雪は降ったって春は春。シーズンは開幕してます。えいえいおー

ムラの選挙

お祝い用の紅白モチ

今日は、村議会議員の選挙投票日。人口3,000人弱有権者が2,500人くらいと聞きました。震災の後、原発から離れて避難して、住民票も移してしまった人も少なくないので、いよいよ有権者は少ない。

定数10人。今回は13人が立候補しました。現役8人。新人5人。いつもの選挙とまったくちがう選挙なので、みんなたいへんです。でも、選挙もいいものだなぁというのが、投票日のたった今の感想です。

ムラの選挙は、いろいろたいへんだと聞いてました。いまだに実弾がとびかったりするのかなぁ、さすがにそんなことはなかんべえが、どんなことになるのやら、だいたい投票率が9割を超えているなんて、ずっと都会の選挙しかやったことがないイナカ素人には信じられない。

今年、3月以降の村は、人が少なくてとってもさびしい状態だった。村より、避難先のほうが放射線の値も高かったりするのに、なんでみんな逃げてるのかな、一説にはそのほうが補償をいっぱいもらえるからだとか、村に住んでると怒られるからだとか、いろんな諸説あり。でもまぁ事実として、村には人はいなかった。

人のいない地域というのは、これはさびしいもんだ。そりゃ、少子高齢化に過疎化が加わって、人は確実にいなくなっていく。この1〜2年、お葬式は年中行事みたいになってたし、地震の後はそれも少し加速しているような気がする(でもお葬式も地域ではやらないから、あんまり目立たなくなっている)。

そんな中で選挙でござる。村役場が郡山市に逃げているので、メインの投票所は郡山市になる。今まで、歩いていけるところに設置されていた投票所も、今回はない。人がいないから、それもしょうがない。選挙権はあっても、遠くまで逃げている人も多いから、郡山や村の投票所まで来られない人もいる。そういう人のために、不在者投票というシステムがある。

住所変更の手続きをしていると、選挙の案内は転居先に届く。そしたら役場に「おらはこっちで投票したいから不在者投票の手続きをお願い」と連絡する。すると投票用紙とかもろもろが届く。それ持って、地元の役場に出かけると、たったひとりのために臨時の投票所が開設される。投票した投票用紙は、そっちの役場が本来の投票先に郵送する。簡単といえば簡単だけど、問題は来るときと帰るとき、2回郵送されるってことだ。だからぐずぐずしていると時間切れになる。ぼくも1回だけ不在者投票したことがあるけど「郵便間に合わなかったら無効になっちゃいますけどあきらめてね」と言われちゃった。今回は、そんなこんなもあったので、いつもより選挙期間が3日だけ多かった。選挙期間は10日間。その間に不在者投票の手続きをして投票を済ませなければ、遠くに避難した村人は選挙の権利を失うことになる。

投票所だって、いつもの投票所とはちがって、仮設住宅の近所とかに設けられている。どこに投票に行ったらいいのかもよくわかんない。ぼくみたいな流れ者ならそういうのに慣れているけど、生まれたときから同じところで選挙をやっている人たちはさぞ戸惑うことだろう。

選挙たきだし中

誰もいないのに、議会なんか運営できるのかいな、という疑問もないわけではないけど、でも選挙はまんざら悪いものではなかった。選挙に出るとなると、親戚やら近所の人やら、いろんな仲間が手伝いに来る。炊き出しが始まる。にぎやかになる。

選挙だから、酒はない。酒が出ないから、どうしても酒を飲まないと生きていけない人は長居をしないでさっさと帰ったりする点が、いつもとちょっとちがう。酒がないから、まじめに村の将来の話になったりする。選挙だから、それが当然なのだけど。

いつもだったら、葬式だ、お祭りだと、こういう寄り合いの機会は多いのだけど、避難中の村人ゆえ、放っておいたらみんなが集まるチャンスがない。そんな村に選挙がやってきて、人と人のつながりが復活した。

「おれが役場に務めてた頃、投票箱を運ぶのは自転車だった。雪の日に投票所から役場まで自転車で投票箱運んでいて、ふと気がついたら、後ろに積んでいた投票箱がねーんだ。あわてて戻って、道端におっこってるのを見つけて開票所についたら、25分遅刻でみんなを待たせちゃったなぁ」

今ならえらいことですね。選挙の結果はともかく(いや、それが大事なんだけど)今日は久しぶりの人にいっぱい会えて、なんだかうれしい。