雪は降ったって春は春。シーズンは開幕してます。えいえいおー

スペインの、飯

黙々とねぎを食べるおじさん
ねぎを食べるおじさん

 おいしいものを食べるのだったら、とにかくイタリア。イタリアでレストランに入れば、まぁまずはずすことはない。
 イタリアに比べるとちょっと格下のイメージがあるけど、スペインの飯屋もなかなか負けていない。うまい。そしてスペインならではのうま味は、よそじゃなかなか食べられないものを食べさせてくれるってことだ。今回も、ふらりと入ったレストランで、そんなものに出会った。


 真っ白いテーブルクロスが敷かれているようなレストランはたいてい敬遠するのだけど、今回は杉谷が風邪をひいていて、禁煙のテーブルがいいとわがままを言うんで、高そうなテーブル席に座ってみた。
 スペイン語のメニューはあいかわらずさっぱりわからないから、てきとうにメニュー(定食)をお願いする。なにが出てくるか、開けてびっくりのご夕食です。
 最初はパンとトマトとニンニク。こっちの人は、パンにトマトをすりつぶしたものをつけて食する。味付けはオリーブオイル。

ねぎ登場
ねぎ登場
ねぎを食べる
こうやって食べる

 生のニンニクを食べてみて口の中を燃やしていると(それはパンにこすりつけて食べるのだと、杉谷に笑われた)やってきたのはなぞのベジタブル。
「食べ方、わかる?」
 ネクタイ締めたお上品なウェイターが聞いてくる。スペイン語で聞かれたけど、たぶんそんなことを言っているにちがいない。いいや、わかんない。
「真ん中を引き抜く、ソースに浸けて食べる。先っちょの炭の部分は食べない。いい?」
 食べ方はシンプル。ただし、なにを食べさせられるんだかは、わかんない。食べてみると、どうもねぎのようだ。ねぎをまるごと炭で焼いている。そのねぎを、ソースで食べる。うまい。うまいけど、手が炭だらけになる。そういえば、テーブルクロスの上に紙が敷かれて、エプロンといっしょにキッチン手袋が渡された。でもビニールごしに食べちゃ申しわけない気がするので、手を炭だらけにしながら、素手で食べた。

食べたあと
食べたあと
使い終わった手
手はこんな感じ

 粗野な料理というか、素材そのままというか、なんだかとっても贅沢なお料理でした。お食事というのは、エネルギーを摂取したり調理の腕を味わったりするだけじゃなく、楽しい時間をすごせてなんぼなのだなと、あらためて思わせるようなねぎ料理だった。
 手はすっかり真っ黒になっちゃったけど、こっちの人がレストランで食事をするのは、生きるためというより人生楽しむためのものだから、手を真っ黒にして、悪戦苦闘しながらねぎを食べるなんてのは、一夜のエンターテインメントとしてはなかなか乙なもんなんでしょうね。日本じゃ、なかなかはやりそうにない。

クレマ・カタラナ
クレマ・カタラナ

 そのあと、ちゃんとセカンドが出てきたはずなんだけど、最初の皿のインパクトが強すぎて、次がなんだったのか、思い出せない。最後は、カタルニア地方(バルセロナを首府とするスペイン南東部。地元人はスペイン人である以前にカタルニア人であるという意識が強い)に来たらこれを食べなきゃ終わらないという、クレマ・カタラナを食べる。たぶんカタルニアのクリームってことでしょうね。父親はプリンで、カスタードクリームの血がたっぷり混ざっていて、さっき焼きました、みたいな痕跡が残っている。