雪は降ったって春は春。シーズンは開幕してます。えいえいおー

2024全日本開幕、小川友幸快勝

3月31日、全日本選手権の2024年シーズンがスタートした。会場はここ数年定番となった愛知県岡崎市キョウセイドライバーランド。桜が咲くには、ほんのちょっと早いタイミングでの開催となった。

今シーズンは、いろいろ変化があった。IASにはルーキーを含め、ニューフェイスが3名、それぞれ活躍が楽しみだ。そしてヤマハTY-E2.2が、一気に3名のライダーのもとに渡った。連覇を続ける小川を包囲して、タイトル奪還をねらいところだが、まずはTY-E軍団の目標は、全日本初勝利。氏川政哉、黒山健一、野崎史高の誰がその初勝利をもたらすか、注目の集まるところだ。

IASの参加が18名、IAは43名、レディース8名、IBが79名。総数150名に届こうという大にぎわい。渋滞対策で、いつものようにIBはAグループ、Bグループに分かれ、Bグループは第6セクションからスタートした。全クラス10セクション2ラップを走るが、レディースとIBは2-3-4-5-6-7-8-9-11-12、IAとIASは1-2-3-4-5-6-7-10-11-12を走る。渋滞対策が功を奏したか否か、渋滞にはまったり申告5点で先を急がなければいけなかったり、セクション待ちの最中に割り込まれたり(本来なら重大なペナルティが科せられるはず)という事例は少なからずあったようだ。

ディフェンディングチャンピオンの小川友幸は、序盤から好調だった。第4で2点、第5、第6と1点を失うも、最小限点に抑えている。第4をクリーンしたライバルは第5で5点となったりしているから、トータルすれば小川が平均して好スコアをマークしていることになった。小川は1ラップ目、5点なしで10セクションを走りきった。ライバルを見ると、黒山と氏川が1個ずつ、小川毅士が2個、武田呼人が4個の5点を喫している中、5点なしはさすがという他はない。

小川といえば、美しい走りが真骨頂で、若い自分には、クリーンを狙うあまりに5点になってしまうという失敗も少なくなかった。その小川が、2024年の現在は、必要最小限の足をしっかりとついて試合を進める。その裏には、年齢的に故障箇所が出てきて、若い自分のような走りばっかりでは勝ちきれないことなどもあるだろう。しかし小川に関しては、故障があることで逆に勝負強くなっているようにさえ見える。

1ラップ目5位に入った武田は、これが全日本IAS初参加になる。IAチャンピオンをとって翌年からスペインにトライアル留学して日本を留守にしていたから、全日本での記録がない。IASでのポイントがない場合はIAに降格という規則はあるが、武田はそのままIASに参加することになった。スタートはほぼ先頭なのにこの成績だから、さすがスペイン帰りというところだ。

この武田に続いて1ラップ目に6位につけたのが黒山陣だった。2023年IAチャンピオン。その血統と環境から、活躍しないという予想はあり得ないが、開幕戦にどれくらい走るのかは、それぞれいろんな読みがあったことだろう。黒山は、武田と3点差につけた。まず10位以内に入ってSS進出、という目標は、軽くクリアしそうだ。

2ラップ目、小川友幸の好調はまったく揺るぎがない。クリーンは4と、並み居るライバルが5つのクリーンをたたき出しているのに対してつつましいが、減点した残りのセクションは全部1点で抜けている。ということで2ラップ目の減点はたった6点。1ラップ目と合わせて、2ラップ終了時点で11点となる。

2ラップ目に5つのクリーンを出したのは、黒山、氏川、野崎。黒山は5点なしで2ラップ目をまとめ、5点一つを喫した氏川を逆転して2位に出た。今回のセクション、難度も高いし高さもあるが、ポイントが多くて長い、時間切れで5点となるケースも少なくなかった。登ったと思ってもその先があってくやしがるシーンを何度か見た。出口が下りで、流れ込んであぶない場面もあった。セクションは登って終わるほうが安全ではある。

1ラップ目から一転、調子を上げてきたのが野崎だった。1ラップ目の野崎は6つの5点で39点、なんとSS進出圏ぎりぎりの10位だった。エンジンからEV、乗り込み時間も足りなかったが、実戦対応はこれが初めてだから、この結果もある程度は想定内かもしれない。2ラップ目は一気に減点を15点まで減らしてきた。氏川の減点が13点だから、それに肉薄する。野崎のシーズンスタートは、ここからかもしれなかった。

野崎に同点、クリーン数二つの差で暫定6位となったのが武田。武田は2ラップ目第6の出口で岩につっこみ、ひざを痛めて残りを戦うことになり、苦戦が否めない。

柴田暁は、不運続きの1ラップ目からやや調子を取り戻したか、それでもまだまだ本調子にはほど遠い。2ラップを終えて、柴田は56点で7位。

久岡孝二は2ラップ目に追い上げができなかった黒山と同点ながら、クリーンひとつ勝って8位、黒山は9位で、まずはSS進出。目標をひとつ達成した。SS進出最後の一席は武井誠也がとったが、武井は1ラップ目の第10で足首を痛めていて、厳しいSSとなりそうだ。10位武井と9位黒山・8位久岡は8点差。黒山、久岡と7位柴田はやはり8点差。SS次第では順位の変動があり得る。柴田は、6位武田、5位野崎と2点差で、この3人は大接戦。4位小川毅士は40点、3位氏川は24点だから、小川毅士の4位は動かない。氏川の表彰台は確定だが、2位黒山健一20点を逆転するチャンスはある。勝利の可能性は黒山健一と小川友幸の二人。ただし黒山が逆転するには、二つのSSを1点以内が絶対条件で、ちょっと厳しい。

