雪は降ったって春は春。シーズンは開幕してます。えいえいおー

そんちょー選挙

1204こいのぼり

4月半ばをすぎて、急に(少し)あたたかくなりました。実はこの冬、うちの水はすっかり凍っていました。水道管あたりが凍って破裂したりするのはよく聞くけれど、地中に埋めたホースの中で凍ってるのが判明して、手も足も出ないということになった。どうも今年はすっかり寒くて、マイナス20℃くらいになった日があったんですね。その日に水を出してればよかったんだけど、ちょうどおでかけしてしまった。それが敗因でした。水が出たのは、雪が溶けてからほぼ1ヶ月くらいたった4月の10日くらいでした。そして4月22日は、川内村村長選挙の日でした。

村長選挙の日、ぼくは全日本選手権の取材で奈良にいましたんで、期日前投票ってのをしました。ぼくより先に期日前投票に行った友人によると、投票用紙を渡されて鉛筆で名前を書く後ろに、立会人がずらりと並んでいるで、書いてる後ろ姿だけで誰に投票したか、わかるよね、って感想だった。わかるかもね。でも直接投票の現場にいなくたって、誰に投票したかは知れてしまうという話もある。ご近所の動向はけっこうなんでも知れてしまうお隣近所だから、誰に投票したのかも知られているのかもしれないけど、最近は、それもよきかな、という気がしています。都会と田舎では、セキュリティの考え方もちがうのだしね。

村の村長選挙は、4年前の前回は無投票で現職の再選が決まりました。現職というのは、テレビで全国的に有名になった遠藤雄幸さん。お父さんはその前の前の村長さんだったから、まぁ、ブッシュさんみたいなご家系です。

その村長が帰村宣言をして、役場が村に帰ってきて、日々どたばたしている村で村長選挙というのは、なかなか忙しそう。また無投票でもいいんじゃないかと思ったけど、村の行方はきちんと選挙で問うべきだと思う正義感の持ち主もいらっしゃった。すばらしい。対抗馬にはお二人が立ちました。

ひとりは、前に村議をやっていたご婦人。議会で懲罰委員会にかけられたりというのが有名な人だった。それ以前は、村の中では言っちゃ言えないようなことをじゃんじゃん発言して、気合いの入ったおばさんだなぁと思っていました。そういえば彼女とは、大熊のプラント4(安売りスーパー)でばったり出会ったことがあったなぁ。最近では、原子力発電所では作業員が何千人と死んでいて、それを東電や国はないしょにしているという話を公開して話題を呼んでいました。彼女は、川内村は全村西日本に避難するべき、というスローガンです。

もうひとりは、前回村議会議員選挙で初めて村の選挙に出て、獲得票45票で落選した人。村議会議員になれなくて村長になれるなんてことがあるのかと心配しちゃうけど、当の本人はどう思っているんだろう。でも大阪府知事をやめて大阪市長に立候補しなおした人もいたから、いろんな人生があるんだろう。この人は、ぼくの住んでいるところと、村の反対側にお住まいなのもあって、どんな人なのかさっぱりわからない。まわりの人に聞いても知らないという。選挙広報にも、経歴は書かれていなかったから、謎の人のまま選挙になった。

今の(というか選挙以前の)村長には、なかなか批判も多かった。帰村宣言なんて、なんて早まったことをしてくれたんだ、というのが多くの声。ぼくなんかは、役場が帰ってくるのは1年遅いと思ってるクチだけど、これも批判のひとつ。早くても遅くても批判を受けるんだから、村長もたいへんだけど、そういう役職でもある。

批判をしているだけの対立候補というのはパンチがない。そういう点で、ご婦人候補の西日本移転というのは、それなりのご意見ではあった。しかも彼女には、古い村の体質を一新する、原発20kmで放射能にさらされながら生活している子どもたちを救え、という正義があって、これを応援する人もけっこういたみたいだ。たいてい、選挙権のない、村の外の人たちだったけど。ちなみに有権者数は2481人だった。村の人口は3000人を切っているから、20歳未満がいかに少ないかということでもある。

現職村長は、なかなか一生懸命選挙活動をしていた。報道陣にも追いかけられるから、半端な活動はできなかったということもあるんじゃないかと思うけど、これはぼくの勘ぐり。議会の中でも反村長派は少なくないということだから、彼らが一致団結したら安泰ではないという危機感もあったのだと思う。

そんなだから、現職1433票、謎の人443票、ご婦人79票という選挙結果(投票率82.43%)は、おおむね当然の結果のように思える。謎の人が謎じゃなく、顔と政策をもっと表に出して活動していたら、もっと票は伸びたんではないかと思うし、謎の人が443票とるというのは、彼を応援する勢力はあったのだなと思う。ご婦人の79票については、正直びっくりした。結果について、村の既得権益は強かった、古い習慣を打ち破れなかった、川内村はもうダメだ、みたいな論評を(ごく一部で)見受けたりもするけど、そういうことを言っているのはご本人と、川内村に縁のない人ばかりじゃないかと思うのでありました。

誰かが当選したら、他の誰かの采配は見られないわけなんで、ほんとうのほんとうは誰が村長だったらいいのかはわからない。多数決で進むというのは、そういうことなんだと思うけど、ただ今回教えてもらったのは、有効得票数の1/10をとれないと没収になる供託金は、国庫に入るということだ。で、選挙に必要なお金は、村の予算から捻出されるという。一説によると、村長選挙に必要な費用(おのおのの選挙活動ではなく)は500万円だそうだ。村は500万円の支出でお国は50万円の収入。正義のために必要なお金だったのか無駄なお金だったのか、世の中のものさしは、むずかしい。

写真はもちろん、村長選挙なんてどこ吹く風、選挙戦の1週間後からあちこちで泳ぎ始めたこいのぼり。見ればわかりますね。でも子どもが激減したこの村のこいのぼりは、いろんな主張をしているように思います。