センセーショナルな大会だった。一文では語りきれないいろいろがあった。まず箇条書きで並べてみる。
・藤波貴久が優勝した。
・現役復帰ではなく、テストライダーとしての全日本参戦。
・マシンはプロトタイプのRTL ELECTRIC、電動マシン。
・藤波の全日本参戦は2003年SUGO大会以来21年ぶり。
・世界チャンピオンとしての全日本参戦は、これが初めて。
・RTL ELECTRICの開発責任者は、元IASライダーの斉藤晶夫。
・全日本に世界チャンピオンが参戦したのはこれが4人目。
・藤波優勝もあり、全日本ランキングに動きあり。
・アシスタントは長年藤波とチームを組んでいたカルロス・バルネダ。
藤波のスタートはIASの先頭。ランキングも今シーズンの獲得ポイントもないから、規則として当然の処置だが、ラインができていない状態から優勝を目指すという苦境の勝負となった。もっとも藤波は、一時トライアルGPで採用された、ランキングのいいものからスタートする時代に走っていて、一番スタートの経験もある。
第1セクションから華麗なクリーン、第2セクションも難関を1点のみで通過し快調な滑り出しだったが、後半セクションで失敗が続き、1ラップ目は2位小川友幸に2点差のトップ。意外に接戦で2ラップ目を迎えた。
2ラップ目、コンディションに難があった小川が失点する中、藤波は修正してスコアも改善、10セクション2ラップを終えた時点で、2位に大差をつけて勝利を決めた。
このマシン、来シーズンなどについてはまったく未定(決まっているのかもしれないが発表はないし、どういう計画なのかも教えてもらえない)だが、今シーズンについては、このあと10月27日のSUGO大会への出場が決まっていて、そこの成績次第で(その時点でのランキング10位に残れば)シティ・トライアル・ジャパン にも参戦することになる。
ちなみに、かつて全日本選手権に参戦した世界チャンピオンは、バーニー・シュライバー(チャンピオンをとったのはブルタコ、日本に来たときのマシンはヤマハ)、ジル・ブルガ(同SWMとヤマハ)、マルク・コロメ(チャンピオンをとったその年にモンテッサに乗ってやってきた)。
RTL ELECTRICは、トランスミッションを装備しているが、何速だかは不明。少なくとも3速はあり、4速までセクショントライで使えるのではないか、という推測ができる場面もあった。ミッション・クラッチの上にモーターがあり、前面にバッテリーが鎮座するのはレイアウト的に先行各社のマシンとは異なる。走行音は、ヤマハよりも大きい印象だが、音量というより、音の質、音の出所がちがうかもしれない。
今回2位に入ったのは黒山健一。藤波がいなければTYEでの初優勝となったところだが「藤波貴久には勝てません」と自虐的感想をもらしていた。しかしこれで黒山はランキングトップ、4ポイント差で氏川政哉と小川友幸が同点で並び、残り2戦のタイトル争いに突入する。藤波はタイトル争いの主役ではないが、タイトルの行方に、重大な役割を任じるのはまちがいない。