Xトライアル、バルセロナ。毎年言ってる気がするけど、バルセロナは特別なXトライアルだ。Xトライアルはたいてい金曜日とか土曜日の夜に開催される。週末の夜のお楽しみにトライアルをどうぞ、というスタイルなんだろう。ところがバルセロナは、日曜日の昼間に開催される。夜のお楽しみじゃなく、その日はきっちりトライアルを楽しみなさいということなんだと思う。
さらにしかも、バルセロナは多くのトライアルメーカーにとって、地元大会になる。ホンダ・モンテッサにとって日本での世界選手権が大事だ、というのとおんなじだけど、日本メーカーはホンダとヤマハしかなくて、ヤマハは世界を舞台にはしていないから、母国GPで特別な思いを感じるのはホンダだけということになるが、バルセロナはモンテッサ、ヴェルティゴが地元中の地元だし、ガスガスもバルセロナに工場を建てたところだったし(どうするんだろう?)、フランスのシェルコ・スコルパも、ワークショップはバルセロナ近郊にある。ライダーだって、トニー・ボウを始め、バルセロナ出身者は多い。みんなにとって地元大会だから、ここで勝てば大喜びだし、応援してくれるご近所がいっぱいいるから、負けるわけにはいかないというプレッシャーもある。

出場できるのはいつものとおり、8人。毎回出てるノミネートライダーは5人。ボウ、ガブリエル・マルセリ、ハイメ・ブスト、T2チャンピオンのハリー・ヘミングウェイ、イタリア人のマテオ・グラタローラ。前年ランキング3位までとT2チャンピオンは欠かせず、国籍やマシンがなるべく偏らないようにと、いろいろ入りも難しい。それ以外の3人はその都度主催者が呼んでくる。今回呼ばれたのはヒューゴ・ディフレーズ(フランス・ベータ)と、あと二人はカタルニア州出身、アルナウ・ファレとミケル・ジェラベルト(バルセロナ出身)だった。

今回の顔ぶれのハイライトは、ジェラベルトだ。2025年、RTL ELECTRICでT2に打って出たトップライダーだが、2026年はいよいよGPクラスに進出することになって、その足がかりとしてのXトライアル参戦となる。ジェラベルトのXトライアル歴は、2024年に2度記録がある。ヴェルティゴでの参戦で、結果は6位と4位だった。
RTL ELECTRICは3シーズン目。藤波貴久の全日本参戦、2025年のT2、そして2026年のXトライアルと世界選手権GPクラス。1年目と2年目は見た目の変更は大きくなかったが、3年目の今年はけっこう大きく変わって登場している。電気マシンは見た目が変わらなくても中身がガラッと変われるのだが、2026年モデルは外観から変更が認められるから、よっぽど大きな変革があったのだろう。
しかしジェラベルトとRTL ELECTRICのデビュー戦は、ちょっと厳しいものになった。6セクションで競われるQ1(第1予選、という感じかな?)。ボウが第2セクションで1点を失ったのみで走り切ったのに対し、ジェラベルトは4つのセクションで5点。オール5点のディフレーズは廃したものの、6位には届かずの7位止まりとなった。ジェラベルトはT2にデビューした時も、文句なし優勝かと思われつつも無得点と、出だしが今ひとつだ。今回もそんな結末になってしまった。
Q1のトップはボウ1点、ブスト5点、マルセリ8点。この3人がそのままファイナル進出。4位はファレ18点、グラタローラ20点、ヘミングウェイ21点、そしてジェラベルト23点、デュフレーズ30点と続いたが、ファイナルに残れるかどうかはこの順位は関係がない。Q2(敗者復活戦)の4セクションで勝負がつく。
ここで本領を発揮したのがヘミングウェイだった。Q2の第1セクションでこそ5点となったが(5点だと時間換算で60秒となる。1点10秒、2点20秒、3点30秒)残る4セクションは全部クリーン。時間換算した合計スコアは2分46秒だった。ファレが3分26秒2、ジェラベルトが3分27秒9、グラタローラ3分36秒9、デュフレーズ4分2秒3と続いたが、ここで大事なのはトップだけ。あとは2位でも3位でも敗退が決定する。
Q2でファイナルに進出したヘミングウェイは自動的にファイナルを真っ先にトライするが、Q1でファイナルに進んだ3人はトライ順をスーパーポールなる4つのセクションで決定する。スコアの出し方はQ2といっしょで、減点を時間に換算してセクション走破タイムと合計する。
しかして、4セクション全部をボウがクリーンして、これは問答無用の一番時計になった。ブストが2点二つ、マルセリが5点一つ1点一つ。トライ順はヘミングウェイ、マルセリ、ブスト、ボウの順になる。

