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トライアルとは?

マインダーのお仕事(全日本九州大会から)

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世界選手権や全日本選手権では、ライダーの華麗なライディングテクニックに目を奪われるが、初めてトライアルを見る人にとって、新鮮な印象だといわれるのが、アシスタントの人たちだ。

この人たち、ヨーロッパではマインダーと呼ばれている。マインダーと辞書で引くと、用心棒ということになっている。チャイルドマインダーといえば保育士のことみたいだから、物騒な意味があるわけではないみたいだ。日本では、規則書にアシスタントと記載されていて、マインダーと呼んだりすると、アシスタントと呼びなさいと(一部の)役員さんの指摘を受けたりする。

マインダーのお仕事は多岐にわたる。アシスタントのほうがお仕事が軽そうだけど、用心棒といえば、ときには命を懸けてご主人を守みたいなニュアンスがついてくる。そういう点では、彼らの仕事は用心棒の方がよりふさわしい。ライダーといっしょにスタートして、オートバイにはスペアのハンドルをしばりつけ、背中には工具やスペアパーツでずっしり重たいリュックサックを背負い、セクションに入るごとにタイヤの空気圧をチェックし、そしてライダーがトライに入るや、危険なポイントに立ってライダーを守るために身を挺す。

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ということで、今回はその身を挺すマインダーさんたちの活躍をご覧ください。ところは九州熊本県、矢谷渓谷キャンプ場。試合の最後に設けられるSS(スペシャル・セクション)のふたつめ。橋の手前の欄干を外して、4メートルはあろうかという絶壁の上まで一気に駆け上がる仰天の設定。

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上級者によれば、離陸ポイントにはジャンプ台が設けられていて(といっても素人目には薄っぺらい岩が置いてあるだけにしか見えない)簡単に上がれるということだけど、高さはとんでもないし、おっかないし、とても簡単には見えないのだった。

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果敢にトライするのは加賀国光選手。今回、アシスタント登録していたのは荒木隆介。自身も国際A級で全日本選手権に参戦するライダーだけど、今回は初めてのアシスタント業を担当。ヘルメットにピンクの星がついている腕まくりをしている若者が荒木だ。

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ふつう、アシスタントは各ライダーに1人と決められている。アシスタントが1人のところと5人のところがあったら、そりゃ不公平だから。ただしこの場合、落っこちたらどうなっちゃうかわかんないから、なんとなくチームメイトやお友だちやご近所のよしみが集まってきて、ライダーを待ちかまえる。誰にでもできる仕事じゃないし、下手に手を出したらあぶない。

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そして加賀選手、見事に、いやまちがい、残念ながら失敗。マシンを放り出して飛び降りた。いやそのまま飛び降りたら、奈落の底に落っこちてしまう。ところが加賀選手は、マシンを放り投げながらも、ちゃんと見るべきところを見ていました。

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最初にマシンをつかんだのは誰だったのか、左端のひげのおじさんは藤原慎也のお父さん。すでに藤原選手のトライは終わっているのだけど、そのままセクション脇に陣取って、万一の際に備えている。オレンジのヘルメットは国際A級の平田雅裕、貴裕兄弟。フロントタイヤをつかんでいるように見えるのが兄ちゃんの雅裕で、右からつかみにかかろうとしているのが弟の貴裕。それでもマシンにまっしぐらに突進すると自分も落ちてしまうから、ロープをつかむなどして、自分の身も守ってます。貴裕のロープの端を持っているのは、平田家のお父さん。アシスタントのアシスタントだ。

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そしてなんとかマシンを支えることができた。ライダーはといえば、欄干につかまって、かろうじて落下を免れている。メインのアシスタントの荒木は、平田貴裕の向こう側で、マシンをスライディングキャッチしている。つかみやすいところで待っていたいところだけど、つかみやすいところは走りやすいところだったりもするので、これはなかなかむずかしいお仕事だ。

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欄干から生還した加賀選手も戻って、この頃になると笑顔も見えてくる。こんなおっかないことしながら笑っているところが、トライアルライダーって、不思議。緑色は、これからトライする柴田暁のアシスタントである、柴田お父さん。写真左端、立ち入り禁止テープぎりぎりのところでかぶりついている黒いお客さんがいますが、これもただのお客さんではない。数年前まで齋藤晶夫選手のマインダーをやっていてた、誰あろう、斉藤選手のお父さん。トライアルって、観客席にもこんなふうに関係者が潜んでいるから、あなどれない。このページだけでも、全部で4人のライダーお父さんが登場したことになる。

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ということで、一大スペクタルシーンが終了。お助け役を手伝ってくれた雅裕選手に加賀選手が「だいじょうぶ? ありがとう」と声をかけている。トライアル、みんなライバルだけど、みんな仲間。こういう友だちの輪も、トライアルの魅力の一つだ。

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