1ラップ目は圧倒的強さを見せた。
2ラップ目は大崩れしたものの、勝ちきって3勝目をあげた氏川政哉
台風の直撃で2年連続で中止になってから4年目になる。もしもの場合に備えて翌週を予備日とする処置をとって2年目。今年も昨年同様、予備日を活用することなく、予定通りに大会は2026年9月13日に開催された。台風には襲われなかったけど、雨は降った。しかしこれは予報通り。国際A級の大半がゴールした頃に降り始め、国際A級スーパーがゴールした頃には岩の表面はすでに乾き始めていた。灼熱の太陽に照らしあげられることはなく、気温も30℃に届くか届かないかとそれほどではなかったものの、蒸し暑い一日だった。
●国際A級スーパー
IASクラス表彰式。みんなの前に立って激写しているのは
2025全日本チャンピオンの黒山健一カメラマン
勝負は氏川政哉が勝利をもぎとった。ぎりぎりで逃げ切った、というほうが正しい。今シーズンの氏川は、いまだ絶対的な強さを発揮できていない。それでも最後に勝利をつかんでいくあたり、勝負強さは身につけてきた。
セクションはほとんどクリーン可能で神経戦ともいわれていたが、ちょっとしたことで5点になるリスクもあげられていた。そして多くのライダーは、むずかしいほうの予測に流れてしまったようだ。





11位高橋寛冴、10位平田貴裕、9位田中善弘、8位武井誠也、7位久岡孝二
セクションの配置は昨年大会とほぼ同様だが、ライダー目線では去年とはけっこう変化があるらしい。テープの取り回しやゲートマーカーの置き方がよりトリッキーになっている。もともとの地形に限度があるからだが、こうなると地形との戦いというより、ゲートマーカーやテープとの戦いというニュアンスが強くなってくる。
1ラップ目、好調だったのは氏川だ。1ラップ目の氏川はとにたく素晴らしかった。全員が攻略に失敗した第5セクションこそ5点だったが、氏川以外が全員5点になった第6をクリーンするなど、それ以外の9セクションをすべてクリーンして、2位以下に10点以上の点差をつけた。
確実に毎戦優勝争いを展開する存在になってきたが、
しかしあと一歩、勝利に結びつかない武田呼人。
5点一つの氏川に対し、1ラップ目2位は武田呼人は3つの5点を喫して減点17。1ラップ目3位の柴田暁は、5点4つで減点21。1ラップ目の3位から6位までは20点台がずらりと並ぶ。4位久岡孝二23点、5位野崎史高24点、6位小川友幸29点、同点で小川毅士29点。うまくいけばオールクリーンも? との予測だったから、みんなずいぶんとミスがあった。しかしそれがトライアルだ。
2ラップ目、氏川は序盤の3セクションをクリーン。2ラップ目も好調のまま勝利に突き進むかと思いきや、第5の5点移行、減点がかさんでいく。雨が降り始めたのもその頃だ。予報通りの雨は、すぐに止むかもしれなかったが、でも止まないかもしれない。地面も岩も、見る見る濡れてつるつるになって、まだゴールをしていないライダーを苦しめた。雨が降ってきた時点で試合を続けているのは、IAのトップグループと、IASだった。
2ラップ目に追い上げるいつものパターンの小川毅士だったが、今回は6位。
こんな中でも、減点を減らしてきたライダーがいる。1ラップ目に対し、2ラップ目に減点を減らしてきたライダーをあげれば、小川毅士が10点、野崎史高は5点減らした。しかしなんといっても神がかっていたのは、17点も減点を減らした小川友幸だった。2ラップ目の小川の減点は12点。2ラップ目のトップスコアをマークした。本人も、2ラップ目だけを見ればベストに近いと言う。
本来なら、もう少し上の順位がほしい野崎史高だが、
この数戦婦長が続いていたので、4位でちょっと安心。
氏川の2ラップ目は28点だった。2ラップ目の順位を見れば6位。1ラップ目の好調を維持できず、という結果だ。電動マシンは雨コンディションを苦手とするのは知られているが、それはもう昔のことと黒山健一がコメントしていたこともあった。しかし結果として、雨の中、氏川は減点を増やした。
課題はある。しかし勝負は、氏川がこれだけ減点を増やしながらも、トップを守って2ラップを走りきっていた。しかも2位の武田にトータルで5点差をつけている。安全圏ではないが、追う方としては大きな点差だ。
苦しみつつ、確実に上位ポジションを復活させている小川友幸。
今回の2ラップ目は見事。本人も、2ラップ目だけならベストと評価した。
2ラップ目に追い上げた小川友幸は氏川に8点差で、計算上は勝利のチャンスもある。昨年の大けがはライディングには影響がないだろうところまで回復しているということだが、古傷の膝はなおりようがない。小川が勝負のトップグループに食い込めずにいるのは、後半戦を休むことになった負傷が原因ではなく、長く試合を休んだ、練習ができないでいた、ということかもしれない。しかしそんな中でも、小川は確実にトップグループに近づいてきている。
SSも、基本構成は去年同様。しかし微妙にアレンジが変わっていて、難度は増している。雨はすっかり上がり、岩も乾いてほぼドライコンディション。それでも、どこに湿り気が残っているかわからない。油断は禁物だ。それでも、上位陣はほとんど失点なくSSを走る。上位陣では、久岡がSS第2でびっくりの5点になったのと、小川毅士が岩飛びに失敗して3点、氏川が小さくバランスを崩して1点。これが上位陣の減点の全部だ。
