雪は降ったって春は春。シーズンは開幕してます。えいえいおー

心神喪失

sankei0803
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ある日の産経新聞の記事(ただしWEB)を読んで、つらつら考えてみる。

人を殺した人が“殺害時”に心身衰弱で、“死体損壊時”は心神喪失だったという鑑定が出たって話だ。科学的な事実はどうなのかわかんないけど、殺人を平常心でやる人なんているのかね。仮に、思わずかっとなって人をあやめてしまったとして、そのあと平常心で黙々とお片づけができる人なんているだろうか。どちらも平常心とはほど遠い気がする。そういう人のほうが、人としてふつうだと思う。なので、ふつうの人は、精神鑑定で「人を殺したときだけおかしな人になっていたから、殺人と死体損壊に対しての責任能力はない」と判断してもらえるってことになる。これなら、人を殺すのが怖くない。おっかない世の中だなぁ。
引用元をURLで示しておこうと思ったけど、WEBのニュースは消えてなくなっていることが多いので、プリントアウトをPDFにしておきました。こういうのは無断転載になるんだろうか、よくわかんないけど。


さてこの日記は、トライアル情報誌の自然山通信の名の元に書いてるから、一応トライアルに即してこのニュースを考えてみる。今トライアルでは(特に全日本とかでは)参加選手のマナーの問題が問われている。セクションをライダーやマインダーが加工してしまう悪さ、見えないところで燃料補給をしていたり、メカニック以外の人がマシン整備の手伝いをしているんじゃないかという疑惑、5点といわれて頭に血が上って執拗な抗議をするなどなど。
人を殺すのが「そのときだけ自分を失っていたから責任能力がない」のだったら、こういうのだって責任能力があるかどうか、疑わしい。「勝ちたい、クリーンしたいと思って、難所の地面を見ていたら、無意識に斜面を足で崩していた」「ライダーを勝たせたいという一心で、気がついたら大岩の前にきっかけ石を運んでいた」。くだらねーこと言うなと笑われてしまうだろうけど、日本の裁判所で同様の鑑定が殺人事件に影響を与えようとしているんだから、トライアルもそれにしたがった方がいいんじゃねぇか? もちろん逆説的なお話ですけどね、念のため。
 最近は、セクション加工を防止するため、マインダー(マインダーとは広義の意味と解釈してます。試合のときはマインダーはメカニックという名称でライダーについて参加している)のセクション立ち入りは一律禁止となった。あぶないところでお助けをするときだけ、オブザーバーに許可を求めて立ち入りができる。規則は規則だから、トップライダーのマインダーは、そうとなればそれに従う。これまでマナーがなってないと言われちゃってけど、ルールは守る。競技だから。
 ところがトップライダーでない、全日本のような大きな大会への参加に慣れてないライダーのお父さんたちの中には、ルールが守れない人たちもいる。第一セクションで目撃したことだから、その人もセクションをこなしていくうちにマインダーの心得を学習したかもしれないけど、息子のトライアルが心配で、テープの外でおとなしくしているなんてできない。マインダーのセクション立ち入りを禁止した規則は、きっとそもそもはセクションの加工(破壊と示されることが多いけど)の防止だったにせよ、今となっては立ち入りそのものが禁止行為だ。お父さん(お父さんかどうか、実はよくわからない。目撃したことだけど、ここでは一般論としてお父さんで話を進めます)はセクションに入って、ラインに悩む息子の相談相手になっているだけだから、いわゆる加工や破壊行為はしていない。でもだめはだめだ。
なぜお父さんはそんなことをしてしまうのかというと「全日本では(本当はトライアルでは、なのだけど)セクションにマインダーが立ち入ったらいけないんだよ」と教えてもらわなかったのかもしれない。全日本のそういうルールに不慣れなのかもしれない。でもその時のお父さんときたら、息子を思う気持ちがめいっぱいで、テープの存在に気がつかず、オブザーバーの「メカニックは外に出て」の指示も聞こえず、何度怒られても息子の元に駆け寄ってしまったのではないかと思う。まぁ、心神喪失、みたいなもんではないかと。
件のお父さんに責任能力がなかったかどうかは、この文脈で言うと裁判所の判断になるんだと思うけど、日本には古来からしつけという美しい風習がある。何度もオブザーバーに注意を受けるお父さんには、ばっさりイエローカードをつきだして5点を与えるべきじゃないかなと、ぼくはその時思った。
申しわけない。ぼくは常々、オブザーバーは取り締まり官ではなく、選手のパフォーマンスを見守る立会人なのだから、おいこらお巡りみたいになってはいけないと思っていた。だからイエローカードなんて制度は、トライアルにはなじまないのではないかなぁと思っていた。
実は今もそう思っている。思っているけど、イエローカードの存在が、オブザーバーが「イエローカードを出すよ」と選手をおどかす材料になるのだとしたら、反則があったときに有無を言わさずイエローカードを行使することで、お父さんにも薬になるし、ルールの理解も早いんじゃないか。たぶんお父さんの大事な息子さんは、ここで5点をもらってももらわなくても、まだ優勝するとかポイントを獲得するとかという段階にはいないから、勉強するなら早いうちがいい。早いうちに学習をしないで、優勝戦線に加わった頃にイエローカードをもらうと、痛手も大きい。
「このやろー、ぶっころしてやろうか」と思ってしまうことが、万一あったとして、そんなときに心神耗弱になってしまうような人ってのは、仮に責任能力がなかったとしても、二度と人前に姿を現さないでほしい。そんな人が町中をうろうろしてると思うと、おっかなくて歩いていられないからね。

(トップライダーのマインダーは、経験豊富だから、気が動転するなんてことは、まずない。彼らもときにイエローカードぎりぎりに思えることをやったりするけど、それはオブザーバーの裁量とルールを見切っているからできることだ。このアンパイアは外角低めが甘いなと思ったピッチャーが、そこに放り込んでストライクをとりにいくみたいなもんだ。人のいいオブザーバーはつけこまれることになりかねないけど、観戦していて気持ちがいいのは、にこやかながらてきぱきとした採点をしてくれるオブザーバーのいるセクションで、なんだか気がめいってくるのは、オイコラ型のオブザーバーのいるセクションだ。これは日本に限らず、世界中のセクションで共通する感想です)