雪は降ったって春は春。シーズンは開幕してます。えいえいおー

納得いかないことなどなど

仮設住宅

仮設住宅の群れ。どこに誰が住んでいるのか、さっぱりわからない。本文とは関係ないですけど

 義憤に燃える、なんて言うとかっこいいですね。ただ愚痴をいっているだけかもしれないし、ぼくのわがままなのかもしれません。でも、言ってもしょうがないことから言ったほうがいいと思われること、その他もろもろ、いろんなことがありました。とりあえず、書き留めておこうと思います。


 まず電話代。国や自治体に「逃げろー」と言われてとるものをとらずに家を出てきた人たち。そんな人たちを代表して、なんて思いながら、NTTに電話してみたのは、電話の通じない村から出て、間もなくのことだった。
 電話が通じなくなったのもあって避難が決まったのだから、電話はてんで使っていない状況なんだけど、こういうときの電話代はどうなるのかな?
 そしたら、わかんないというんですね。じゃ、わかったら電話をくれますか? とお願いしたら、電話は保留になっちゃった。ひとつひとつ上司にお伺いたてないと進められない会社なのか、よほど権限のない人が電話をとっているのか。
 しばしの保留のあと、そういうことはひとりひとりにはお答えできないので、請求書にてお知らせしますという返事だった。今じゃ、郵便は復活してるけど、その頃は浜通りの郵便なんて、ひとつも機能していなかった。郵便本局が津波の被害にあっていたりしたからね。しかも、避難している人は、避難してるんだから、自分ちの郵便ポストまでいけないじゃないですか。そういう現状はご理解いただいて請求書で、とお答えですか? そんな状況で、個人にはお知らせできないというのはどういうことなのかなと聞いてみる。また保留になった。
 再度電話に出たおねーさん「わたくしがホームページなどでお知らせするという約束をするわけにはいきませんので……」のような返事をしなさる。あなたに約束しろとはいってない。NTTさんにお願いしているのだ。それに、ぼくはまだいいのだ。こうやって電話もできるし、ホームページも閲覧できるからね。避難所にいるお年よりのことを考えてみてくださいよ。彼らはホームページなんてさっぱりわからず、携帯電話だって持ってない、第一、避難所では電話するのだってたいへんなんだよ。そういう状況でぎりぎり生活している人に、置いてきた電話代の心配をさせたくないから、聞いている。どうして「まだ詳細決まってないけど、被災地のみなさんの悪いようにはしないように検討してるから」くらい、言えないんでしょうか。
 国民年金を払ったんだ。毎年4月には、一括で払うと安くなるよという通知が来る。それで4月ごろ、なけなしの金で払ったんだね。いくばくかの義援金もらってたんで、それで気が大きくなっていたというのもあるのかもしれない。
 そしたらそれから1ヶ月くらいして、被災者は年金免除、なんてニュースがあった。国民年金って、自分がその年になってもらえるかどうかわかんないというのに、毎月15,000円くらいになるんだ。1年で18万円ですね。でかい。
 免除になるというのは、実はからくりがあって、払わなかった分は将来の給付金から差し引かれるのだという。だからもらう気でいるなら、払っておいたほうがいいぞというのが、オカミに従順な村のひとの大勢の意見だった。でも、払わなくていいというのなら、それでもお金は惜しいと思ったのね。それで、返してもらえますかねと電話した。
 口座引き落としの場合は、お返しします、ということだった。だけどこちとら、コンビニから払っちゃったのよ。そしたら、その場合は返せないというんだね。年金なんて、世の中の不公平を最後の最後に帳尻合わせるためのシステムじゃないの。その公平システムが、口座振替とコンビニでこんなに条件がちがって、どうするっていうのよ。
 ともかく、今はそういうことになってますんで、ということで、それ以上は話が進展しなかった。「なんだかんだいって、お金があったから払ったんでしょ?」なんて本心が見え隠れしてきそうな感じ。それならそれでいいさ。でもだったら、口座振替なら返金するはないだろう。
 前に、一時帰宅のお話を書いた。そのとき、お国は一時帰宅する人に誓約書を書かせた。「私の責任で一時帰宅します。なにがあっても私の責任です」みたいな誓約書だ。
 20km圏内が立ち入り禁止になったのは4月20日だった。それ以前は、立ち入り制限というか、検問を通過しないといけないシステムだった。それでも、ずいぶんたくさんのひとが検問を通過して、自分の家に帰っていっていた。実はぼくも、修理屋さんに預けてあったクルマを持って出てきた。
 でもそれは「やってはいけません」ということをやってしまう行為である。罰則規定はないんだけど、入るなといわれているところから入るのは、抵抗がある人は多かった。オカミがちゃんと道筋を作ってくれて、その上で自分の家に帰りたいと思う人も少なくなかったのだ。ぼくは帰りたい人は勝手に帰ればいいじゃないかと思っていたけど、ぼくのように考えない、従順でまじめな人々にとっては、20km以内がいっさい立ち入り禁止になって、そのかわり一時帰宅などが認められるようになったというのは、進展だった。
 でもそこで、家への立ち入りは自己責任です、なんて言われちゃった。それなら、勝手に入った人となんにも変わんないではないか。
 幸か不幸か、最初の頃の一時帰宅にはマスコミが山のようにやってきていて、この誓約書の件もちゃんと報道された。それでこのあと、誓約書は書かなくてよくなったとのことだ。どうして最初からそうならなかったのか、不思議。

