雪は降ったって春は春。シーズンは開幕してます。えいえいおー

ど・ビギナーで教室を

子どもバイク教室

 12月4日、茨城県真壁トライアルパークで、ど・ビギナートライアル大会でした。
 この大会、当日エントリーという気安さもあり、2000円という参加費の格安感もあり、お天気に恵まれれば、200人を超える参加者がきてもおかしくないマンモス大会。
 実際のところ、オープンクラスのセクションはどこが「ど・ビギナー」なんだというようなレベルの高いもんです。でも、高いところから落っこちたりするような危険度はないから、たいていの初心者ならもがけば3点で抜けられる。もがかないで3点で抜けられるようになったらずいぶん進歩だと実感できるでしょう。ビギナークラスは、段差なし。アクセルワークだけで乗りきれるセクションってことになってて、こちらはNBでポイントをとるにいたらず、の人たちがオールクリーンできる設定です。でも油断したりするから、それはそれでオールクリーンはむずかしい。黒山健一が、オールクリーンは実力でできるもんじゃないとよく言ってますが、初級者でも、そういう気分を味わえるところはすごい。


 
 ところで、ぼくはもう何年も、ど・ビギナー大会のときにトライアルマシンに触ったことのない人を対象にトライアル教室というか、トライアルマシン体験会をやらせてもらっている。「ど・ビギナー」という名前に反して、その中身がずいぶん高尚で、その反面、ほんとうのど・ビギナーは対象からはずれちゃってるんじゃないか、ちょっとでもいいから、ど・ビギナーに視線を向けてみてくれないでしょうか、というぼくのわがままに、ど・ビギナー主催の萩原さんが「そんなら勝手におやんなさい」とやらせてくれてるってわけだ。
 借り物のオートバイで、はじめてトライアルマシンに触れる人を相手にするのだから、たいしたことはできません。ほんとうなら、トライアルマシンに触れる前に、林道ツーリングにでも出かけてもらってきて、ダート路面に慣れてきてもらったほうがいいんだけど、最近の日記に書いたみたいに、今のライダーはダート路面に慣れ親しむ環境を失っている。「トライアルに来る前に、たっぷりダートを走ってこい」というのは、ダートがたっぷりあった時代のおじさんたちの妄想になりつつあるわけだ。
 このメニューを始めたのは、伊藤家の入門編ビデオを作った頃だった。内容も、そのビデオに即して進めている。でも何年もたつうち、ビデオは成長しないけど、こっちはいろんなノウハウを身につけた。スタンディングスティルひとつを学ぶにしても、学び方次第では夢が大きく広がることも、いくらでも応用が利くことも、やっているうちにわかってきた。その都度、いろんな人がやってくるから、その都度ちがう反応を示してくれたりもする。それで、また新たな課題が生まれたりする。
 トライアルは毎回ちがう表情を見せる自然セクションとの闘いが魅力だけど、人に教えるという作業も、似たような楽しさがある。次はどんなふうにてこずらせてくれる人が来るんだろう、なんてね。今度はどんなセクションを走らされるんだろうとわくわくするのと、似たようなもんだ。
 今回は、福島県から来たご夫婦がお客さんだった。もうひとりおじさんがいらっしゃる予定だったけどドタキャンなさった。このご夫婦は、前回チーズナッツでひととおりメニューをこなしてしまったので、ふたりしかいないんだったら、セクションは知っちゃおうかな、なんて考えていた。でもやっぱり甘かったなぁ。奥さんにとって(からだも大きいし元気な奥さんだったから、行けるかもしれないと思ったんだけど)真壁の地形は、やっぱりおっかないもんだったらしい。前回チーズナッツの駐車場はだだっ広くて、少々失敗してもなんてことない(気がする)。真壁だと、意地悪そうな岩があちこちに牙をむいている(気がする)。
 で、やっぱり今回も、なるべく平らところでとことことトライアルマシンのお勉強をした。彼ら、旦那の出張で、まもなく帯広に引っ越しちゃうんだそうだ。奥さまは専業主婦だっていうから、帯広へ引っ越して一段落したら、なんでもいいからマシンを買っちゃいなさい、旦那が仕事している間に家のまわりでもガレージででもできる練習はあるから、そこから始めましょうと焚きつけておきました。帯広方面のみなさん、その先はよろしくお願いします。
 そうこうしているうちに、ひとりで走る自信がない人のための「カルガモクラス」から、ふたりこっちに転校してくることになった。カルガモとはいえ、コースを移動するだけでも、真壁はちゃんとしたトライアルの領域だ。ふたりともマシンを持っているのだからいっぱしのライダーなのだろうと思ったけど、ひとりは12歳でモンテッサの250を持て余しぎみ、小学校のときにちょっと乗ってたけど、ブランクがあるってことだ。もうおひとりは、どうやらバイク仲間にそそのかされて(笑)連れて来られたみたい。マシンも自分のじゃないってことだ。そういう状況で真壁ってのは、ちょっとたいへんですね。どうやら最初のセクションを走って転んだ時に肋骨をぶつけたみたいで、それもあって、すでに戦意は消失していなさった。
 スタンディングスティルは、なんで立ち続けることができるのか、そのためにライダーはなにをやるのか、なんて解説をしてあげたら「こういう地味な練習がしたくてトライアルをやりたいと思った」のだとおっしゃる。お世辞だったとしても、ちょっとうれしい。
 ぼくの周囲の遊び人ご一同は、派手なことが好きだ。ぼくも、地味なのより派手なほうがいい。だけど、地味に基本を勉強すれば、その先が早いという種類の人たちもずいぶんいる。世の中は、派手なことがいつもいいわけじゃないってことに気がついたのも、こういう活動をさせてもらっての大きな収穫だった。
 正直なところ、小学生や中学生には、技術を習得する近道があると思ってます。子どもたちは、ぼくらが3年かかって習得することを、3日くらいでマスターしちゃうから。だけど今回のけんたくんみたいに、ブランクからいきなり大きなオートバイに乗り換えたりすると、なかなかたいへん。そうそう、藤波だって、50から125に乗り換えた時には、しばらく山ごもりをしなくちゃいけなかったんだものね。
 トライアル技術の習得って、階段だと思ってます。素質のあるやつや若いやつは、二段飛ばしでも五段飛ばしでも、どんどん階段を駆け上がっていってください。そのかわり、間にある階段を、抜いたりしないでくださいね。ときには階段と階段の間にもう一段、特別の階段を置いて、ゆっくりゆっくりあがっていったほうが、確実に上れる人たちがいるんだから。
 いつの日か、バリアフリーのトライアル入門コースを作りたいのでありました。
(写真は、例によってやっぱりぜんぜん関係のない、小学校でのオートバイ教室)