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廣畑伸哉、3年目の世界選手権


3年に渡る世界選手権フル参戦。廣畑のチャレンジは日本の将来、そのもの。希望も挫折も、すべてが糧になって吸収されていく。

自:世界選手権3年目ですね。
廣:はい。3年目になりました。
自:見ててもはっきりわかるけど、成長しているよね。
廣:はい。してると思います。でもやっぱり、成長したって言葉で言っても、結果が出てないと。成長って、どう成長したの? ってなってしまうんで。もう3年目で、絶対言い訳もできないし。そんな中ですから結果を出さないと。
自:結果も出始めてます。
廣:そうですね。今年、開幕戦のマラガはよかったです。でもポルトガルはちょっとダメで、次がここ日本(このインタビューは日本GPの前日にやってます)。昔からぼくを知ってる人が見に来てくれたりもしてるので、うれしいですけど、プレッシャーもありますね。
自:内容的な成長についていえば、1年目も成長はしてたわけですよね。
廣:しました。成長した。
自:ただ結果を見てる側からすると、ずっと15位とずっと17位は、ポジションはふたつしかちがわないけど、伝わる結果はぜんぜんちがうものになりますね。あとちょっとなのに。
廣:はい。そうなんです。
自:ヨーロッパに行く前は、どのくらい行けそうとか、目論みはあったんですか?
廣:もっといけると思ってました。1年目から、10番以内はいけるかなと思ってたけど、走ってみたらぜんぜんちがいました。


自:それは何だったの?
廣:単純に実力不足です。もうほんとに単純に実力不足。セクションも全日本とはぜんぜんちがうし、1年目はノーストップルールだったので、そういう、ルール的な戸惑いもありました。
自:日本からヨーロッパに行って環境が変わった、ノーストップルールで走らなければいけない、チームも変わった、乗るオートバイも変わった。もう変わったことだらけでしたね。どれが一番影響が大きかったでしょう?
廣:いやもう、ぶっちゃけ言ったら全部です。全部ですけど、まぁしょうがないです。
自:そういういろいろには、2年目ぐらいには慣れてきたんですか?
廣:2年目からはルールも変わって止まっても5点にならなくなったんで、その点は少し楽になりました。
自:ノーストップルールは1年だけだったんですね。
廣:そうです。ノーストップは1年しかやってません。2年目はルールも変わったし、ある程度言葉も話せるようになってきました。スペインでの生活は不自由なくできるようになってきたし、それに体もでかくなりました。
自:住まいはガブリ(ガブリエル・マルセリ)と一緒だったんですよね? 1年目からいっしょに住んでたんですか?
廣:そうです。スペインに行ったその日からガブリの家に行って、一緒に住んでました。
自:住まいは、集合住宅とかですか?
廣:一軒家です。ガブリが借りてた一軒家にひとつ部屋が空いてたんで、そこにぼくが入りました。
自:モンテッサが借りてるおうち、ガブリが借りてるおうち?
廣:そうです。ガブリが個人的に借りてました。
自:ご飯食べたり遊びに行ったりするのも一緒ですか?
廣:いっしょです。練習は一緒に行く日も行かない日もありますけど、練習に行って、帰ってきてご飯食べて、夕方にジムに一緒に行って……。寝るとシャワー以外はみんな一緒みたいな感じです。
自:スペイン語もガブリ先生に教えてもらった?
廣:そうです。ぼくのスペイン語の先生はガブリです。ガブリとずっと話して学びました。
自:ガブリはカタロニア人ではないですよね?(カタロニアはバルセロナを州都とするスペインの州。スペインの北東部にあって自治政府がある)
廣:ちがいます。ガリシアってわかりますか? そこの出身です(ガリシアはスペインの最北最西端、ポルトガルの北方に位置する)。
自:ではカタロニア語はなしで、きっちりスペイン語を学んだと。
廣:きっちりスペイン語です
自:カタロニア語はまったくわからない?
廣:ガブリはしゃべらないですね。わかるけどしゃべらない。
自:廣畑くんは?
廣:ぼくはまったくわかんないです。
自:スペイン語で話ができるようになったのは2年目?
廣:1年目はぜんぜんわかりませんでした。もともと勉強していったわけでもないし、もうまったくだめでした。なんとかなってきたのは、2年目の後半あたりかな?
自:ちょうどその2年目の後半に、世界選手権のポイントもとれた……
廣:そうですね。最後の最後に。
自:走っていて、あれは取った感がありました?
廣:取った感、ありました。やっぱり、もう取らないとって思っていて、ところがそう思ったまま最終戦まで行ってしまって、いや、本当にここで取らなかったらどうしようって感じだったので、1日目でポイント取って、うれしかった、というより安心した感じでした。ほっとしたって感じです。
自:見ていると、ポイント圏ギリギリの人たちがいっぱい競り合っていて、そんな中でみんなが5点取るところを、クリーンとか2点とかで抜けられたやつが抜きんでていくって感じですよね?
廣:本当、そんな感じです。
自:廣畑くん自身の戦い方を見ても、そういう実感があった?
廣:2ラップ目がかなりよかったです。1ラップ目はそんなによくはなかった。何位だか忘れましたけど、ポイントに入るか入らないかくらい。そしたら2ラップ目がかなり良くて、それで入ったんです。本当に、1点、2点の差でだいぶ変わりますから。
自:戦っている側からすると、15位とたとえば25位も、そんなに変わらないんじゃないかなんて思うんですが。
廣:そうですそうです。1セクションに1点多いと、12セクションで10点差になっちゃって、10点も差があったらその中に10人、15人入ってきちゃいます。

