大きな災害が相次いでいます。災害支援にトライアルは最適。しっかり腕を磨きましょう。

いつまで穴を空け続けるのか? 小川毅士の採点アプリ登場

中部選手権第9戦で、スマホによる採点入力実験がおこなわれた。日本では(世界選手権以外では)こういう方法で採点入力をやったことがなくて、今回も実験的運用だったんだけど、結果はほぼほぼ完璧に運用できて、問題点は出ず。まだもうちょっと実験の必要はあるだろうけど、早い時期に実戦投入ができるんじゃないかという収穫を得た。

この新システム、作ったのは小川毅士。ライダーと同姓同名のプログラマーさんではなくて、国際A級スーパーを走るオフロードパークシライ管理人の小川毅士だ。ライター稼業とトライアルパーク管理業のかたわら(三児の子育ても含む)、1年ほどかけてこつこつと作ったシステムだ。

アプリ制作者の小川毅士。夜っぴで移動してキョウセイに着いたのはほとんど一番乗り。

アプリ制作者の小川毅士。
夜っぴで移動してキョウセイに着いたのはほとんど一番乗り。

ここまでのいろいろは後で書くことにして、今回の実験はこの大会主催の岩田稔さんの快諾で実現したものだ。家の中でテストしても実験はできるが、現場での実験は貴重だ。今回は従来の公式戦リザルトシステムを動かした上で、この実験システムをダブルで運用することになった。このシステムの専従スタッフは、速報チームと位置づけられていて、公式戦のメインとサブのオブザーバーといっしょに、3人目のセクションスタッフとしてお仕事をする。

ライダースミーティング、オブザーバーミーティングに先がけて、スマホ扱いをしてくれる8名さまに使い方を伝授する小川毅士。使い方は簡単だったっぽい。

ライダースミーティング、オブザーバーミーティングに先がけて、
スマホ扱いをしてくれる8名さまに使い方を伝授する小川毅士。
使い方は簡単だったっぽい。

当日は、8セクション8人のスタッフだけ別途ミーティングをして使い方の確認をした。特別ミーティングは10分ちょっとで終了。こんなんで大丈夫かなぁとどきどきだったけど、結局それは杞憂に終わった。受け付けに来たライダーには、採点カードといっしょにNFCカード(クレジットカードくらいの白いカード。世界選手権では全ライダーが持っているから、知ってる人も多いんじゃないかと思う)を渡して、今日は速報の実験をやるから、すまんけど採点カードとNFCカードを両方出してくださいとお願いする。ライダーにはちょっとめんどくさい思いをさせる実験となった。ごめんなさい。

受け付け時にライダーのゼッケンやクラスを入力したNFCカードを渡す。ライダーはパンチカードの代わりに(今回は二つとも)持って走ることになる。

受け付け時にライダーのゼッケンやクラスを入力したNFCカードを渡す。
ライダーはパンチカードの代わりに(今回は二つとも)持って走ることになる。

いろいろ事前に検証はしたけど、実際に使うと不具合が出る可能性はある。小川毅士本人はだいじょぶんちゃう? と自信たっぷりだったが、ほんとにだいじょぶかな? でも、勧められるままに試合を走るという。地方選手権のIAクラスはお客さんで公式戦(公認大会)ではないし、採点システムに大きなトラブルが出たらセクショントライはすっ飛ばして、リタイヤでもしてもらって対応してもらうお約束だ。

白いのっぺらぼうがNFCカード。一度登録すれば一年間一人のライダーが使い続けることもできるし、返してもらって中身を空っぽにして再利用もできる。MFJが売ってる防水スコアカードよりは高価だけど、あっちは使い捨てだから、1日3ラップもすればこっちの方が安くなる。スマホの画面はライブリザルト。FIMのライブリザルトは、スタート前は空っぽだけど、こちらはエントリーしているライダーの名前だけは表示される仕様。こっちのほうがわくわくできるんじゃなかろうか。

白いのっぺらぼうがNFCカード。
一度登録すれば一年間一人のライダーが使い続けることもできるし、
返してもらって中身を空っぽにして再利用もできる。
MFJが売ってる防水スコアカードよりは高価だけど、あっちは使い捨てだから、
1日3ラップもすればこっちの方が安くなる。
スマホの画面はライブリザルト。
FIMのライブリザルトは、スタート前は空っぽだけど、
こちらはエントリーしているライダーの名前だけは表示される仕様。
こっちのほうがわくわくできるんじゃなかろうか。

ということで、毅士親分はライダー側から検証するという大義名分を遂行すべく、当職は8セクションをつらつら歩いて様子を見ることにした。生理的ご用事で離脱したいスタッフの代わりに何回か採点入力もさせてもらった。全体的に、たいへんスムーズだった。あまりにスムーズすぎて、実験としてはつまんないくらいだ。