最後は難度を増した7セクションでの戦い。結果的には、第1セクションをボウがクリーンした時点で勝負はついていた。2位のブストと3位のマルせりは最終セクションまで勝負がもつれ込む接戦だったが、ボウは第1を唯一クリーン、第4を唯一1点で抜けて、8点差。まず大差で再びバロセロナを制することになった。

ブストはマルセリとの2位争いに勝利したが、その勝因は第4セクション。ボウが1点ついたところをマルセりも1点で抜けていたのだが、ブストはここをクリーンしてみせた。ブストの飛び抜けた才能ぶりは、メーカーのサポートが切れ、マシンの年式が古くなっても一つも陰るところがないようだ。
競合を相手にQ2を勝ち残ってファイナルに進出したヘミングウェイは、残念ながら今回はそこまで。みんながクリーンした第3はクリーンしたものの、他はオール5点で今回は4位ということに合いなった。しかしヘミングウェイは、7戦目にして5回目のファイナル進出。ルーキーの活躍の域を超えて、イギリスの大きな期待の星に成長している。
チャンピオン争いは、ボウの一人勝ち状態が続いていて、いつタイトルが決まるか、という興味に移りつつある。ブストとマルせりのランキング2位争いは僅差だから、こちらはまだまだ注目し続ける必要がある。それでも今シーズンの目玉商品は、なんといってもハリー・ヘミングウェイ。出鼻をくじかれたデビューとなったRTL ELECTRICでのジェラベルトは、なんとか挽回を図りたいところだが、Xトライアルはまず出場できるかどうかが最初の敷居となる。次のチャンスが早く訪れると、こちらも成長を見届けるのが楽しみになってる。
Women’s Trophy
バルセロナは、Xトライアルの中でも特別、インドアの華的存在だ。かつてはトライアルといっしょに、難セクションを走破するエンデューロ競技が併載されたこともあったが、ここ数年はトライアル競技だけに絞って開催されている。
そしてこの数年、バルセロナでは世界のトップライダー8人だけでなく、世界のトップ女子の戦いもいっしょに見られるようになった。今回も、ベルタ・アベラン(スコルパ)、ソフィア・ラビノ(ベータ)、デニサ・ペチャコバ(TRRS)、アリス・ミンタ(ベータ)、ケイトリー・アドシード(ヴェルティゴ)の5名が世界一のインドアトライアルの舞台に立った。

バルセロナでのウイメンズ・トロフィーは、今回が3回目。ここまでエマ・ブリストとアベランが1勝ずつ。ここでアベランが勝てば、ブリストを抜いて世界ナンバーワンのインドア女子になれるのだが、しかしライバルは手強かった。
セクションは5つ。ペチャコバが5セクションを3点、ラビノはわずか2点の減点でまとめてきた。セクションは優しめに設定されていたということだが、それゆえ、油断ができない神経線となっていった。アベランは、最終セクションに来るまでオールクリーン。しかしここで3点以上を取ってしまったら勝利はない。
たいへんなプレッシャーの中、アベランはここを1点で抜けて、見事な勝利を決めた。バルセロナで2勝目。バルセロナ生まれのアベランにとって、これはなによりうれしい勝利となった。
