雪は降ったって春は春。シーズンは開幕してます。えいえいおー

中古がほしいとき

0911刈り取り前の稲
 ガスガスに、カデットという機種がデビューしました。09年初頭にカタログに載って、ようやく先月あたりに日本でお披露目が始まった。
 というお話はトライアル事始マシンのご案内ページをご覧ください。
 個人的にはとてもお気に入り(ぼくが乗るという前提でなくて、世の中にどういうマシンが必要なのかを考えると、これがひとつの解答かなぁと思うという点において)なのだけど、このマシンに限らず、新車が売れていないんだそうだ。みんな、トライアルに興味がなくなったのかと思いきや、中古車は右から左で売れていくらしい。新車だけが売れていないんだそうだ。うーむ。
 写真は、関係あるようなないような、収穫を待つ、今年の“新米”たち。


 新車が売れないというのは、要するに景気が悪いということなんだと思う。最近は少し持ちなおしたけど、円安で相対的にお値段が上がったのもつらいところ。未曾有の経済不況ってのはまだ続いているんだろうから、これはしかたない。
 どんぶりでいうと、新車価格は80万円(もちろん、前後いろんな価格のマシンがある)。対して中古車は20万円から50万円ほど。程度と年式によりけりだから、これも一概には言えないけど、20万円というのは底値で、これ以上安いのは安い安いと喜んでいると、まともに走れなかったり修理代がかかったりして、悲しい思いをすることが多い。あるいは、こんなものだと思って乗っていても、実はとっても調子が悪かったりして、マシンがちゃんと動けば1ヶ月で習得する技術が、3年かかってもまだできないということにもなりかねない。値段の高いものを買えとはいわないけれど、ちゃんと動くものを選ばないと意味がなくて、ちゃんと動くかどうかってのは、見る目がないと(オートバイに詳しい人でも、トライアルマシンについては当てにならないこともあるからむずかしい)判断がむずかしい。中古を買う場合は、30万円以上、できれば35万円以上のものにしておくのが安心。
 いやいや、ここで中古車の買い方を語りたかったのではなくて、要するに新車と中古車では、ざっと倍のお値段の差がある。この価格差だと、中古でいいかなと思ってしまうのも、しかたがない。
 最近中古車を求めるお客さんは、長くトライアルをやっている人より、新しくトライアルを始める人が多いそうだ。これはたいへんにうれしい。なんせ新規参入ですからね。少子化に悩む日本政府に先んじて、トライアルは新規参入者獲得に成功したってわけです。
 で、新しくトライアルを始める人は、トライアルがどんなものだかわかんないし、とりあえず適当なお値段のマシンを入手したいと考える。100万円近いマシンは、やはりそれなりに満足感と乗り心地と上達を与えてくれるのだけど、30万円で試しにトライアル体験してみたいと考えるようだ。たぶん、ぼくだってそう考えると思う。
 でもね、新車が(仮に1台も売れないとして、中古市場に出てくのはどういうマシンなんだろう。10年前のマシンを手放して、5年前の中古車を買って10年前のマシンを放出するということもあるかもしれない。しかしたいていの場合、ある程度良好の程度の中古車を出してくれるのは、その年に新車を買ったお客さんだった。それが、いまはないってわけだ。
 お店はお店で、新車が売れるとうれしいかというと、実はけっこう大変でもある。新車を仕入れるのには、お金がいる(ご時世だから、支払いを待ってくれるようなインポーターは多くない)。新車を買ってくれたお客さんが中古車を下取りに持ってくる。すると下取り分はお店からお支払いする必要がある。お店には新車の売り上げから下取りマシンのお値段が差し引かれた現金が残るはず。デモ実際には、新車を仕入れるのにお金を払っているから、お店には差し引きのマージンがいくばくか残るんだけど、それより大きな金額が下取り代としてお客さんに返っていく。下取りをして新車を売ると、短期的には赤字になる。新車がたくさん売れると、この赤字に耐えれなければいけないというのが、お店のつらいところ。最終的に利益を得るのは、中古マシンをきちんと売ったときってわけだ。
 トライアルショップの悲哀を語りたかったんじゃないんだけど、ついそうなっちゃった。言いたかったのは、新車を売るのも、それなりに苦労があるってことだ。それでも新車が売れないと困っちゃうのは、マシンが回転しないということだ。これから始める人のためにも、新車が売れてくれないと困るのである。
 これは特に、子ども用のトライアルバイクに顕著だ。もう10年近く前になるけど、小娘にガスガスのボーイが欲しいとおねだりされて、すいません、ぼくは新車を買いませんでした。もちろん新車が買えなかったからでもあるんだけど、新車を買うのが、なんとなくもったいない気がしていたんだよね。思えば、あの時ボーイが欲しい子どもたちの親が(もちろんぼくを含めて)みんなが新車を買っていれば、今ごろボーイの中古車が日本中にけっこう流通していて、トライアルを始めたい子どもも飛びつきやすくなっていたはずだ。残念。
 カデットも同様。ボーイが登場したときより、今の方が状況ははるかに悪いから、カデットに(少し)興味を持っても、よっしゃ、買ったろうという太っ腹の方はなかなかいない。こんないいマシンがあるのに、新車が売れないと、日本にしっかり定着しないで消えていってしまう心配がある。
 子ども用だけじゃない。125ccもおんなじだ。125ccは入門者、女の人には最適の排気量だけど、これがまたタマがない。なぜタマがないかというと、やっぱり新車が売れないからだ。
 中古車を欲しがっている人は、全体的な数を数えれば、実はそんなに多くないのかもしれない。でもしかし、トライアルを始めたい人がいて、トライアルを始めてほしいぼくらみたいなトライアル側の人間がいて、それでもことがうまくまとまらないというのはなんということだ。
 いい男といい女がいて、両方とも結婚適齢期なのに、ちっとも話がまとまらなくて悩んでいる結婚相談所のおばさんになったみたいな気分。男がテレビゲームおたくで、女がホストに狂ってるとでもいうんだったらわかるけど、両方ともお互いを求めてるのに、それでも結婚には至らず。
 本日はトライアルを代表して、愚痴を言ってみました。おれんところはそんなに捨てたもんじゃないぞという明るい話がございましたら、ぜひご連絡ください。ぼくも少し安心したいです。