大きな災害が相次いでいます。災害支援にトライアルは最適。しっかり腕を磨きましょう。

2026年、開幕! 氏川政哉スタートダッシュ

2026年の全日本シーズンが開幕した。国際A級スーパー(IAS)は氏川政哉、国際A級(IA)が宮澤陽斗、レディース(LTR)が中川瑠那、国際B級(IB)が辻本雄河の勝利となった開幕戦。試合も結果も、なかなか興味深い素晴らしい開幕戦となった。

日程は昨年と1日ちがい。桜はすっかり終わっていたけど、お天気も良くて素晴らしい一日だった。桜が真っ最中の頃に開幕戦が開催されたこともあったけど、そのときは岡崎の街中が桜のお祭りで大渋滞で困った覚えがあるから、桜がなくても空いている方がトライアルファンには(たぶん)ありがたい。

黒山健一が久々にタイトルを獲得して、ゼッケン1番をつける13年ぶりの開幕戦となったはずなのだが、その黒山はシーズンオフに行なったデモンストレーションでの事故で足を負傷して、大会当日はまだ入院していた。2024年は野崎史高が負傷して半年休場、2025年は小川友幸が負傷して半年休場となって、今度は黒山だ。野崎は翌年復帰して1勝をあげるまでには回復し、小川は今回が復帰戦となる。

トップ争いをしたのは3人。氏川政哉、柴田暁、武田呼人。氏川以外は、まだ全日本の勝利がない。ホンダに乗る武田は、表彰台に乗ったのがまだ1回だけで、ホンダに乗ってからは表彰台未登壇だ。勝ち方を知っているのは、氏川しかいない。


下見を終えたライダーによると、セクションは、オールクリーンが不可能ではない、という見立てだった。1ラップの減点予想は、10点未満だという。そういう想定は、時にいい方に転ぶこともあてるし、悪い方に転ぶこともある。ほとんどのライダーがクリーンした第1を終えて(上位陣では柴田が1点を失った)、氏川、柴田が第2で5点となった。1ラップ10セクションを一ケタで回るには、ここでの5点は致命的ではないか。5点なくスコアを重ねていく武田、久岡孝二あたりが調子よく見えた。武田は小川友幸と同じく、昨年同様にホンダのファクトリーマシン(フレームはスタンダード)に乗る。久岡はHRCクラブMITANIからのエントリーということで、マシンもスタンダードだが、今年はHRCの販促ライダーとしての任を受けて、新しい(伝統の)モンテッサカラーに身を包んで登場している。マシンの中身も、HRCのサポートを受けているという。


さてさて、復調途中とはいえ、小川友幸が4連続5点となるような難セクションではある。ちょっとした乱れが大きなミスにつながるのは、トライアルあるある。結局1ラップ目にはどのライダーもどこかで5点をとってきた。そんな中、減点を一ケタにまとめたのは二人。それが氏川と柴田だった。氏川7点、柴田9点。ともに第2セクションで5点になっているが、そこから減点を最小限にまとめて10のセクションを走り抜けてきた。


武田は後半でふたつの5点をたたいて12点、暫定3位。暫定4位は23点の野崎史高。野崎はスタート直後にトラブルがあってピットでの作業を余儀なくされたが、第2あたりで追いついてペースは戻った。暫定5位の小川毅士とは同点の23点で、3位には11点離されている。野崎も毅士も、4つのセクションで5点があったから、このくらいのスコアにはなる。前半好調だった久岡も、後半6セクションで4つの5点。毅士には2点差の25点で6位。クリーンは第1セクションのみという小川友幸がさらに6点差の31点で7位。

2ラップ目、学習能力の高いIASライダーは、ほとんど全員が減点を減らしてきた。キョウセイのセクション群は、もともとは大岩の点在する斜面や高低差の大きいヒルクライムなどが特徴的だったが、最近は建築素材が多く導入されて、アクロバチックな設定が増えている。土の上のシティトライアル、と評していたライダーもいた。人工セクションは、想定を見誤れば簡単に5点になるが、そこは日本のトップライダーのこと。行き方がわかってしまえば、あとは正確に走られるが仕事になる。


2ラップ目のベストスコアは小川毅士で、わずか3点。1ラップ目のトップが氏川の7点だから、なかなかの好スコアだった。これに続くは武田の4点。トップの氏川と柴田は8点で、10セクション2ラップを終えて、2位は柴田から武田に入れ替わった。暫定トップの氏川が15点、武田16点、柴田17点と、三つどもえの大接戦となった。

