雪は降ったって春は春。シーズンは開幕してます。えいえいおー

川内校の閉校式

2011年川内校閉校式

 川内の、高校が閉校になった。閉校になったのは2011年3月1日だった。
 かつては村立の高校として存在したこともあった学校は、最後は県立の富岡高校の川内校として存在していた。びしゃびしゃの雪が降る中、この学校はその歴史に幕を下ろしたのだけど、その10日後、地震が起きて、学校だったところは、いきなり避難所となった。


 川内校が閉校になるのは、県の指針に照らし合わせてのことだから、しかたがなかったことだと思う。3年続けて入学者数が募集人員の半分に満たないと、県立高校は存続できないらしい。県の教育委員会の方針がそうなのだから、どうしようもない。3年に1度、なんとしても入学者数を増やせていれば、存続の道もあったのかもしれないけど、そんなことは現実的ではないのだった。
 閉校式を見せてもらいながら、ぼくが思ったのは、参加者の少ないトライアル大会のことだった。ちょうどこの翌々日、バイクトライアル連盟の平野博さんが村にやってきた。平野さんがここ数年取り組んでいるのが、誰でも参加できるバイクトライアルイベント、カメオカカップだ。ふつうのマウンテンバイクでも参加できるし、特にバイクトライアルテクニックがなくても参加できるし、レンタルのトライアルバイクも用意されているというイベントで、そろそろ100人の参加者を集めようかというビッグイベントになりつつある。
 このカメオカカップも、最初の大会は13人だった。イベントの最初というのは、集まりが悪いものなのだ。
 スポーツランドSUGOの藤原さんとお話しをしたときも、同じような話になった。ある程度の熟練者を対象としたイベントは、わりと参加者が集まりやすい。でも、初心者対象のイベントは、だいたい集まりが悪い。藤原さんの思い出では、初心者のためのモトクロスイベントを始めたときには、スタッフ10名で待ちかまえていて、参加者がたった7名だったこともあったという。藤原さんがそのとき語ってくれたのは、そこで中止にするのは簡単、がまんして、そこで続けていかなければ、未来はない、ということだった。
 我慢しない方法はいくつかある。もちろん中止にするのもひとつの手段だし、初心者対象の枠を広げて、上級者を対象に加えてしまってもいい。上級者(というか、初級者でもイベントに参加するのがすっかり日常になっている常連者たち)は、イベントに参加したくてうずうずしているから、対象を広げると、イベントとしては成立しやすい。でも、常連者は知らず知らずのうちに常連者のカラーを作っていくもので、まるきり初級者は、そういう世界に飛び込みにくくなるケースが多い。初級者は初級者でまとめてあげるのが、安心してもらえるのだと思うのだけど、主催者が、そこをがまんするのはなかなか至難だ。
 こういうことは、ぼくらが相模川でクリーンアップトライアルを始めたときにも、まったく同じ経験をした。5人、6人のスタッフで待ちかまえていて、来てくれたのは5人ということがあった。ここ数年は、今日は少ないなぁといって30人くらいの参加者はいるから、隔世の感があるのだけど、そのときに初心者専門の大会というコンセプトを崩さなかったのが、自分で自分をほめてあげたいと思うところだ。クラス分けをして、もうちょっと腕に覚えのある人も参加できるようにしたほうがいいんじゃないかという葛藤は、ずいぶんあったのだった。
 いずれにしても、ぼくらはこういう吹けば飛ぶようなイベントを主催してきたけれど、自分から飛ばしてしまっては元も子もないということをよく知っている。なんとか踏ん張って、初心者のためのイベントを維持したいと思っている。
 ここでまた高校のお話。川内の高校に限らず、小学校も中学校も、子どもが少ないということで、どんどん廃校になっていく。子どもが少ないんだから廃校にするのは、当然の処置なんだろうと思う。でも、もしもそれがトライアル大会だったら、オフロード大会だったらどうするだろう。オートバイのイベントと教育機関とはまるで舞台がちがうから、そんなものをいっしょくたに考えるのは正しくないのは百もご承知なんだけど、人がいないからといって学校や店や郵便局や役場を閉めていったら、そこが復興することも、ましてや発展することなど、まず絶対にないだろうなぁと思うのだった。
 書こうと思っているうちに、地震が起きてタイミングを逸してしまったのだけど、もしかするとこの先、地震と原発事故によって離散した家庭によって、子どものいない地域はますます増えてくると思う。これらがすべて杓子定規に閉校になっていったら、未来はどこで学べばいいのだろうと、ちょっと悲しくなったのでありました。