大きな災害が相次いでいます。災害支援にトライアルは最適。しっかり腕を磨きましょう。

TRRSインジェクション小川毅士テスト

2026TRRS インジェクション

TRRSがフューエルインジェクション吸入となった。2013年に創業、最も新しいメーカーの一つでもあるTRRSだが、堅実な作りと独創性で、確実にユーザーを増やしている。まんまトライアル仕様にシートや小物入れを装備したトレッキングバイクのXTRACKやセルモーター装備仕様など、新たなユーザーを呼び込んでファンを拡大していった。そして今、TRRSが進んだのは、FE化への道だった。


TRRSとTRRS JAPANとしては、メインとしたいのはFE仕様だが、キャブレター仕様も生産、販売が続いている。日本では受注輸入となっているとのことだが、現状では、キャブレター仕様を選ぶ人も多いようだ。新しいものには漠然とした不安があるものかもしれないが、実際のところ、乗ってみたらどんななのか、さて?

用意されていたのは2機種。どちらもFE仕様で、250と300。250はセルスタート仕様で、300はセルのないキック仕様。これを逆に設定することもできる。全日本を見ていても、セル仕様を愛車とするライダーはぼちぼち増えているようではある。やっぱり楽ちん、わずかでも体力の消耗を軽減させたい、ということだろう。

まず250に乗ってみる

試乗は、いつも排気量の小さい方からやることになっている。大きな排気量に振り回されててんてこ舞いになる人ならともかく、300ccをさらにパワーを出して乗っているライダーが試乗するので、いくらパワーがあっても困ることはない。300ccを先に乗ると、250ccの評価がどうしてもかわいそうになってしまうから。

小川毅士選手の、TRRSの過去の印象は、レスポンスがきわめて良好、クィックでピーキーなものだった。それがこのモデルでは、だいぶマイルドになっている。それが第一印象だった。ただし、今回はキャブレター仕様には乗っていないから、この印象がインジェクションゆえの性格なのか、2026年モデルの性格なのかは、ちょっと判断がつきかねるところでもある。マイルドな特性をもうちょっと解説すると、回転の上がり方が少しゆっくりになっているとのこと。毅士選手のアクションにはちょっと遅い、ということになるが、日本でトライアルをしているほとんど全員がそのスピードではアクションができないわけだから、この特性は多くの人にとってちょうどいい、ということになるのだと思われる。

多くの人にとっては乗りやすい味付けのフィーリング、毅士選手が乗ると、まず低回転でとことこといい感じで走れるところが好印象。そこからアクセルワークだけでパワーをかけていこうとすると、もうちょっとほしいな、という気がしてしまって、半クラッチをあてることになるという。半クラッチを使わず、パワーが出てくるのを待っていればいいという感じではないということで、このあたりは、絶対パワーの過不足の問題ではなくて、毅士選手が求めるパワーカーブとの差、かもしれない。


同年式のキャプ車との比較はできないから、記憶にあるTRRSのキャプ車、またはその他メーカーのインジェクションマシンを思い起こしつつ、試乗を続ける。と、TRRSのFEは、これまでのFEに比べて、ずいぶんとキャプに寄った味付けがされていることがわかる。エキゾーストノートはまるっきりキャプ車と変わらないから、インジェクションですよ、と教えてもらわないまま乗っていたら、もしかしたらキャブだと思って乗っているかもしれない、それくらい、キャブっぽいエンジン特性を作り上げている。ただ、いまはもちろん、FEであることを承知の上で乗っているから、となるとインジェクションらしいところも見えてくる。キャブ車よりやっぱり4ストローク的な性格。スロットル操作に忠実、という印象だ。全開域で走らせると、明らかにキャブ車とはちがう特性が見えてくる。2ストロークの、勝手に回転が上がってくる特性が影を潜めて、アクセルを開けたら開けただけ回る。これは、すぐに乗り慣れてしまうレベルではないかと毅士選手。どんなオートバイでも、乗ってすぐには不慣れなところが出るものだ。たぶん、1日乗っていればこの仕様にはなれてしまうだろう、とのことだった。

始動はセルで超楽ちん。ただし、キックでかけても特段困ることはない。始動性がいいのは、TRRSのおいしいところだ。セル仕様マシンには、バッテリーが乗る。バッテリーはヘッドライト裏で、その分重たいはずなのだが、その重さを認識するのは、毅士選手でもむずかしいという。FE仕様では、FEを動かすのにもバッテリーがいる。このバッテリーはセル用のバッテリーと共通で、つまりFEになったら、セルがあってもなくても、バッテリーは装備されている、ということだ(セル仕様は、リレーなど若干のパーツが追加されるから、その分(200gほどということだ)だけバッテリー関係も重量増になってはいる)。軽さだけを求めるなら、セルなしのキャブ仕様を選ベ、ということになるのだが、実はFE仕様になって、エンジンが少しだけ前進した。スロットルボディの前後長が、キャブよりちょっと長かったからだが、それはフロントが重たくなっているということでもある。それでもフロントが重たい、というインプレッションはなかったから、そこにバッテリーが乗っているのは、少なくとも乗っている時には忘れてしまってもなんら問題ないようだ。

強いてフロントの重さを探していくと、フロントを浮かす、その一瞬、フロントタイヤが地面を離れる時だけ、ちょっとだけ重たい感じがする。浮いてしまえば、もう感じない。そしてその分、ふらふらしないでまっすぐ走ってくれる。この乗り味は悪くなかった。奇しくも、というかそういう時流なのか、ベータ・シンクロもフロントの重さはこのTRRSとまったく同じ印象だった。フロントが軽くて浮きやすいのは、トライアルがやりやすいよう仕様にも思えるが、安定感とのトレードオフでももあるようだ。これまで、ひときわフロントが軽いベータ(EVOまでの)に乗ってきた毅士選手的には、他メーカーのフロントはどれも重たい。ただその中でも、ちょっと重たいのかだいぶ重たいのか、メーカーによって幅はあった。TRRSのそれは、ちょっと重たいか、無視できるくらいのものだということだ。それが250ccでの感想だから、TRRSのフロントは、重たくはない、と言いきってしまってもいい。

では300はどんなだ?