4人による4位争いは、2ラップ目ベストスコアの毅士が単独4位となり、久岡42点、野崎44点、小川友幸46点と、5位争いが接戦になった。小川友幸も、2ラップ目には5点なし、減点を半分に減らしてきた。1ラップ目は試合勘が戻っていなかったのでは? との問いかけには、試合勘というより、フィジカルのトラブルで思ったような動きができない、そのハンディを克服しながらのトライ方法を見いだすのに時間が必要だ、ということらしい。


残るはSSが二つだけ。SS第1は、斜めに立て掛けた2.8mのヒューム管を登るのが鬼門。真正面から攻めるのが潔いが、斜めからのラインもあった。SS第2は、最後に大ヒルクライムのある岩場セクションだが、肝になったのは中盤の4枚岩を重ねたステアケース。もちろんそれ以外も、けっして簡単ではない

11台の参加とあって、SSはルーキーの高橋寛冴を除く10名が参加。高橋は20セクションを98点と、第1セクションの3点が唯一のセクション走破となった。高橋のIAS挑戦は、ここからがスタートだ。

SS第1は、平田貴裕、武井誠也、田中善弘、野崎が次々に5点となった後、小川友幸が初めて1点でアウトした。これで攻略法が判明するかと思えば、野崎、久岡と5点。小川の逆転劇の始まりとなった。体調が万全でなくても、勝負強さはさすがの小川だった。

5位争いの3人のトライの後、小川毅士が初めてクリーンをたたき出す。毅士は上にも下にも順位変動がない単独4位だったのだが、後続のライダーには、クリーンが出せることがわかってしまった。というより、クリーンしなければ順位を落とす恐れがある、という絶体絶命だ。


優勝争いの最初のトライは柴田。柴田はもともとSS男と異名をとっていて、SSになるとがぜんいい走りを見せていた。去年あたりはその勢いが衰えてしまった感じもあったのだが、ここへ来て、久々にSS男の柴田を見せてくれた。このクリーンは後続に大きなプレッシャーとなる。はたして次に走った武田は最初から走りが乱れて3点。2点差は帳消しになって、柴田に2位の座を譲って最後のSSに臨むことになった。


最後にSS第1をトライした氏川は、すべてのポイントを完璧に決めて、誰よりも美しいクリーンを見せた。1点を争う接戦の優勝争いは初めてという氏川。その身にふりかかるプレッシャーは尋常ではなかったが、それを見事跳ね返す実力を、氏川は身につけていた。

最後のSS第2を前に、トップは氏川15点、以下、柴田17点、武田19点、毅士26点、久岡47点(クリーン4)、友幸47点(クリーン3)、野崎49点、田中善弘75点、武井誠也79点、平田96点。3人による優勝争い、3人による5位争い、田中と武井の8位争いは変わらずだ。

SS第2は、まず入口のとんがり岩が鬼門で、そこを越えた先、水の流れをジャンプした後、登りの頂点の岩越えが次の鬼門、そして例の4枚岩が待っている。ここはSS第1以上に難関で、5位争いは全員5点、毅士も5点で、そのまま優勝争いの3人のトライとなった。トライ順はSS第1と変わらずだから、柴田、武田、氏川の順となる。柴田は4枚岩でバランスを崩し、あわやセクションから飛び出したようにも見えたが、マシンはセクションに残っていた。減点は2点。これで武田と柴田が19点で同点になった。クリーン数は武田が多いからSS第2を武田がクリーンすれば、2位の座を取り返せる流れだったのだが、武田はSS第2を攻略できず、武田24点で3位が決定した。

残る氏川のトライ次第で、氏川が勝つか、柴田が勝つか。トライを終えた柴田が20点で、対して氏川はトライ前で15点。氏川5点なら柴田が勝利、3点以内なら氏川の勝利だ。しかし、3点なら抜けられる、というセクションではなかった。

氏川のトライは、ここでもパーフェクトだった。すべてのポイントを完璧に走らせて最高のクリーンを披露して、自身の優勝に花を添えた。開幕戦勝利は2023年以来、ヤマハでの開幕戦勝利は今回が初めてとなる。開幕戦勝利はもちろんだが、氏川にとっては大接戦の中、プレッシャーに打ち勝って勝ちきったことが、なにより収穫だった。

