雪は降ったって春は春。シーズンは開幕してます。えいえいおー

キーボードを買った

HHKBlite2

 衝動買いで、キーボードを買いました。前からほしかったんだけど、今のキーボードが壊れてるわけじゃないし、ほしくてしょうがないという感じにはなってなかったんだけど、気分を変えたくなって、注文してみました。
 キーボードとかオートバイのグリップとかフットペグとかは、直接人間が操作する部分だから、これが変わると大きな変化だ。もっと早く買えばよかったなぁ。


 このキーボード、6000円くらいだからけっして高くないけど、アップルの純正キーボードが3000円台で買えちゃうから、やっぱり高いものなんだろう。
 ただ、ぼくが買ったのはマニアの間ではニセモノとされているやつで、これのホンモノは25000円もする。25000円はさすがに高かったのと、その25000円だと、ぼくにはどうしても困ることがあるんだ。
 商品は株式会社PFUのハッピーハッキングキーボードという。東大の和田さんって教授がPFUと共同開発して作ったキーボードなんだそうだ。ホンモノはHHKBプロフェショナルと称されていて、ぼくの買ったニセモノはHHKB Lite2という。
 Liteってlightの米語綴りなんだってね。そういえば、富士通が作ったワープロ専用機にOASYS Liteってのがあって、ぼくはあれでキーボードを覚えたんだった。
 ぼくとキーボードの出会いは富士通のマシンだったけど、当時富士通は親指シフトという奇っ怪な入力方法を提唱していた。こんなのにそまっちゃったら、他の機械が使えなくなるなぁと親指シフトを敬遠したのを覚えている。だからぼくは、OASYSを使っていたときには、親指シフトを使ってない。
 その後、鈴木阿久里がCMに出てきた東芝ダイナブック初期型を買ったとき、半分興味本位で親指シフトのソフトをインストールしてみた。それから、ぼくは親指シフトを愛用している。ダイナブック用親指シフトのソフトはアスキーの当時編集長遠藤諭さん(今調べたら、アスキーの取締役になってた)の製作によるもので親指ぴゅんという名前だった。その頃は「ここはこういう仕様のほうがいいんじゃないか」なんてよくメールを送ったもんだった。遠藤さんとはついぞお会いするチャンスはなかったけど、なかなか愛せる人のようで、半年ばかり連絡がなかったと思ったら「久しぶりに親指ぴゅんのソースをいじろうかと思ったら、仕様を忘れてしまった。ここはどういうふうにしていたんでけたっけ?」なんてメールが届いたりした。もしかしたら、親指ぴゅんのユーザって、ぼくひとりだったのかしらん。そんなこたぁないよな。
 それから何台かのMS-DOSマシンを経てWindowsは使うことなく、マッキントッシュを使いはじめたけど、これも最初から親指シフトをで入力している。OSのバージョンがあがるたびに、親指シフトが使えなくなって大慌てするけど、世の中の仲間がなんとかしてくれるわけだ。親指シフトの輪は頼もしい。
 で、親指シフトキーボードでないキーボードで親指シフトをするには、Nの下のキーとVあたりの下のキーは分離していないといけない。これをそれぞれ、右親指キー、左親指キーとして使うからだ。

親指シフトキーボード

 これが親指シフトキーボード。空白キーの下に、ふたつの親指キーが並んでいる。でも、こんなキーボードは、ふつうには売ってない。だから親指シフトを使い続けたい愛好者は、スペースバーの長いふつうのキーボードでなんとか親指シフト入力する方法は編み出した。これがNICOLA配列っていって、今は、たぶんほんものの親指シフトよりたくさんの人に使われている。これをさらに発展させて、日本語キーボードを使えば、右親指キーと左親指キーを疑似的に使い分けられるではないかというのが、今、ほとんどの親指シフト愛好家が使っている仕様だと思う。これを使うには、スペースバーが長いキーボードじゃだめなんですよね。
 話が長いなぁ。
 だもんで、ぼくは日本のJISキーボードしか使えない。かな入力用のキートップはいらないんだけど、英文字しか刻印してないキーボードはみんなスペースバーが長いんだ。ところがこのHKKBは、JISキーボードのくせして、キートップにアルファベットしか刻印してないのがあるのよ。これはかっこいい。
 ちなみに、ぼくはダイナブックで親指シフトを覚えたんで、キートップに文字が書いてなくてもまるで問題ない。ワープロを最初に使いはじめたときにはキートップを見ながら入力してたんだけど、バッテリーで駆動できるようになって、液晶にバックライトがついて、クルマの移動中でも原稿が書けるぞと大喜びで持ち込んだら、日が暮れて暗くなったらキートップが見えなくて入力ができなくなった。それで奮起してブラインドタッチ(最近はタッチタイピングというのがお行儀)を覚えたのだった。
 HKKBそのものは、親指シフトについてはなんらの配慮もされてないみたいだけど、PFUってのは富士通の子会社で、富士通といえば親指シフトを世に出した会社だから、なんとなく通じるところはあるのかもしれません。
 このキーボード、和田先生の主張をみるとわかるけど、キータッチとか、なかなか素晴らしい。ほんもののほうはもっと素晴らしいキータッチなんだろうけど、ニセモノでも充分素晴らしい。そのかわり、よけいなファンクションキーとかは使いにくくなっている。ほんもののほうには、矢印キーさえないらしい。すごい思いきりだ。
 キーボードは、入力が快適にできてなんぼだと、ずっと思ってた。初期型のダイナブックは、なかなか素晴らしいキーボードを持っていた。ところがその後、キーボードはどんどん安物になって、ミスタッチは多いわ、キートップは吹っ飛んでいくわ、ろくなもんじゃない製品が多くなった。きっと、コンピュータを作っている人は、コンピュータが文字を入力する用途に使われるなんて思っちゃいないんでしょうね。
 一方、プログラマの人たちは、キーボードでコマンドを打ち続けるのが商売だから、キーボードにはうるさい。このキーボードは、そういう本職中の本職のマニア心をうならせるものだ。
 人間が触れるものは、気持ちよくありたい。最近じゃ、インターネットで日記やブログを書いてる人は多いから、昔より、文章を書く人は多くなったんじゃないかと思う。そういう人は、ぜひキーボードを変えてみるといいと思います。タコなキーボードでつっかえつっかえ書いているより、ずっといい文章が書けますから。
 おっと、こんなこと書くと、だったらもっとちゃんとしたものを書けよ、というつっこみが聞こえてきそうだ。いいキーボードは実力を最大限に引きだすことはできますが、実力以上のものは引きだせません。これ、オートバイをはじめとする道具に、みな共通することですね。
 ということで、キーボードにはもっとこだわるべきだと思う。中には、キーボードを輪島塗で作っちゃうなんてこだわりもあるみたいだけど、さすがに50万円のキーボードは病気だと思います。
http://www.pfu.fujitsu.com/topics/new061012.html

◆参考文献など
株式会社PFU Happy Hacking Keyboard
http://www.pfu.fujitsu.com/hhkeyboard/

Tech総研ホーム > エンジニアの生態 > エンジニアの星 >
和田英一@日本初ハッカーはちょっと変わった絵を描く
http://rikunabi-next.yahoo.co.jp/tech/docs/ct_s03600.jsp?p=000994

個人用小型キーボードへの長い道
和田 英一
http://member.wide.ad.jp/~wada/bit.hhkbd/hhkbd.html