雪は降ったって春は春。シーズンは開幕してます。えいえいおー

モン・サン・ミッシェル

 デ・ナシオンの帰りに、モン・サン・ミッシェルへ行ってきた。杉谷に、あそこは行かなきゃだめだよと言われて、そんなもんかいなとでかけてきた。
 中世以来、カトリックの聖地として多くの巡礼者を集めてきたランスで最も人気の観光スポットの一つ、なんだそうだ。「江ノ島みたいなものかな」なんて評価もあって、さて、どんなもんなんだか。例によって、事前の知識は江ノ島以外にはなにもなく、出かけてみる。


 日曜日の朝まで、早起きしてせっせと会場に出かけていたんだけど、日曜日の晩にフロントのおばちゃん(おねーさんかもしれない)に「明日の朝は早い? 朝ご飯は何時?」と聞かれて「あしたは起きないかもしれないから、ゆーっくりでいいです(なんて流ちょうにしゃべったわけじゃなくて、Tomorrow, no schedule. no problem for breakfast.と言っただけ)」とお返事したとおり、のんびり起きて朝ご飯をゆっくり食べて(ショコラを3杯お替わり)、それから荷物をまとめて出てきた。レンヌからモン・サン・ミッシェルまでは高速道路でほぼ一本で、ざっと1時間の距離。それでも、到着したらもうお昼だった。
 丘の頂上をすぎると、目の前に大西洋(正しくはサン・マロ湾)が広がり、沖あいにお城が浮かんでいる。それが目指すモン・サン・ミッシェルだった。

 クルマを止めるのに4ユーロ。そこからてくてくと歩いていくと、高橋摩耶親子に出会った。彼らはもう見物が終わって、これから昼飯を食べてビスケットを買ってTGVに乗ってパリへ帰るという。立ち話している間にも、観光バスが続々と到着して、日本人観光客を吐き出していく。日本人ばっかりじゃなくて、ドイツ人やアメリカ人も多いんだけど、日本人は観光バス以外ではまずやってこない。今日は、ぼくと高橋親子以外にも、たぶん松下一家や萩原一家もやってきたはずだから、例外的な日だったはず。
 中はおみやげ屋さんとかレストランとかがあって、寺院はさらに上ったところにある。Mont-Saint-Michelって名前の通り、ここは山なんだね。「ミッシェル寺院山」。自然山もフランス語でいうとMont Natureでしょうか。
 で、ぼくのへそ曲がりも対したもんで、ここまできたってのに、お寺がぜんぜん見たくなくなった。だいたいぼくは、名所旧跡をみても、感激したことがないんだ。実はそれよりも、来るときに通ってきた、海を望める丘のほうが興味がある。たぶん、観光客がうじゃうじゃいるってところがだめなんだね。今さらぼくが見なくたっていいんじゃないかって気がしてしまう。あぁ、我ながらなんというへそ曲がりなんだろう。
 で、山の上から浜に降りて、浜づたいに一周してみた。潮の満ち引きが激しいらしいから、この浜は、満潮時にはすっかり水没してしまうそうな。で、遊んでたひとが海に飲まれたりもするんだそうな。そういうことは帰ってきていろんな人のサイトを見て初めて知った。大西洋の藻くずとならなくてよかった。
 島の周囲は砂浜だから、海水を含んでいてずぼずぼと埋まってしまうなコンディションだったけど、けっこうな数の人があるいているらしく、人が歩いたあとはわりと締まってかたくなっている。長年の積み重ねかと思ってたけど、毎日水没してるみたいだから、毎日たくさんの人が歩いているのかもしれない。人には会わないけど、実はぼくみたいなへそ曲がりも少なからずいるのだなと思うと、それはそれでちょっとうれしい。
 と、階段を上がって岩の向こうにでたら、男がひとり慌てている。と、さらに岩の陰から女がひとり立ち上がった。どうやら岩の陰で女性が作業中だったらしい。なにをやってるんだろうと思ったけど、通り過ぎてから気がついた。いい年のカップルだったから、興味もなく通り過ぎてしまいました。実はぼくも、さっき岩から大西洋に向かっておしっこをしたところだ。ロカ岬でもおしっこさせていただいた。これは儀式だ。
 島の一回りは、あっという間に終わっちゃった。けっこう小さな島なのだな。さて、もう一度中を見るかどうかと3秒悩んで、取って返してやっぱり丘に向かうことにした。

 丘には唐突に風車があって、寺院を見下ろしている。お天気があんまりよくなかったので、モン・サン・ミッシェルは霞の中に浮かんでいるんだけど、これくらいの距離から眺めた方が、この寺院は存在感があって、迫力がある。そうそう、丘を越えて、最初に寺院を見たときには、やっぱり「おぉー」と思っちゃった。その感動は、中に入っちゃったら見えなくなっちゃうのかもしれない。
 昼飯を食おうとメインストリートを走ったけど、このへんはいかにも観光地観光地したレストランが多くて、入るのに躊躇。道を変えて、パリ方向に進路をとった田舎道にでて、そちらで昼飯を食った。BMWのサイドカーのご夫婦といっしょにパーキングにはいる。彼らは今日はお泊まりらしい。
 お昼ご飯「本日のお皿」はムール貝の白ワイン蒸し。10ユーロで、ベジタブルスープに山ほどのムール貝とフリッツ(フライドポテト)。窓の外では、ときどき激しく雨が降っている。部屋の中にいると、雨もいいもんだと思えるときがあるから、勝手なもんだ。