SS第1は最後に設けられた180cmの真直角が肝となった。ここまでも難ポイントは3つほどあり、真直覚の後にもタイヤがある。時間もぎりぎりだ。真直角まで駒を進めたのは黒山陣、野崎、小川毅士、氏川、黒山健一だったが、いずれも5点。この時点で、小川友幸の勝利は確定的となった。トリを務めた小川の華麗な走破が期待されたものの、なんと前半の岩の飛びつきでリヤを大きく滑らせ失敗。ついにSS第1は全員走破ならずとなった。

SS第2もポイントがもりだくさん。ラインのない斜面の上り下り、大岩、3段の岩飛び、巨大タンクと石垣登り。足つきの出やすいのは中盤の岩飛びだが、一瞬のミスで5点となるのはどのポイントでも可能だ。巨大タンクまでたどりついたのは柴田が最初だった。柴田はこの難SSを1点で抜けて、いいところがほとんどなかったこの日の最後に、ちょっとテクニシャンぶりを見せた。

武田は岩飛びでミスが出てそこで5点。最後の最後で、武田はデビュー戦を6位入賞で飾れず、柴田に逆転を許して7位。柴田は、野崎次第ではさらに5位まで浮上する可能性があった。しかし野崎は3点で走破。ぎりぎり、柴田と同点ながらクリーン数差で5位を守ることになった。黒山のEVデビュー戦も5位。野崎のEVデビュー戦は、求められる最低限を満たした結果となったのではないだろうか。

4位小川毅士は2点。いい走りを見せたのだが、順位は変わらず。氏川は3点で2位浮上の目はなくなった。この時点で、順位はすべて確定した。その後、黒山が1点と柴田に並ぶベストスコアをマークして、勝利を決めた小川友幸がどんな走りを見せるのか注目されたのだが……。なんと小川は巨大タンクで大きくリヤを跳ねさせてそのまま前転するように転倒。なんと、SSのふたつとも5点という、らしくない結末だった。

それでも、2位黒山には5点差。開幕戦に勝てないジンクスのある小川友幸とすれば、充分以上の好結果。去年の開幕戦ではフィジカルの不調と戦っているのが明らかだったが、今年はそれを克服したか、あるいは不調と共存する術を、さらに高次元で身につけたのかもしれない。

SSに進めなかった11位以降は、野本佳章、田中善弘、濵邉伶、平田雅裕、岡村将敏がポイント獲得。足を負傷した磯谷兄弟と、今回がデビュー戦の浦山瑞希の3人が無得点でシーズンをスタートさせている。

国際A級

成田匠、本多元治、成田亮と、このクラスのチャンピオン経験者がひしめく中、勝利をつかんだのは平田貴裕だった。昨シーズン、負傷療養でIAS参戦を休んだためIASでのポイント獲得がならず、IAへのクラス移行を余儀なくされた平田だが、最も現役IASに近い存在であることをアピールした。

最多クリーンをマークしたのは本多。1ラップ目にトップをとったのはゼッケン1番の砂田真彦だった。EVトライアルのパイオニア、EMに乗る成田兄弟は匠が4位、亮が9位となった。

若手では宮澤陽斗が成田匠に続く5位。中里侑12位、坂井翔13位、小椋陽14位、髙橋寛冴15位となっている。強固なベテランが上位を守っているが、若手にはぜひそこを突き抜けてほしいものだ。

レディース

今回は8名が参加。奈良の中学生の兼田歩佳(NA)と、関東の大学生の中澤瑛真が初参加(NB)。

トップ争いは序盤から減点の取り合いとなったが、中川瑠菜が第4をクリーンしたことで一歩リード。8点リードで1ラップ目を折り返した。2ラップ目、渋滞もあって戦い方もむずかしくなるが、同条件といえば同条件。それぞれ数点のタイムオーバーを喫しながらも、中川はチャンピオン山森あゆ菜を12点差で下してシーズン初勝利を得た。

等々クリーンなしで試合を終えた山森は、それでも小玉絵里加に2点差で2位を守った。このトップ争いは、シーズンを通じて見ごたえがありそうだ。

4位齋藤由美、5位寺田智恵子はそれぞれ独走。昨年の負傷から復帰戦となったソアレス米澤ジェシカは、なんと3つもの見落とし10点があって6位。なんでも第12セクションは存在するのを知らなかった、という大胆さだった。

デビュー戦の中澤はそのジェシカに3点差の7位で、兼田はクラッシュもあり第4セクションまで走ったところでリタイヤとなった。兼田は次もエントリーしているから、今後の飛躍が楽しみ。

国際B級

去年、惜しいところでIA昇格を逃した小学生の永久保圭、去年のGCでぶっちぎり勝利をしてIBに昇格した台湾チャンピオンのチェン・ウェンマオ他、有力処が目白押しの今年のこのクラス。しかし伏兵がいた。髙橋淳。本多元治とほぼ同期のチームメイト。マオと同じくトライアルGC優勝者にして元国際A級ライダー。2ラップ目は減点を増やしたものの、1ラップ目の1点はライバルがぐうの音も出ない圧倒的スコアだった。2位永久保、3位マオはまず順当なところ。その後ろ、若手や成長株がずらりと並んでいる。このクラスの勢力図が固まるのは、まだしばし時間がかかりそうだ。

エントリーリストなどの事前情報
https://www.shizenyama.com/events/38620/

結果表
https://www.shizenyama.com/40567/