Photo:Pep SEGALES

自:小川毅士選手が1シーズン行って、その結果も日本のモノサシを示してくれたように思うんですけど、廣畑くんが世界へ行く前の二人は、毅士選手が平均して4位とかで、廣畑くんが6位とかでした。調子がいいとき悪いときがあって4位が3位になったり、6位が5位に近い6位だったり7位に近い6位だったりはするけど、だいたい順位はそんなところ。でも日本では好不調が3位から5位になったとして、それがヨーロッパだと10位と30位になってしまう、そんな感じがします。
廣:そうそう、そんな感じ。本当にそんな感じです。
自:参加者が多いと、順番も上がったり下がったり、大きく変わるんですね。
廣:レベルもほとんど一緒のライダーがいっぱいいますから。ひとつのセクションを1点で行くか5点で行くか、それで結果がぜんぜん変わってくるので、そういうプレッシャーもありますね。
自:今年のリザルトを見ていると、ポイントとったりとらなかったりするファビアンが突然勝っちゃったじゃないですか。そういう結果を見ると、廣畑くんが勝つチャンスは充分あるんだと思うんです。
廣:ファビアンも調子いい調子悪いはありますけど、レベル的に考えたら、そういうポジションにいてるとは思います。ある意味、誰にでもチャンスがありますね。
自:この3年、絶好調で走ったことはありますか?
廣:まだないです。
自:7位に入った時も絶好調ではなかったですか?
廣:絶好調じゃないです。ポイントはとったかなぁ、どうかなぁ、くらいの感覚で、まぁ15位以内にはと思ってはいましたけど、まさか7位とはって感じでした。けっこうまわりがミスしていたんですね。走る位置によると思うんですけど、ぼくのまわりの連中はけっこうよかったから、いつものペースだなぁと思っていました。それと今、世界戦は持ち時間を細かく決められていて、あんまり時間もありませんから、ぱっぱぱっぱとすぐにトライしていくんで、あんまり他のライダーのトライは見ないんですね。だいたい自分の前3人は見られるんですけど、7位になったときは、その人たちが調子よかったんです。だから、みんなこれくらいだろうなっていう感覚で走ってたんですよね。意外にみんながミスしてくれていて、いい誤算で、あれ? 7位だよって、ちょっとびっくりしました。
自:13位くらい、な感じだったということかしら?
廣:そうです。だから調子悪い時というか、そんなに乗れていない時でも、ふつうに走れれば15位以内にはいけるという自信はあるんです。
自:ポイントを逃すときというのはふつうでないというとき?
廣:そう。ポイントを逃すのはダメですよね。
自:ふつうでないときはなにがふつうでないの? ふつうに走れていない要素とはなんでしょう?
廣:本当にボンミスとか、ありえないミスがあると一気に落ちます。やらかしてしまうと、メンタル的にも落ちるし。ふつうの練習通りに走れれば、試合でいつもの練習の走りができれば、15分以内には絶対に行けるという自信はあります。
自:なるほど。でも、ライバルもだいたいみんなそんな感じなんですよね。
廣:みんなそうです
自:試合になると、やっぱりふつうの練習の走りはできない?
廣:むずかしいですね。今年はセクションの持ち時間が1分で短かいし、まわりのみんなも、いつもの練習通りに走ってる人は少ないんじゃないでしょうか。世界戦という、独特のプレッシャーもあるし。

