雪は降ったって春は春。シーズンは開幕してます。えいえいおー

夜ノ森の桜、2020年版

桜を見に行ってきました。お祭り関係は中止になっているけど、クルマを止めるところもあって、お散歩にはちょうどいいコースとなっていました。

2020夜ノ森の桜

桜は毎年咲くけれど、富岡町夜ノ森の桜通りは、毎年少しずつ表情を変えている。2020年の桜は、2020年にしか咲かない。わざわざ予定を立てて見に行かないにしても、今回はお客さんが来ていて(ちなみに県内からのお客さんでした)、焼き肉でもしよう、買い物に行こう、だったらついでに花見もしよう、ということになったのだった。

2020夜ノ森の桜通り

この通りは、常磐線に平行している通りで、原発事故の後、最初に開放された通り。この道をどんどん進んでいくと、門番が立っていて、ここから先は通行許可証が必要ですよ、と言われてしまう。夜ノ森駅は、その門の先にあったのだった。

今年は、夜ノ森駅に再び電車が来るようになって、初めての春だ。それに伴って、駅の周囲も入れるようになっている。常磐線を通すために無理やり規制解除してとんでもないとか、放射能こわい勢力(あるいはただ駄々をこねる人たち)からいろいろ言われちゃったりしたけど、こういう話にはいろいろ裏もある。ぼくはひとつも裏をとっていないけど、ここまでの流れとして、避難解除になると補償金が打ち切られるという不文律がある。避難もたいへんだが、元の家に住むのはもっとたいへんなことだってあるのだけど、お国は帰ればOKと考えている。そんなんだから、補償金をもらい続けるために、避難解除になってほしくない勢力というのも現れる。こういう、ねちねち補償金をせびる話を聞くと、なんだか残念だけど、その一方で、原発事故補償はいくらもらっても足りないくらいのものだという思いもある。原発は、建てれば天国(と宣伝される)、爆発したら事故の大小を問わず地獄が待っている。

2020夜ノ森駅前

その、これまで入れなかった夜ノ森駅前のお店がこれ。古い郵便ポストのある、ひっそりとした駅前の雑貨屋さんだった。駅前が開放されたといっても、お店には入れず、建物は今でもバリコードの向こう側にある。

夜ノ森駅周辺の規制が解除されたといっても、解除されたのは駅前の駐車場エリアと道路だけで、家々はあいかわらず立ち入れない(持ち主は許可をとってバリケードの向こう側に入ることができる)。かつて、夜ノ森駅は駅東側にのみ駅舎があったけれど、今、改札口は駅の東側と西側をつなぐ跨線橋の中央にある。改札口といっても、スイカの機械がぽつんと置かれているだけで、人もいないし、待合室もないのだけど、それはともかく、こういう構造だったら、夜ノ森駅東側の規制を解除しなくたって、西側から駅に入れるようになっていればそれでよかったんじゃないかという気もする。まぁ現実には、駐車場は東側にしかないし、桜を見物に行く人には東側から歩いていったほうがいいのだけど、駅の時刻表を見たら、あと3時間くらい来ないという便利さで、おそらく鉄道に乗って桜を見に来た人は一人もいなかったんじゃないかなぁ。

それでも、鉄道が通っているかどうかは地域のはずみ的には大きな差がある。百歩譲って夜ノ森駅の乗降客が一人もいなくたって、東京と仙台がきちんと鉄道でつながっているのは大事なことなんだと思う。

2020見られるようになった桜通り

規制が解除されて、今までのぞくこともできなかった、東西にのびる桜通りも見られるようになった。といってもバリケード越しに向こう側をのぞくだけだから、かつての夜ノ森を知らない人にとっては、そんなに感動的なシーンでもないと思う。

この通りには、牛の競り市場があった。うちの村の牛飼いのみんなは、年に何度か、ここに自分ちの牛を運んで、そこでつく値段に一喜一憂していたものだった。ここの競り場が使えなくなったので、牛は中通の本宮にある競り場に連れていくようになった。そういういろんな変化が、あの日以来あった。バリケード越しにこの桜を眺めている人たちの思いも、きっとそういういろんな思いがあったのだろうと思う。

東西にのびる桜通りと、早い段階で規制が解除されて通れるようになった南北の桜通りの交差点には、リフレ富岡という富岡町の健康増進センターがある。もちろん、あの日以来営業は止まったままだし、ここの前まで歩いてこれるようになったのは、今回の解除によってだった。

2020リフレ富岡の桜

ここにはプールも温泉もあって、何度かでかけてみたことがあるけれど、駐車場には今も当時から駐車し続けているクルマがあったりして、さびしい時間の経過を感じてしまったりした。

桜の向こう、車道を歩いている人の向こうのガードレールの向こうに、リフレ富岡があるのだけれど、なぜか玄関の自動ドアは20cmほど開いたままで、中に机などが積み重ねられてバリケードになっていた。なんで開いちゃってるのかわかんないけど、イノシシとか入らないのかなぁ。これ読んで、忍び込んでやろうなんて思わないでくださいね。

そういえば、桜通りにはときどき富岡警察のパトカーがやってきて、車道を歩くな、枝道に路上駐車するな、と声をかけていた。ブルーシートを敷いて酒盛りをしている人はいなかったけど、そういう人がいたら、やっぱり注意されるのかな? そういう風物詩かと思って帰ってきてしまったけど、よく考えたら、あのあたりの枝道は駐車禁止にはなっていなくて、あのクルマを止めるな、はいろんな秩序を守るには有効な案内だと思うけど、法的根拠はないんじゃないかという気がしてきた。

2020夜ノ森の鯛焼き屋さん

これは、夜ノ森 tom トム(ヨークベニマル)の駐車場にあったおいしい鯛焼き屋さんの現在。遠くへ避難した富岡住民にとっては、見たくない光景かもしれないけど、ご報告まで。

2020夜ノ森のスズラン

そして最後は、載せようかどうしようか悩んだけど、家を解体した敷地に咲いていたスズラン。おそらく、おうちの花壇で大事に育てていたものが、家を解体して、もしかするとご主人たちも転居していなくなってしまって、それでも毎年花をつけている、ということだと思う。

2020年の花見は、いろいろ、悲しい花見だった。夜ノ森の桜については、過去にもこんなことを書いています。よかったら、こちらもどうぞ。

花見(https://www.shizenyama.com/nishimaki/aboutkawauchi/2536)
夜ノ森にサクラサク(https://www.shizenyama.com/nishimaki/aboutkawauchi/487)

*スズランと書いてしまったけど、この花はスノーフレークであるとご指摘をいただきました。スズランはもうちょっとくるっと丸まっていてブルマみたいなんでしたね。前にもまちがえたことがある。どうもすいません。