トライを終えた小川毅士選手。自分のスコアをスマホの画面で確認して納得しているの図。右側にスマホ、左側にパンチャーがいるけど、将来的にはスマホ係だけになるハズ

トライを終えた小川毅士選手。
自分のスコアをスマホの画面で確認して納得しているの図。
右側にスマホ、左側にパンチャーがいるけど、将来的にはスマホ係だけになるハズ

いま使っているスコアカードは、穴を空けてスコアを記録する。パンチでカードに穴を空けるのは、実はけっこうむずかしい。クリーンなのに5点に打ったり(どっちも端っこだから)その逆だったり、隣同士の1点と2点、2点と3点の場所をまちがえたりのミスはままある。完全になくすのは無理ってもんなので、ライダーは必ず自分のカードを確認しろと規則にも明記されてる。パンチ係は穴を空けるのに一生懸命にならざるをえず、ライダーといっしょに確認したりする作業まで、配慮が届かないことも多いのは否めなかった。

このシステムなら、画面だけを見て作業が完了する。ライダーの名前も確認できるし、減点数も数字を見ながら選択できる。このシステムが直感的で新しいというより、01235の数字を記録するのに、直径2mmほどの穴に情報を託すこれまでのシステムが無理くりだったのかもしれない。

ジャージ越しに入力している。ていねいにやってるからジャージを引っ張っているけど、カードの位置さえつかめれば、もうちょいスマホを離しても入力できる。

ジャージ越しに入力している。
ていねいにやってるからジャージを引っ張っているけど、
カードの位置さえつかめれば、もうちょいスマホを離しても入力できる。

カードを見せてタッチしてもらうのが儀式だから、最初はジャージの中にしまったカードを引きずり出して提示していたライダーも、セクションを一つ二つ走った頃には学習して、おなかにカードを入れたまんまタッチしてもらうようになった。カードと端末の間は少し隙間があっても大丈夫らしく、ジャージ越しでもぜんぜん問題なかったのだった。

実験だから、使いにくい、うまく動かない、こんなんじゃダメだ、という意見が殺到して、将来に向けてもっといいものをつくる材料集めになるかなと思っていたけど、問題はほぼなくて、ちょっと拍子抜け。本来なら本部にいてトラブル対策に走り回っているはずの小川毅士親分も、結局8セクション3ラップを走りきって、久岡孝二に次いでIAクラス2位となっていた。他のみんなより1時間も早くゴールしてきたのは、やっぱりアプリの仕上げが気になったからかもしれないけど、これならじっくりトライしても問題なかった。

今回は8セクション3ラップの同時オープン形式だった。第1セクションから順番にトライしたらどうだろう、雨の日はどうだ? 今回はスマホ専属の係がいたけど、採点兼任だとどうだろう? スマホ持ってない人に突然やらせたらどうなるだろう?(ふだんからパンチを持って歩いてる人はいないから、スマホ持ってない人にやらせるのが条件としては公平だったりして)などなど、検証したいことはまだいっぱいあるけど、ひとまず、大筋では問題なく使えることがわかってしまった。次は細かい修正をしつつも(実は今もやってます)さらなる実験や実戦投入をいつやるか、が喫緊の課題となってきた。

パンチカード。セクションごとに一つ、その他にも10個弱の穴が開いて、クラスや選手、ラップを区分できるようになっている。

パンチカード。
セクションごとに一つ、その他にも10個弱の穴が開いて、クラスや選手、
ラップを区分できるようになっている。

たぶんだけど、入力マチガイはパンチよりも格段に減る。ライダーは自分の減点を確認する必要はあれど、現状ではオブザーバーが入力しにくいのと同じく、ライダーもパンチの確認はむずかしいはずで、たぶんほとんどのライダーは確認なんかしていない。でも目の前に数字が出てくれば、確認もしやすい。このシステムを使うだけで、いろんなマチガイが解消される期待はある。

なにより、ライブ速報ができる。1ラップごとではなく、セクションを終えるごとに点数がみんなに明らかになる。わかりやすい。パンチカードを見ながら自分のスコアを確認するより、たぶんこっちのほうが見やすい。電波がないと速報機能は生きないから、これは今後の大きな課題になるけど、採点はできるから、採点システムとして、電波がないのは致命的な問題ではないのかもしれない。

NFCカードは、今後はパンチカードに変わって、なくしちゃいけない、ライダーの大事な証明書になっていくんじゃないだろうか。

NFCカードは、今後はパンチカードに変わって、なくしちゃいけない、
ライダーの大事な証明書になっていくんじゃないだろうか。

アプリの準備は(ほぼ)整った。トライアルが採点カードに穴を空けたりペンで数字を書いたりする時代から脱却する日はいつになるだろうか。

<読みたい人だけ読んでちょうだいの、補足>

速報と本部発表の結果を見比べている小川毅士。ライダーのかっこうをしているけどアプリ制作者としてのお仕事。結果には、わずかなちがいがあった。スマホの入力まちがいかパンチのうちまちがいか、その両方か、もはやわからない。もちろんルール上、正式結果が正しい。