ゼッケン1番の黒山を欠いたシーズン、黒山の分までチームメイトの氏川ががんばった開幕戦となった。

【国際A級】

メンバーが少なくなって少数精鋭となったIASに対し、こちらはうんと層が厚くなって、上を目指すルーキーたちにとっては目の上のたんこぶが大きくなりすぎて、へたをすると上を向けないくらいの様相となっている。

どんな大会になるか、ある意味想像はしつつも、その結果を楽しみにしていたが、おおむね、予想通りとはいえ、やはり興味深いリザルトができ上がった。


優勝は宮澤陽斗。昨年、ルーキーでIASを1年走り、SSに2回進出、リタイヤ1回でランキング10位に残れずに今年は再びIAを走ることになった。宮澤は、2024年にIAランキング2位でIASに移ってきたが、ついにIA未勝利のままIASライダーとなっていたのだが、いったんIAに戻った途端に勝利を飾り、実力が確実に伸びていることを証明した。


とはいえ、宮澤もけっして楽勝ではなかった。2ラップ目最終セクションが終わるまで、トップは磯谷玲だった。磯谷はIASの武井誠也と同じく、ベータの新しいシンクロに乗って、これまたIA初勝利かと思わせたが、なんと最終セクションで5点。勝利を宮澤に譲るかたちになった。磯谷も、去年IASを走っていたライダーだ。


最終セクションまでトップだったのは磯谷だったが、最終的に2位の座をつかんだのは平田雅裕だった。平田も前IASライダーだ。平田はIAチャンピオンをとってIASへと移った弟の貴裕と交代でIAを走る。貴裕もシーズン終盤の実力発揮でタイトル獲得に至ったから、兄もそれにならうか。この兄弟は2年連続でIBチャンピオンを獲得している。順番は逆になったが、今年雅裕がIAチャンピオンになれば、IAでも2年連続の兄弟タイトルということになる。


4位は磯谷郁。IASでは体当たりのトライアルを見せてくれていたが、IAではさすがの力量を見せて、ていねいな走破力を発揮した。本人も久しぶりにトライアルをした実感ありということで、実際、IAは(IASより5点にならないから)セクションの最後まで走破することになり、疲労度も大きいとのこと。優勝争いをしていて5点になって当然のセクションもないから、渋滞していても申告5点で先を急げない。IAを走るむずかしさという世界もちゃんと存在する。

上り調子の若手たちは、5位と6位に並んだ。5位が永久保圭、6位が黒山太陽。二人とも、今年あたりはIAの頂点に立ってタイトル獲得といきたいところだが、この層の厚いクラスで、どこまで実力を伸ばせるのか、注目だ。


永久保と黒山は14歳で同い年だが、もう一人の同年代(学年はひとつ下)が寺澤迪志。寺澤は今回が昇格初試合となったが、ルーキー5人の中では唯一11位に入ってポイント獲得となった。


ポイント獲得の15人のうち分けを見ると、前IASが5人、元IASが3人、IAチャンピオン経験者が2人、10代が3人ということになった。久々の登場組としては、負傷からようやく出場までこぎつけた徳丸新伍(14位)と去年は小川毅士のアシスタントで全戦を回った山崎頌太(10位)がいる。

【レディース】

ディフェンディングチャンピオンの中川瑠菜が、苦境に苦しみながらも辛勝、連勝記録を伸ばして、連覇に向けて幸先のいい開幕戦を作った。


今回はなんと4名の参加となった。過去には3名の参加という大会もあったが、レディース人口の多いこのエリアで4名というのは初めてのことだ。創成期からのメンバーである寺田智恵子は今回は夫婦揃ってIBに参戦した。その他、負傷欠場のライダーが何人かいて、この顔ぶれになってしまった。出場した小玉絵里加も手の小指骨折が完治していなくて、本調子にはほど遠いという。


中川の苦戦は、最初のセクションから始まった。登った頂点で大きく左ターンをするところで、少し大回りをしすぎたのだろうか、テープを切ってしまった。清水さやかが3点、寺澤心結が1点、小玉がクリーンだから、この5点のハンディは大きい。

中川はひたすらがまんのトライアルを続ける。クリーン連発ならトップ奪還もすぐなのかもしれないが、意外にクリーンが出しにくい。中川の1ラップ目のクリーンは、2個にとどまった。中川がトップに出るのは、1ラップ目も半分をすぎた第8セクションだった。1ラップ目に中川を追って2位につけたのは、1ラップ目にクリーンゼロだった寺澤。点差は7点だった。

