では、トライアルだけが公認制度について特別処置をとることは適切ではないという結論が出されている。つまり、公認制度を廃止するという選択肢はないように思える。ちなみに規則を作るのはMFJではなく各委員会となる。MFJは、規則を運用するいわば“行政機関”だ。
 公認には、公認申請料がいる。インポーターとしたら、新車を公認申請をするのは納得できても、大昔に販売を完了したマシンに費用が発生するのは、なかなかつらいところ。それでなくても、昨今のユーロ高は輸入業者を思いきり痛めつけているのだ。
 新型車についても、一筋縄ではいかない。現実には、公認車両であるかどうかはフレーム番号で識別するしかないのだが(排気量やボア×ストロークは年式が変わっても共通のマシンが多いと言う前提でのことだが)、輸入マシンの中には、同じ形式で公認をとり続けているものもあるようだ。一方、毎年公認をとっているものもある。この両者には、けっこう大きな負担の差が出てしまう。
 こういったもろもろは、一部の人は知っていたのかもしれないけれど、みんながみんな熟知していたわけではない。えらそうなことを書いているけど、ぼくはなんにも知らなかった。今回のことで公認について規則書を見たら、ダンロップのD803が公認となっていて、ミシュランやIRCは公認リストに載っていなかった。となると、ミシュランで走っている選手は公認違反で失格になっちゃうのかと思ったが、トライアルではタイヤの公認制度がなくなって、最後に公認したダンロップだけがリストに載っているということのようだ。いろんなことが、解説してもらわないと、わからない。
 競技会に出るのだから、規則書は熟読しなさいというのはよく言われるし、当然のことだ。ただ、いっしょうけんめい理解しようとしてもわかりにくいとしたら、わかりやすくなるように変化が見えるといいなと思う。MFJというところは、よくも悪くもモータースポーツのお役所的なところで、他のお役所を見てもわかるとおり、わかりやすくない。そして知らない方が損をするというシステムになっている。国民年金も、そういうシステムだった。
 ユーザーの側にも、わかりにくいからといって、ちゃんと知ろうとしなかったという側面がある。今回、お気の毒に用意したマシンで選手権に参加できなくなった人も少なからずいるんだろうと思うけど、そんな人たちを救済するのは簡単ではないかもしれない。できたら救済してあげたいけど、百歩譲って救済できなかったとしても、MFJのいろんなことに対して、こんなことを機にしてでも理解と考える機会が増えるとしたら、せめてそれはそれでよい結果になると思うのだった。

*写真は例によって本件とはまったく関係なくて、イタリアのマリオ・カンデローネの奥さんであるアニエーゼが、日本語検定に合格して、その合格証書のコピーを送ってきた。イタリア人が日本語を勉強するというのはとてもたいへんだと思うのだけど、彼女はがんばったのだ。ぼくも、古くなったワープロをプレゼントして、これで日本語の発音と漢字についてお勉強しなさいとご指導したものだったけど、それが役に立ったのかよけいなお世話だったのかはよくわからない。マリオは日本に来たとき、そこここの日本女性に目を輝かせて「おれは絶対に日本人妻をめとるのだ」といっていたから、この証書を送ってきたときの返事に「よかったなぁ。これできみはJapanese wifeを手に入れた」と書いてやった。わはは。