雪は降ったって春は春。シーズンは開幕してます。えいえいおー

おそば

09天山のおそば

 みそ汁がないと飯が食えないという方がいらっしゃる。特に朝ご飯。納豆にシャケ、焼き海苔に梅干しときたら、みそ汁がなければ一日を迎えられないではないか。
 世の中には、みそ汁に命をかけている方もいっぱいいらっしゃる。食事は、みそ汁に始まりみそ汁に終わるものなのぞな。
 でもみそ汁を作るのはめんどくさい。それに、みそがない時もある。みそ汁の具に困ることもあるのだ。みそ汁に始まりみそ汁に終わるのだから、こういうときはとても困る。


 またぞろ、イタリアのマリオの話だ。どうもぼくのガイコクの話は、マリオの話ばっかりで、いまいちサンプルが少なくて薄っぺらな気がしてきたけど、まぁしょうがない。
 マリオは梅干しも納豆も食すけれども、みそ汁が大の苦手だ。このドリンクはくさっているという。くさっているというなら、納豆だってくさっていると思うのだが、パスタとガーリックとワインで育った味覚には、みそはくさった味なのかもしれない。まぁただし、イタリアで食べさせられたもので、日本人的にくさっていると思ったものはなにもないし、対して初めて納豆を食べたときには(それがいつだかは思い出せないし、そのときの記憶もないけど)、異様な香りよとは思ったから、日本のほうがゲテモノを食べているという点については納得しなきゃいけないかもしれない。
 ともあれ、イタリア人のマリオはみそ汁が飲めない。ときどき日本の旅館に連れていくと、みそ汁飲めないんだったらどうしよう、すまし汁じゃだめかしら、お吸い物にしようかしら、でもこのご飯にお吸い物もないわねー、なんて話になるんだけど、イタリア人に日本食の和なんてわかるまい。みそ汁だめなのはやつの勝手だからほうっておいてください、なんなら、水でも持ってきてやってください、なんてお返事しておく。マリオも、そんな感じであきらめている。
 ふと思った。イタリアでは、みそ汁に始まらずにみそ汁に終わらないのだけれど、どうしていたっけかな。
 何日かマリオの家に滞在して、簡素な独身男生活になじんでみたところ、やつの朝飯はカフェラテとビスケットてな、簡素なもんだった。ほんとはカプチーノが飲みたいらしいんだけど、カプチーノはわりと本格的なマシンが必要で、インスタントのネスカフェでは、カフェラテっていうか、日本風のミルクコーヒーがせいぜい。コーヒーにはめっぽううるさいマリオだけど、家ではわりと頓着なくインスタントコーヒーを飲んでいるのが新鮮だった。海外事情も、家の中に入り込むと、またちがった一面が見える。
 マリオはサラダを食い終わると「これは行儀悪いんだがね」といいながらお皿に残ったオリーブ油でパンを食べる。なんとなくうまそうなんで、以来まねをするようになった。特に家でこういうことをすると、お皿を洗う手間が少し省ける。
 これと同じ要領で、朝ご飯のときにはミルクコーヒーにビスケットを浸している。みそ汁が飲めないくせに、やってることはおかゆや雑炊とかわりない。あるいはネコマンマだ。
 そうか。やつらのソウル汁はコーヒーなのか。コーヒーは食後とかに飲むものだから(特にあちらでは、食前には絶対に飲まないらしくて、日本のファミリーレストランにいって、まっさきにコーヒーが運ばれてきたとき、最初、やつらはいすから転げ落ちそうになっていた)お食事中のみそ汁の代わりになるものではないと思っていたけど、そういえば、イタリア人にとってはカプチーノ、エスプレッソあたりがソウル汁なのかもしれないなぁとおもいあたったのでありました。
 じゃ、そういうわけで今日の朝ご飯は納豆とコーヒーでいいか、とむりやり納得してみましたというしょうもないお話でした。

09天山

 しょうもない話ばっかりじゃなんなんで、わが川内村にできた新しいお蕎麦屋さんの話を少し。2軒ある旅館(2軒しかない)の1軒、小松屋さんの裏に、古民家を移築して作ったのが「天山」。更級そばと地元で作ったちょっと黒くて甘みのあるそば粉でつくった田舎そばのふたつから選べる。11時30分から2時30分まで営業。小松屋さんのうしろに隠れているけど、隠れそばというほどわかりにくくはありません。うまいそばが食べられるようになって、幸せ。うまいそばがあれば、始まりも終わりも、いらない。
●蕎麦酒房「天山[
0240-38-2033水曜定休