トライアル・デ・ナシオン(TDN)2026は、9月27日、スペイン北部のアルテイショで開催された。いま、TDNには4つのカテゴリーがあるが、それぞれ優勝は
ワールドクラス:スペイン
女子ワールドクラス:イギリス
インターナショナルクラス:ノルウェー
チャレンジクラス:ドイツ
となった。日本はインターナショナルクラスで3位表彰台を獲得した。

インターナショナルトロフィー表彰式@Future7Media
日本チームのライダーは廣畑伸哉(22歳・出場3回目)、黒山陣(17歳・出場3回目)、武田呼人(24歳・初出場)の3人。これに、アシスタントとしてJordi Crespi(ジョルディ・クレスピー。昨年に続いての代表チーム入り。廣畑のアシスタント)、黒山陸一の二人が3人のライダーのサポートをし、監督兼戦略マネージャーとして藤波貴久、チーム団長は小谷徹という布陣で戦った。

チームウェアはRSタイチ製、チームカラーのヘルメットはアライヘルメット。
ライディングウェアはそれぞれのライダーが契約するウェアメーカーが
日本チームの統一デザインで作ってくれた。@Future7Media
2023年からインターナショナルクラスへと指標を定めた日本チームはその参戦初年度で勝利(小川友幸・小川毅士・氏川政哉)、2024年も勝利して2連勝を達成(小川毅士・廣畑伸哉・黒山陣)、同じメンバーで3連勝を狙った2025年はアメリカに惜敗して2位となっている。

武田呼人。全日本同様、ファクトリーマシンに乗る。@Future7Media
2026年は廣畑、黒山の世界フル参戦組に、全日本ランキング2位の武田呼人が加わり、25歳以下の3人による日本チームが誕生した(ランキング1位から代表選手の打診がされ、マシンの用意や輸送などの条件が合わない場合、次点のライダーに代表の座が譲られていく)。

ノルウェーの強さの中心的存在。ソンドレ・ハガ。@Future7Media
今年のエントリーの顔ぶれを見ると、とにかくノルウェーがぶっちぎりに強い。エースのソンドレ・ハガはGPクラスに参戦中(ランキング9位)。このクラスには他にGPを走っているライダーはいない。他の二人、ジャランド・グンバルセンはランキング14位、ジョー・サンドビックが16位。3人合わせての戦闘力は、とにかく高い。
対して日本は、世界選手権では廣畑の成績がもっともよくてランキング15位。ノルウェーの二人目、三人目といい勝負。黒山はランキング17位と、奇しくもノルウェーと日本の4人でランキング14位から17位までを独占していることになる。武田は日本しか出ていなくてランキング26位なので、ちょっと評価はむずかしい。
アメリカはアレックス・マイヤーズだけが去年の優勝メンバー。リオン・ランドはT3チャンピオンからT2ランキング12位と好結果を残しているが、マイヤーズと、もうひとりのアレックス・ニーデラーは、アメリカ国内ではもちろんトップクラスの実力を持つも、世界の舞台では実績がない。しかし世界実績がない3人が組んで、1年前には勝利をつかんでいるのだから、アメリカのポテンシャルはあなどれないのだ。

廣畑伸哉。@Future7Media
日本の3人は、よい仕事をした。3位という結果にも、セクションごとのスコアにも悔しさはにじみ出ているが、去年敗したアメリカを振り切っての表彰台獲得だから、賞賛に値する結果だった。