2ラップ目、寺澤が覚醒したかのようにクリーン連発。ライバルの3倍の6クリーンをたたき出して追い上げ、この日のベストラップも記録した。

結果は中川が勝利、寺澤が2位。第5セクションが寺澤が5点をとって中側には届かなかったが、これが1点なら寺澤が初優勝やもしれなかった。中川の女王たる走りと、12歳の寺澤の奮闘は、今後もみんなの注目を集め続けるにちがいない。

【国際B級】

開幕戦勝利は辻本雄河。2022年に3戦のみに参戦して1位、3位、4位の成績を残しているが、今回は4年ぶりの勝利となった。辻本は台湾に留学中で、スポット参戦で何回か出場する予定だったというが、今回気持ちよく勝利したことでタイトルへの欲が出てきたらしい。台湾からだから、たぶんどのラウンドでも最遠来エントラントとしての参加になるのだろう(九州は台湾より遠くから参加する人もいるのかな)。


2位上福浦明男、3位林大作はともに80年代後期の全日本トップランカー(上福浦はIA、林はIBが活躍の舞台だった)。40年を経ても同じ舞台で活躍できるのも、トライアルならではだ。


2人はともに広島県。今回の表彰台は台湾vs中国の争いとなったが、こちらは高市首相がもん着を起こした台湾有事とはまったく関係がない。

【スタート順】

ところで、これまでキョウセイを舞台にした(他にもあったけど)全日本では、IBが最初にトライするセクションを二つに分け、渋滞緩和対策とすることがあった。今回はそれはなしで、IB・レディースは第3セクションから(第1と第2はトライがない)、IA・IASは第1セクションから(第3と第6はトライがない)。そしてIAとIASの間にざっと1時間のインターバルを置いた。IBのみ1分に2台ずつスタート、OP125を含め、他のクラスは1分に1台スタートだ。

渋滞対策については、コースを長くとること、スタートを(せめて)前者1分に1台とすること以外に、根本的解決策はないんじゃないかと考えていたのだけれど、今回の方式は100点満点には遠いけど、これまでにとられていた、100点満点で0点とか5点の渋滞対策よりは、うんとよかった。

個人的に、朝の儀式がとてもスムーズでかつバリエーション豊富で楽しかった、というのもある。OP125からLTRの最終ライダーまでを第3セクションで見ていると、最後の方にはIAのスタートが始まって、第2セクションにもトライを始めたライダーがいた。LTRの最後のライダーを見終えて第2へいくと、どうも見逃したライダーが一人か二人いた。でもその程度で済んだ。第3セクションはセクション待ちの渋滞があって、30台ほど並んでいたことがあったから、これがなければ、IB・LTRを全員見てから第2へ移動したら、余裕で全員を見られたんじゃないかと思う。

第2でIAを全員見た後に第1へ移動したら、ほどなくしてIASがスタートした。とても効率がよくて、同じセクションにずっといる退屈さもなくてよかった。ただしこれは、個人的感想だ。

現実には、IB勢とIA勢が合流する第4では、やっぱり20分程度の渋滞が発生したという。合流地点が渋滞するのはトライアルも道路もおんなじだ。そういう点からすると、クラスによってトライするセクションを分けるのは渋滞対策でありながら、へたをすると渋滞を招くことにもなる。今回はそこはぎりぎり合格点(合格ラインは40点くらいだけど)だったんじゃないかと思われる。

ライダーの満足感を棚上げすれば、インに難所を配置すれば、失敗した人はあっという間にセクションを去ることになるから、進行もスムーズになる。IB・LTRの最初のセクションとなった第3は、あんまり5点にはならず、時間いっぱいセクショントライするライダーが多かった。インで失敗させずとも、もう少しだけスムーズにアウトできる設定にしたら(とりあえず最初の)渋滞ももう少しだけ緩和されるかもしれない。

と、こういうのは言うはやすしで、天候やそのときのいろんな事情で、かんたんに条件がくつがえる。今回はかなり改善傾向だとは思ったけど、完全な渋滞対策を施すまでには、まだまだ難関が待っているんじゃないかなぁと思ったのでした。

●全日本開幕戦情報
https://www.shizenyama.com/events/44134/
●全日本開幕戦リザルト
https://www.shizenyama.com/44146/

(記述にまちがいがあって、ご指摘を受けて修正しました。Iさん、ありがとうございました)