250から300に乗り換えると、パワーフィーリングはけっこう変化があった。300ccの排気量のなせる技なのか、250ccのときに感じたマイルドな、毅士選手の感覚についてこない印象はまずなくなった。負荷がかかっている状態で、そこからさらに回転をあげたいと思った時には、毅士選手が思うよりもうちょっとスロットルをがばっと開けなければいけなかった、という発見はあったが、開ければついてくるのだから、これはこのマシンの個性なのだと思われる。この個性がどこから来るかといえば、もちろんきちんと分析をしたわけではないけど、感覚的にはインジェクションだからではないかというのが毅士選手の読みだ。2ストロークのキャブ車では、アクセル一定でも回転が上がっていく性格を持っているから、そのつもりでアクセルワークをしていると、開け足らない、ということになるのだと思われる。やはりFEらしい特性はあった。ただ他のFEマシンと比べれば、そのFEらしさはうんと小さい。

過去のTRRSを思い出してみると、250と300は、排気量のちがい以外は同じ味付けを持っていたように思う。それがこのモデルでは、ずいぶんと性格がちがうと感じた。300はコンペティション向け、250はトレッキングなど、一般の人がトライアルを楽しむのに適した性格を持っている。FEのマッピングは、250と300では異なるという。これまで、排気量はちがってもキャブセッティングは同一だったから、性格がちがうのは納得できるところだ。


かつて、トライアル2クラスは250ccに排気量制限されていた時代があったけど、今は排気量の制限はない。250ccを使わなければいけない状況は、ほとんどないことになる。となれば、ユーザーの使い道に合わせた味付けをそれぞれに施した方が、乗るライダーにはハッピー、となるだろう。

250で無視できるくらい、としたフロントの重さは、300ではいよいよ感じにくい。逆にフロントが軽いと思えてしまうほどだった。試乗中、思ったよりフロントが浮いてくることがあった。300ccのパワーゆえではないかということだが、バッテリー装備してエンジンが前進してなお、フロントは軽い。

今年の、リヤサス

インジェクション装備が今回のモデルのハイライトであるのはまちがいないが、意外や、リヤサスがけっこう変わっていた。今までのTRRSのリヤサスは、動きをダイレクトにライダーに伝えてくるタイプだった。がつんとぶつけていけば、それがライダーに伝わってきた。このモデルでは、そのへんがだいぶマイルドになった。以前のモデルなら、ぶつけたときにくる衝撃は、ライダーがアクションを起こしてあげなければ、その後に影響を残してしまう。このモデルだと、なにもしなくていい。知らない間に、リヤサスが全部吸収して、行きたいところまで連れていってくれる。

ライダーは楽ができる。その一方、路面の動きを感じてのボディアクションテクニックを習得しようとするなら、サスからの情報がなさすぎて悩んでしまうかもしれない。しかしこのマシンに乗っている限りは、そのテクニックは習得しなくても、他のマシンに乗るライバルが落ちているところを上がっていける、そんなリヤサスになっている。

リヤサスに対してフロントは、とにかくスムーズ。この時期に試乗をする場合、たいていの試乗車はまだあたりがついておらず、特にアルミインナーパイプのサスは(アルミインナーは日本だけの仕様で、ヨーロッパの300にはスチールのフォークがついてる)使い初めの初期段階ではごりごりする感覚が残っているものだった。その感覚が、今回は感じられなかった。まだほんの数時間しか走らせていないということで、そのスムーズさはちょっとびっくりだった。

あと、小さなことだが、リヤブレーキペダルの形状が変わって、フットレストに近づいた。毅士選手はそれを知らないまま試乗して、足先に触りやすいブレーキペダルだと感じたという。きちんとフットレストに乗った状態で、ブレーキペダルは足指の付け根あたりにあった。けっこう近めに位置しているから、もしこれまでブレーキが遠いと感じていた人も、これなら問題なくブレーキ操作ができるにちがいない。

ということで、新たに2ストFEの仲間入りをしたTRRSの印象として、2ストキャブ車乗りの毅士選手としては、インジェクションらしいごまかしの効かない面を感じている。一般論として、ごまかしがきかないのは4ストロークが一番、2ストキャブ車はごまかしの聞く部類で、2ストFEはその中間的存在となる。2スト的なアクセラレーションが通用しないことがあるから、一発もの、開けっぱなしで進んでいく場合は問題ないとして、負荷がかかった状態から、さらに開け足したい場合に、パワーフィーリングの違和感を感じると言う。もちろん、もうちょっと乗り込めば、その使い方も見えてくるかもしれない。やるべきことをピタピタと決めていけば、インジェクションはばっちり答えを見せてくれる。

FEのメリットは、とにかく低回転が安定すること。キャブは構造上、マシンが暴れれば油面も乱れる。その影響を受けやすいのが、低回転だ。インジェクションでそこが安定することで、極低速で走る初心者においしい面が出てくる他、低速を多用しながらマシンの上下動が激しいダニエルなどには効果絶大。FEに乗れば、ダニエルが楽になる、かもしれない。