黒山陣。ウェアとヘルメットがちがうだけで、あとはいつもの世界選手権といっしょ。@Future7Media
ノルウェーは、序盤の5点(一人がクリーン、もう二人が二人とも5点、あるいは3人が5点、2点、3点だった場合)が響いて途中まで日本が高ポジションをキープしていたが、30セクションをひたすらきっちり走りきって最後には勝利をもぎ取った。ハガがチャンピオンをとった時の戦い方そのまんまのようだ。
しかしノルウェーの強さは予想通りで、今回想定外のがんばりを見せたのがドイツだった。ドイツの3人はいずれも世界を舞台に戦っているが、ロドニー・ベレイタが最近ようやくポイント圏に入るようになってランキング19位、ジョナサン・ヘイデルは10位が1回、もうひとりのポール・レウスーシェルはついぞポイント獲得なしで2026シーズンを終えている。ライダーの実績から見れば、ノルウェーには遠く及ばず、日本にもとうてい勝てない3人組だ。
しかしインターナショナルトロフィーは、トップカテゴリーのチームだけが出るクラスではない。このクラスの下位チームの走りを見ると、日本の国際B級のポイント圏外の選手が、国際A級のセクションに挑んでいるような印象を受ける。そういう人たちにも安全に大会を走ってもらわないといけないから、むずかしすぎる、危険すぎるセクションは基本的に出てこない。それが、圧倒的実力を持つノルウェーが、ぶっちぎりで勝てるわけではない試合構造を演出する。
もうひとつ、なんだかんだと30年近くTDNを見ていると、チームによっては、個人が何人か合わさったのではない強さを発揮することがある。うんとレベルちがいの話をすると、一人で練習しててもいけないのに、スクールへでかけていって先生におだてられたりアドバイスをもらったりすると、するっといけてしまったりする。そんな実力の引っぱり上げが、TDNチームの中でも発揮されていることがあるような、そんな気がしてしかたない。もちろんそれは、国によってそれができる国とそうでないがある。今回のドイツは、そんな上昇気流に乗って、2位表彰台を獲得したのではないだろうか。
チームの協働作業は、言うは易し。3人がライディングを見守っていると時間が足りなくなる。各々が勝手に走ったら、チーム協働ではなくなる。その折り合いをうまくつけるのが、TDNでの戦いのむずかしいところだ。過去のTDNでは、情報収集役が圧倒的に不足していると感じたが、今はスマホで(ある程度)状況が把握できる時代になった。そして藤波貴久監督が采配をふるい、選手に指示を出していることで、強いチームを演出できているのだと思うが、後方バックアップ体制は、ヨーロッパの国々に対してはもちろん、アメリカやオーストラリアなど地球の反対側から遠征してくるチームに対しても、まだまだぜーんぜん劣っているのが現状だ。
さてノルウェーとドイツは同点、勝負はクリーン数差でついている。減点を争う場合は、二人がクリーンすれば3人目はクリーンでも5点でも結果は変わらないとされているが、最後に同点になった場合は、クリーン数の差で勝負が決まるから、時間の許す限りは3人目もクリーンを狙っておく必要があるのだった。

チャレンジクラスの表彰式。左から、スペイン、ドイツ、チェコ。このクラスは若手ばっかり。@Future7Media
ドイツは、今年TDNチャレンジで初優勝、女子クラスでは5位に入っている。女子クラスに出場した選手に、ソフィア・テル・ヤン・レウスーシェルというのがいるが、これはドイツチームのポールとご夫婦だ。去年あたりに結婚したということで、彼女自身も元から親子で世界選手権に参戦していた。そしてこのソフィアの親父は、TDNのインターナショナルトロフィーを4回も獲得しているドイツのトップライダーなのだった。

中盤から雨が降ってきた。雨に翻弄されるチーム、動じないチームあり。@Future7Media
今年もTDNの世界選手権クラスは、スペインの圧勝だった。イギリスがヘミングウェイ兄弟とハリー・ターナーという若手にシフトして2位、GPライダーのマテオ・グラタローラを擁するイタリアが、かろうじてフランスを下して3位に入る結果となったが、TDNがおもしろいのは、こういった世界のトップだけでなく、地球の裏側から(もちろん日本もそのうちのひとつだけど)いろんな国々がやって来る。そんないろいろを一堂に見られるのが、TDNの大きな魅力だと思う。

スペインチームのライダー3人(左からハイメ・ブスト、トニー・ボウ、ガブリエル・マルセリ)とアシスタント。@Future7Media
女子は引退したエマ・ブリストが加わって勝利。実績的には去年勝利したイタリアが楽勝かと思ったけども、世の中にはやっぱり楽勝はなかった。イタリアは残り4セクションで一気に9点を失ってトップの座をイギリスに譲り渡してしまった。世界チャンピオン、ベルタ・アベランは孤軍奮闘。スペイン女子は、意外に優秀な選手が代表選手として集まってこずで、2位に離されての3位。フランスは、必要最小限の二人体制で4位を得た。

女子世界選手権表彰式。左からイタリア、イギリス、スペイン。@Future7Media
女子クラスの優勝スコアは7点、最下位は264点。その開きは37.8倍。インターナショナルクラスは、優勝6点、最下位274点、その開きは45.7倍にもなっている。世界のトライアルは、層が広い。

世界選手権クラス表彰式。左からイギリス、スペイン、イタリア。@Future7Media
