雪は降ったって春は春。シーズンは開幕してます。えいえいおー

ハーレーがいっぱい

07年4月ミューズパークにて

 ハーレー・ダビッドソンってオートバイがある。なんてあらたまって言わなくても、たいてい誰だって知っている。ガスガスやベータの名前はしらなくても、インディアンや陸王の存在は知らなくても、ハーレーをご存知の方は多い。本日は、ちょっと昔話になるけど、4月に秩父市(と小鹿野町にまたがる)ミューズパークで行われたハーレーのミーティングイベントをちょっとだけのぞいてきましたというお話。

ずらり並んだハーレーたち

 モータースポーツ屋から見たハーレーというのは、およそ繊細でない旧型のマシン。なんたってひと抱えもあるピストンを積んだOHVエンジンなんだから、速く走ろうってのが無理な話だ。ところが一方では、ダートトラックではいまだにハーレーが圧倒的に速い。くやしいから、ホンダが真剣に打って出たことがあったけど、200km/hオーバーでトラックを横滑りするマイルレースでは、やっぱりハーレーが強い。モータースポーツが機械だけの競争ではなくて、機械と人間の両方の競争だから、数値的にはちっとも速くなかろうと、それだけでははかれないなにかがあるらしい。
 と、ここではそういう、マニアックな話をしたいのではなくて(当時の)ぼくのうちの近所でハーレーがいっぱい集まったというお話をしたかったというそれだけだ。イベントのホームページを見ると、参加費2000円也で土曜・日曜。特に、なにかの起こるわけではなくて、みんながひとところに集まるというのが大きな目的らしい。こういうイベントをヨーロッパの人はラリーとかギャザリングとか呼んでいた気がする。日本じゃラリーと呼ぶと意味がちがっちゃうかもしれないけど。
 実はこのイベントに、仲間のSくんが関わっていた。といっても、屋台で焼きそばを焼いているだけだけど。前の晩に「焼きそば焼いてるからきてくださいよ」と言われたので、言ってみた。駐車場は無料だけど、屋台に近寄るには、2000円払わないといけないらしい。「来てみたんだけど、2000円払わないといけないの?」「どうもそうみたいです。ぼくも知らなくて、すいません」てな会話があって、どうしようかな、2000円払って焼きそば焼いているSくんを見にいくかなと中をのぞき見してみたけど、ハーレーのスペシャルパーツとかを見ても趣味がちがうのであんまり興奮できない。

集まってくるハーレー乗り

 ふと駐車場をみると、あとからあとから、続々とハーレーがやってきている。なんでも、このイベントには2000台からのハーレーが集まるらしい。駐車場を徘徊している分にはお金がかからないので、とりあえずそっちに向かった。
 最初の10分ほど、ぼくは1台1台、どういう意図でマシンを作っているのか、さっぱりわからず、悩んでしまった。チェンジペダルのロッドが鎖でつながっていたりする。これじゃシフトタッチなんかどうなったもんかわかんない。そんなのは序の口で、オートバイを速く快適に走らせようと日夜努力しているモーターサイクルメーカーのみなさんが見たら、頭を抱えてしまうような改造ばっかりだ。
 だけど20台30台とそんなハーレーを見ていると、速くて快適なモーターサイクルの作り方なんて、どうでもいい気がしてきた。彼らにとって、乗りにくくて機能的でなくて、すぐぶっ壊れちゃいそうな、こんな仕様のハーレーがめざす理想のモーターサイクルなんだろう。次々に駐車場に入ってくるハーレーたちは、ちょっとした路面の凹凸でおおげさにバウンドする。リヤクッションのないやつもいるから、その都度、ライダーは飛び上がってしまう勢いだ。それでも彼らは幸せそうで、それはつまり、人の幸せなんて、他人が判定するもんじゃないということだ。山に駆け登ったと思ったら落っこちてきて、それでニコニコ楽しそうなトライアルライダーの幸せが、他人には理解されないのと同じようなもんだと思う。

ハーレーその1
ハーレーその2
ハーレーその3

 さて後日談。そのイベントのあと、土曜・日曜に秩父から東京方面に向かって走っていると、やたらハーレーとすれちがう。どうも秩父は、ハーレーのツーリング先としてメッカになってしまったらしい。2000台からのイベントがひとつ起こると、そこがたいへん心地よい場所に思えてくるんじゃないだろうか。大昔の話だけど、新宿西口広場がフォーク・ゲリラの集会場として定着したのも、そんなことかもしれない。某オートバイ雑誌の編集部が都内の貸しビルを転々としたときには、その都度、そのビルの歩道がオートバイ駐輪場と化したものだった(今なら駐車違反で捕まる)。
 人を呼ぶには、大きなことを一発やるべし、ということなのか。個人的には、大きな声をあげてどどんとでっかいことをやるってやり方はあんまり好きじゃないんだけどね。