雪は降ったって春は春。シーズンは開幕してます。えいえいおー

ニッポン人としてのチャンピオン

 PhotoTrial2004年版に「日本人が世界チャンピオンをとるということ」をテーマに、藤波貴久のチャンピオン獲得話を書いた。このページだけ、ぼくらのわがままで日本語と英語で書かれている。だから日本のみんなにも読んでもらえる。
 それに関連して、日本の将来をちょっと憂いでみる。


 当の記事については、今のところ、日本からも世界からも、反響はほとんどない。唯一の反響は、藤波貴久本人からだった。ヨーロッパの人に向けて、日本人の置かれている立場を説明したものはほとんどなかったから、その切り口をほめてもらいました。
 ぼくら「世界」と一口にいうけれど、トライアルの場合、「世界」とはほとんどの場合、スペインです。政治的な背景もあるかもしれないけど、あれだけ強い選手がぞろぞろといたら、長いものにまかれるのも、ある程度は仕方ないかもしれない。
 日本の皆さんの中には「ルールはスペイン人が勝つように、スペイン人が作っている」と言う人がいます。ルールに限らず、オブザーバーの採点とか、ちょっとした現場の対応とかで、世界選手権に参戦する人たちもそういう感想をいうことがあるし、ぼくもそう思ったことはあります。
 いかに公平にやろうと思っても、スペイン人からしか意見を吸い上げなかったら、スペイン人の都合のいいようになるのは当然だと思う。しかし逆に、スペイン人以外は、どれほど意見を届けているのか。今、トライアル委員会のナンバーワンはスペイン人で、ナンバーツー(こっちのほうがいろいろと見識を持っていそうだけど)はイギリス人。その次に、フランス人、ルクセンブルグ、ノルウェーとそろっています。日本人はいない。
 スペイン人は(友人のスペイン人だけでなく、どんなスペイン人も)ぼくら異邦人に対して、フレンドリー。ちょっと排他的なにおいを感じるのは、イギリス人です(もちろん、いろーんな人がいて、イギリス人にもフレンドリーなのはいる)。でも、彼らは意見を言えば、みんな聞いてくれる窓口を持っている。
 ここんところ、ふたつのニュースがあった。トライアルのニュースじゃなくて、社会面。ひとつは、国連が難民認定したクルド人の親子を強制送還した話と、在日韓国人2世の人が東京都の昇進試験を受けられなかった話に、最高裁が合憲の判断を下したこと。
 日本の国際化が叫ばれて久しいけど、このニュースは、スペイン人には恥ずかしくて報告できない。トライアルの現場で、スペイン人はなーんとなく自国人をひいきすることはあるかもしれないけど、日本では、行政府と司法が、きっちりと外国人を受け入れない姿勢を示した気がする(それぞれの詳細はよくわかんないから断定はできないけど、少なくともそんな気がする)。
 制度上当然とはいえ、ヨーロッパのトライアルは、日本人の世界チャンピオンを誕生させた。それがいかに藤波貴久個人の努力があったとしても、我が国にお住まいの(二世だから、日本で生まれたんじゃないかと思う。本人に、外国人という意識はないんじゃないか)日本人以外の人には、東京都では昇進する権利がない(最高裁の判決だから、ほかにも波及するんだろうなぁ)。この差はでっかい。
 日本から世界の舞台に出ていって戦うのは、一筋縄ではない。この点を、ヨーロッパの人にはもっともっとわかってもらいたくて、PhotoTrialにはそういうことを書いたつもり。でもヨーロッパの人は、その事実には気がつかなくても、ヨーロッパのほかの人たちと同じように日本人を受け入れ、モンテッサは藤波をチームの仲間とし、ベータは黒山健一をエースとして、スコルパは野崎を看板ライダーとしている。
 日本が、ほんとうに国際化できる日は、来るんだろうか?