雪は降ったって春は春。シーズンは開幕してます。えいえいおー

アジア選手権

会長あいさつ

 24日のMFJランキング認定表彰式で、恒例のMFJ会長のごあいさつ。今年は、ちょっとおもしろい発表があった。表彰式では、まずまっさきに会長さんのごあいさつがある。ここで、MFJの活動報告と、次年度への計画などが披露される。


 ごあいさつは、ライセンス会員が何人増えたとか減ったとか、そういうのもある。MFJにとってはとても重要だろうけれども、もうしわけないけど、たいしておもしろいものではない。もちろんMFJの重要な活動だから、この報告は不可欠だ。
 次なるは、これからどうするのだという話。「活性化に務めてまいります」という抱負は定番の未来のビジョンだけど、これは政治家が「検討して善処し実現に務めます」みたいなもんで、あんまり現実感がない。
 今回「おっ」と思ったのは、日本がリーダーシップをとって、アジア選手権の開催に尽力する方針であるという主旨説明だった。残念ながら、会長のビジョンにあるのはロードレースだったけれど、手をつける順番はどうでもいいような気がする。
 たとえば、トライアルにもヨーロッパ選手権というシリーズがある。世界選手権に比べると、当然レベルはちょっと低くて、その分参加しやすい。世界選手権がアメリカ大陸に進出する以前は、世界選手権はヨーロッパ大陸でのみ開催されていたから、世界選手権とヨーロッパ選手権の区別はなかった。日本のプロ野球の一軍と二軍みたいな感じで認識されることが多かった。事実、ヨーロッパ選手権には、世界のトップライダーは参加できない。ヨーロッパ選手権に参加できるのは、世界ランキング15位以内になったことがない者に限るという条件がある。世界選手権に対して、よい意味での二軍としてのポジションがある。
 ところがただのサブリーグではない。なぜヨーロッパ選手権という名前がついているかというと、それがヨーロッパ人種の選手による選手権だからだ。FIMのカテゴリー分けによると、日本はアジアに分類される。さらに中東の地域もアジアである。おととし(シリーズとしては2004年)、香港でインドア世界選手権が開催された時、アジアで最初のインドア世界選手権と思ってしまったけど、カタールで開催されたことがあったから、香港ははじめてではなかった(これは、藤田秀二さんが指摘してくれていた)。ヨーロッパ選手権には、実は本来、ヨーロッパ圏外の人は参加できない。
 ヨーロッパの人は、いい意味で融通を利かせる人々なんで、これまでも黒山健一がヨーロッパ選手権に参加、その年のチャンピオンとしのぎを削ったこともあった。でも、やっぱりアジア人だから、ランキング2位にはならず、結局賞典外だった。今もFIMの親分たちに日本人とヨーロッパ選手権について問いただすと「日本人がヨーロッパ選手権に参加するのは大歓迎だ。もちろん賞典外だけど」と答えてくれる。
 では、日本人にとって世界選手権のサブリーグはなんなのか。そのものずばり、アジア選手権を開催するしかない。不孝なことに、今現在アジア選手権が開催されていないのは、アジアのスポーツ協会がそろってさぼっていたとしかいいようがない。
 もちろん、今のアジアを見渡してみても、日本の選手と渡り合える選手を擁する国なんかない。アジア選手権が開催されても、日本人選手がぶっちぎりになるだろうし、わざわざ遠征していくことを考えると、なかなか普及しないかもしれない。でも、あらゆるスポーツで、こういう地域ごとのシリーズ戦は不可欠だ。アジア選手権は、日本のモータースポーツの将来を築く上でも、きっと重要になってくる。
 ここで余談。最近、日本の歌手が韓国や中国にでていって人気を博すことが多いという。でもわざわざアジア進出なんていわなくたって、日本は立派なアジアである。最近思うのは、日本はいまだに鎖国が続いているということだ。だから自分たちがアジア人であるという認識がないんじゃないか。でもこれは単にことばの使い方の問題かもしれない。話をもとに戻します。
 ここで、日本を発信元として、すでに大きな実績を作っている仲間がいる。バイクトライアル(自転車トライアル)だ。キーマンは世界バイクトライアル連盟の会長にして、長く日本のバイクトライアル協会の会長を務めた平野博さん。平野さんは日本に世界選手権を誘致し、長年に渡って開催を続けている。さらに平野さんは精力的に活動を続け、シンガポールなどでも国際大会を開催した。今バイクトライアルでは、これを拡大して、アジア選手権を定着させるべく活動を続けている。
 当面は、日本はアジア全体の技術レベルを引き上げる役となるのかもしれないが“外国”で試合をする経験が圧倒的に少ない日本人にとって、食生活や人間のかたちがそれほど変わらないアジアの中で“海外試合”を経験するのは、けっしてむだにはならないはずだ。
 バイクトライアルは、オートバイに比べてマシンも小さいし、環境的にも試合の開催は容易に思えるかもしれない。しかしなんにしろ、大きな大会を開催するのは簡単じゃない。バイクトライアルは“小さな政府”ならぬ“小さなスポーツ協会”で運営されている。オートバイのトライアルも、バイクトライアルの小さい運営を見習えるといいと思うんだけど、どうかなぁ。
 MFJ会長が「私の夢物語」と言うとおり、アジア諸国がFIMの加盟団体となり、まずアジアで国別対抗戦ができればすばらしい。もしかして、会長の夢にトライアルが入ってないなら、ぜひその夢は、まずもっとも小さな運営が可能なトライアルで実現させてほしいと思うのですが、だめかな?