広域消防

双葉郡地域は津波と原発で壊滅状態なので、広域消防は機能しているほんの数ヶ所の消防署に集結。我が村に、見たことがない数の消防車と救急車が並んでいる。本文とは関係ないです

 今、うちの村はゴミの集配がない。行政区分的には川内村は双葉郡に属している。電話局も郵便局もゴミもなにも、双葉郡の拠点は浜にある。その浜が、津波と原発事故でけちょんけちょんだ。電気、電話、郵便とちょっとずつ復旧して、最後にゴミが残っている。ごみ屋さんはまだこない。
 それで、隣町にでかけていって、ゴミ袋を買って、それで出すようにした。といっても、ゴミ捨て場というのは地域のひとのしきたりとかなわばりがあって、勝手に出すとよからぬことが起きるかもしれないんで、まとめて焼却場に持っていったんだ。そこなら、地域のひとの気分を害することもない。
 何度かゴミを出しているうちに、だんだんへんてこなことになってきた。そのうち住所を聞かれて、隣の村ですといったら、そのゴミを受け付けられないときたもんだ。いかにゴミ袋を買っていたといっても、ゴミ袋代がゴミの処理費用の全額ではない。ゴミの処理には住民の税金が使われているから、住民以外のゴミを処理するわけにはいかないんだというような理屈。
 じゃ、あたしゃどうしたらいいのさというと、それは村役場に聞いてみてくださいとね。まぁ、それはそうなんだろう。でもさ、おれたち富岡の人たちが逃げてきたとき、同じ双葉郡の人だから助けたんじゃない。この隣町だって、いまだに避難所があって、被災者を受け入れてるじゃないか。
 役場に聞いたら、ゴミは役場職員がいつもより頻度はうんと落ちるけど回っているから、いつも通り出しておいてくれということだった。ゴミを処理する先は決まっていないから、とりあえずどこかに集めてあるらしい。
 買ったゴミ袋どうしてくれるんだよとちょっとだけクダをまいてしまったけど、ゴミ袋代の問題ではなくて、つくづく行政機関というところはひとに冷たいところだなぁと思うのであった。
 被災地と被災者向けに、高速道路が無料になった。これ、ぼくはてんで評価していないのだけど、それはそれとして、金を払わなくていいというなら、払いたくはない。無料で高速道路に乗るには、被災証明なりの書類と免許が必要だという。ただし双葉郡に住所がある人は、免許証だけ見せれば被災証明の提出は必要ないということになっていた。
 それでとある有料道路に乗ってみた。この道路はNEXCOの高速道路ではないので、ひょっとしてただじゃないのかなと思いながら、料金所のおっさんに聞いてみた。この道はただで通れるのかなと聞いてみると、被災証明を見せろと言う。被災証明はいらないんじゃないのというと、いや、必要なんだと譲らない。まぁいいや、NEXCOの高速道路は免許だけでただになるんだけど、ここはちがうんだねと念を押して、お金払って料金所を通った。300円。たいした金額じゃないですからね。
 前に、被災証明なしで料金所を通ろうとして、しばし問答したことがあった。それは栃木だか茨城だかの料金所で、そこの料金所のおねえさんは免許だけ見せた人をただで通すなんてことをしてなかったのかもしれない。でもNEXCOの案内にそう書いてあったよというと、さっと青くなって横の書類を見て、ごめんなさい、そのとおりでしたと通してくれた。知らなかったのは、しょうがない。ありがとうと、お金払わずに、通させてもらった。しかしぼくに300円払わせたのは、福島県内の道路だから、双葉郡を知らないってのも、あんまりだ。
 一応、県の所轄の事務所に電話してみた。NEXCOは無料になるけど、県の道路は無料じゃないんですか?って。そしたら、徹底しているつもりなんだけど、まだ徹底しきれていなかった。ごめんなさい。ちなみに、何日の何時ですか?と聞かれてしまった。おうへいなあのおっさんが怒られるのは本意ではないけど、きちんとお伝えしておきました。
 電話の相手はていねいに応対してくれたけど、300円返すとはいってくれなかった。
 300円返すといえば、最後に申し訳ないお話を。
 地震の後、トーストを食べたんだ。そしたらカリッと歯に当たる感触。黄色い瀬戸物のようなものが入っていた。一応、パン屋さんに電話してみる。そしたらパン屋さんの営業さんが、その日のうちにお菓子持ってやってきて、パンの代金といっしょに置いてった。代わりに、ぼくの口の中から出てきた黄色い物体を持って帰って調べるということだった。
 それから数日、きゅうりを食っていたら、またカリッと歯に当たる感触。ありゃ? そのきゅうり、トースターであっためたわけではないけど、たまたまその日しばらくトースターの中に入っていた。置き場所がなくて、トースターに避難してたんだね。トースターの中をのぞいたら、トースターの熱源がひとつ割れていた。あちゃー、犯人はこれだ。そういえばトースターは、地震の時に棚から落っこちたのだ。
 パン屋さんには、すぐさまひらあやまりで電話した。パン代とお菓子を返せとは言われなかった。ほんとうにもうしわけございませんでした。以来、パンを買うときは、そこのパンしか買わなくなりました。考えてみれば、パンは商売敵がいるけど、NTTと東京電力には商売敵がいないのだった。うーむ。