速報と本部発表の結果を見比べている小川毅士。
ライダーのかっこうをしているけどアプリ制作者としてのお仕事。
結果には、わずかなちがいがあった。
スマホの入力まちがいかパンチのうちまちがいか、その両方か、もはやわからない。
もちろんルール上、正式結果が正しい。

世界選手権が、紙に穴を空けて採点を記録する方式から、電子端末を使うようになったのは2017年からだ。この年からトライアルGPという名前ができて、トライアルがいろいろ(よくも悪くも)近代化された。タブレット採点は、その目玉でもあった。ちなみに、そのときのニュースが https://www.shizenyama.com/news/21865/ です。

あれから10年がたって、日本ではいまだに紙に穴を空けて採点を記録している。システムは世界選手権で実証済みだから、にほんでもつかわせてね、とお願いすればいいんだけど、まずお金はかかりそうだ、加えて言語設定は大丈夫か、日本語しか読めない人に使えるのか、日本独自のルール設定が出てきた時に対応できるのかとか、たぶんいろんな理由があって、このシステムの採用が見送られている。FIMが世界選手権で使っているものの他に、汎用でどの国、どの大会でも使えるシステムもあって、すでに商用利用されている。国内選手権では、このシステムを使っている大会が多いということだ。日本語も選べるようになっているから、じゃ、使えるんじゃないかとも思うけど、翻訳モノには限界(多くの日本人に、アルファベットアレルギーがあるということかもしれないけど)があるから、日本人が作ったアプリへの安心感は大きいと思われる。将来にわたって管理してくれるのかの不安は、いまどきどんなパソコンソフトでもあるけど、日本人がやってるとなると、それもちょっと安心。


スコアカードを一瞬で読み取るカードリーダー。こういうのをMFJが作って主催者に使ってもらっていた時代もあったのだ。RS-232C接続なので、今どきのパソコンにつなげるのはたいへん苦労する上に、壊れたらパーツがなくてもうなおせない。

スコアカードを一瞬で読み取るカードリーダー。
こういうのをMFJが作って主催者に使ってもらっていた時代もあったのだ。
RS-232C接続なので、今どきのパソコンにつなげるのはたいへん苦労する上に、
壊れたらパーツがなくてもうなおせない。

今、MFJが選手権で使っている採点システムは20世紀の頃に作られたもの。ここ数年で少し進化作業が施され、MFJサイトから誰でもダウンロードできて誰でも使えるのは素晴らしいけど、基本的には古いソフトだ。現状でも、たとえば同点同スコアの場合勝負の鍵となる競技時間が結果表に出てこない。アプリを使うシステムは、全セクションの入力時間が1/100秒単位で刻まれて、結果表にも出てくる。なんなら世界選手権みたいに、ラップの途中でタイムコントロールしたいとなっても、運用は簡単にできるはず。

時間を正確に記録するために、最近の選手権ではタイムレコーダーを使う大会も多い。スマホ採点だと、時間は自動的に記録される。

時間を正確に記録するために、最近タイムレコーダーを使う大会も多い。
スマホ採点だと、時間は自動的に記録される。

作者の小川毅士は、このアプリを1年前の今ごろ(和歌山・湯浅大会が終わった頃)から作り始めた。和歌山・湯浅大会で採点トラブルがあって結果が決まらず、やきもきしていた表彰式が無事に開催された頃には、毅士アプリはだいぶカタチになっていて、一部の人には自慢していたもんだったけど、そこから先、送られてきたデータを集計して順位をつけ、同点の場合はどうするとか、スマホ持ったオブザーバーがおしっこ行っちゃったらどうしようとか、いろいろ仕様をまとめなきゃいけないのに時間がかかって、ようやく今になって実験ができるところまでカタチがつくられた、というところだ。今回の実験結果を見ると、完成度はいたって高いようだ。1年もかけてよく仕上げた、というべきか、たった1年でよくぞここまで、というべきか。いずれにしても、すごい。

今回はオブザーバーさんの手持ちのスマホを使って、通信もオブザーバーさんの契約分を使わせてもらった。計算したら、1日採点をして、写真を1枚送るより通信量は少ないくらいだった。何ケタかの数字を送るだけだからそうなりますね。スマホは本来主催者が用意すべきだろうけど、使い勝手がいろいろだから、自分のスマホが使えればその方がいいかもしれない。もちろん、主催者は予備としても何台か端末を持っておくべきだろうけど。

ともあれ、アプリの準備は(ほぼ)整った。トライアルが採点カードに穴を空けたりペンで数字を書いたりする時代から脱却する日はいつになるだろうか。

スマホの採点は、みんなハッピーとのことです。

スマホの採点は、みんなハッピーとのことです。