Photo:Pep SEGALES

自:世界戦でなく、スペイン選手権はどんな雰囲気ですか?
廣:ちょっとちがいますね。雰囲気がゆるい、というわけではないんですけど、世界戦の方が、もっとみんなピリピリしています。1点もつけへん、 1点もつかれへんっていう、そういうプレッシャーですね。
自:スペイン選手権は、世界戦より参加者が少ない?
廣:少ないです。15人くらいですね。多くて15人くらいです。
自:全日本みたいな感じでしょうか?
廣:そう。だからけっこう一人一人のレベルが離れてる感じです。
自:スペイン選手権では優勝しましたね。あれはうまく走れた?
廣:あれはね、調子よかった。自分でもちょっとびっくりするくらい調子よかったです。
自:うまく噛み合えれば優勝はできるってことなんですね?
廣:そうです。まぁルシアっていうバレンシアの近くなんですけど、ぼくも好きな地形だったし。
自:逆に今年の第2戦目のポルトガルでポイント取り逃してしまったのは? 地形的に苦手とか、なにか理由がありましたか?
廣:あれはね、ぼくの問題です。1日目は最終セクションまで12位とか13位ぐらいにいて、最終セクションはインドアだったんです。ほんとに簡単な一本橋。それで落ちました。ぼくだけなんですよ、そこ落ちたの。それも1ラップ、2ラップとも同じように落ちて、それでもういきなり順位も落ちて……。
自:それは、監督にもなにしてんねんと怒られそうですね。
廣:怒られたというより、なんでミスしたの? なんで2ラップともミスしたの? なにがあったの? と。一本橋を渡っている途中でなにかあったのか、渡る前になにかあったのか、そういうのを考えろと。
自:なるほど。
廣:監督には、怒られたことは一回もないです。ミスさんは誰でもするから、次にミスしないように、どうしてを考えろと。同じミスはダメやからって。そういう方針で言ってくれます。それはぼくもすごい、なるほどって思うし、そういうふうに、どうしようって考えます。


自:そういうふうに考えるんだ、という発見があるわけですね。
廣:貴久さんだったらどうしてるか、ということも聞いてます。練習の時にたまに来てくれるから、どうやって行きますか? とか。オレはこう考えてるって時、どう思いますか? って聞いたら、同じやっていう時もあるし、おれはこういう風に見えてるとか、こういう行き方もあるよとか言ってくれます。でもこう行けって言い方じゃなくて、こういう行き方もあるから頭に入れておいて、自分でそう思ったらやってもいいしと。手札を増やす方法を教えてくれます。 決めつけるわけではなくて、そういうふうに助けてくれています。
自:監督というか、藤波貴久さんとの接点は、この3年間が初めてでしたね。
廣:そうです。それまではいっさい接点がありませんでした。スペインに来てから、ですね。
自:現役時代に走っているのは見たことありますよね。
廣:あります。でも一回だけです。2019年のもてぎで。貴久さんが最後にもてぎを走ったとき。その一回だけです。ぼくがトライアルを始めたのは2018年の夏でしたから。
自:今年の、レース1、レース2というルールはどう思いますか?
廣:ぼくにとっては、いいと思います。1ラップごとにチャンスがあるし、チャンスが増ます。もちろんその分、落ちる可能性もあるから、良いところも悪いところもありますけど。
自:ファビアンは20ポイント獲得したけど、今までだったら5位かなんかになってるわけですよね。
廣:そう、そうです。でもレース1、レース2で分かれたとしても、結果を出すやつは出すし、実力あるやつは上に行くんです。実力ある者が不利になるというようなルールではないと思うんで、よいと思います。
自:ノーストップかストップかというほど、廣畑くんのトライアルに影響はない?
廣:ないですね。1ラップ目がもし悪かったら2ラップ目とぱっと切り替えられるし、1ラップ目が良かったら2ラップ目も同じようにいこうと思うだけですから、そこまで変わるわけではありません。
自:1ラップ目が悪かったら、今までだったら、挽回しなければいけないモードになるけど、今のルールはまるきりゼロからやりなおせるわけですね。
廣:そう。悪かったら2ラップ目から切り替えようと思います。まぁ、いいルールってことになりますか。
自:来年はどうなる予定でしょう?
廣:わからないです。今年の結果次第です。ぼくとしてはもっと行ってたいし、継続参戦したいと思っています。
自:表彰台にどんどん乗ったりしたらその可能性が広がる、ということかな?
廣:表彰は早く乗らないといけないですね。
自:まわりのライバルも、そうやって出てくるのがいますね。
廣:はい、いるんですよ。10番、9番くらいを走ってて、1日だけぽんと表彰台に乗るケースはぜんぜんありえます。ひとつでも出せたらぜんぜんちがってきます。
自:7位に入ったとき、さらに絶好調だったら表彰台に乗ってましたね。あのときは、まだバリバリの絶好調じゃなかったんですよね。
廣:はい。ちがいました。
自:そんなたらればを言ってもしかたない、ということになるんでしょうけど、そういう可能性はいくらでもあるってことですね。

Photo:Pep SEGALES