氏川の勝利は、SS第1で決まった。2ラップを終えた時点での5点差をそのままキープしての勝利だ。武田は、今回も初勝利ならず。後半、氏川が減点を増やしてきていたから、可能性は小さくなかった。武田本人は、自滅した、自分から勝利を手放した、と試合を評価した。
小川友幸は3位。2戦連続の表彰台に、ようやくここまで戻ってきた、との実感はあるも、ここからさらにポジションを戻すのはもっともっとむずかしいだろう、という感想もクチにしている。
自身初優勝を果たしている柴田暁。現在、ランキング3位につけている。
氏川のランキングトップは安泰。これまで氏川を直接追うのは柴田暁だったが、今回の結果でランキング2位には武田が浮上した。1位と2位のポイント差は30ポイントに広がっている。残りは3戦だが、30ポイント差を維持したまま和歌山・湯浅大会を終えられれば、最終戦を待たずに氏川が初めてのタイトルを決める可能性も出てきた。
SS1。このクリーンで、氏川政哉は勝利を決めた。
●国際A級
シーズン3勝目。今シーズンのチャンピオン一番乗りとなるか。黒山太陽。
黒山太陽が勝利をもぎ取った。こちらは、雨で苦戦するライバルを尻目に、強力につかみ取った勝利だった。
1ラップ目からトップは黒山だった。しかし大ベテラン本多元治が1点差でこれに続き、さらに1点差で磯谷玲、さらにさらに1点差で磯谷郁と続いた。油断大敵だ。





2ラップ目、黒山が小さなミスで本多にトップを譲ったものの、ドラマは雨の中の終盤戦で起こった。黒山は、つるつるに滑る第10、第11と連続クリーン。本多を1点差で下して勝利したのだった。黒山のトライ前、第10セクションのつるつる岩で5点になるライダーが多い中、磯谷玲が3点で抜けて喝采を浴び、本多が2点で抜けてさらに拍手を受けてからの黒山のトライ。そのクリーンは神かがっていた。
黒山の勝利は今シーズン2勝目。ランキング2位の宮澤陽斗には21ポイント差がついている。次のSUGO大会で勝利すれば、最終戦を待たずにちゃんピンオンが決定する計算だ。
勝利を決めた黒山太陽。第11セクション出口で、渾身のクリーンを確信する。
●レディース
今回も苦しみながらの勝利となった中川瑠菜。シーズン5勝目。
僅差で優勝を争う神経戦は予想通りだったかもしれない。1点差で勝負が決まる大接戦。しかし混とんとした試合展開で、優勝争いの二人は二人とも負けを覚悟しながら戦いを進めていた。1ラップ目、序盤は中川瑠菜が順調にセクションを巡っていた。第9セクションでは寺澤心結が3点のところを5点となったが、1ラップ目は中川がリードを保って折り返した。
寺澤心結も、勝負の見えない苦しい戦いだった。結果くやしい1点差
しかし2ラップ目、中川は1ラップ目にクリーンした第2セクションで5点に。ここから試合がわからなくなってくる。寺澤の追い上げが実を結んだのか、中川が逃げ切ったのか。不安と緊張の中、終盤セクションを走りきった二人の勝負は、クリーン数2個差、減点数1点差で中川のものとなった。
ソアレス米澤ジェシカのトライアルは笑顔が絶えない。
チャンピオンの意地と、ぐいぐいと成長を続ける若さの戦い。いやいや、中川も充分に若いのだが、レディースクラスは今、急速に若年層へのシフトが進んでいる。
小学生ライダーの泉心愛莉。ポジションを上げる日はいつかな?
緊張から解き放たれたのと悔しさと、二人はゴール後に抱き合って泣きじゃくった。強い友はよきライバルとなって、お互いを高めあっている。
●国際B級
勝利をつかんだ河野剛。
河野剛が2ラップをうまくまとめて勝利した。1ラップ目のトップはゼッケン1番の林大作、2ラップ目のトップは最近好調の岩間隆介だったが、どちらもトップではないラップで大失敗があって6位と2位にとどまっている。河野は1ラップ目2位(トップと5点差)、2ラップ目2位(トップと2点差)で勝利した。2ラップ目の岩間は、オールクリーンだった。
2ラップ目にただ一人オールクリーンした岩間隆
河野は、1992年国際B級ランキング2位で国際A級に昇格しているけど、林同様にIBで全日本復帰というかっこうだ。1992年、河野のIBチャンピオン争いのライバルは小川友幸で、ランキング3位はハードエンデューロ界で活躍中の大塚正恒、4位に2024年IBチャンピオンの高橋淳、以下、岡村将敏、田中善弘、小野田理智、野田大作(林大作のアシスタントとして全日本現場にいる)など、今でも全日本の舞台を盛り上げる面々が名を連ねている。
ランキングトップを守る辻本雄河
ここ2戦、国際B級のスタートは1分に一人ずつになっていて、それが本来のスタイルだなぁと思っていたのだが、ここでは全日本で伝統的な1分に二人ずつに戻った。人数が多ければしかたないということなんだろうが、1分に一人か二人かは、IBの2ラップ目とIA、IASが交錯するあたりで大きな影響が出るような気がする。かつて世界選手権は2分に一人ずつのスタートだった(今は世界選手権も時短で1分15秒にひとり。ただしセクションの持ち時間もかつての2分から1分に時短となっている。セクションの持ち時間よりも15秒長いのが世界標準。セクションの持ち時間より30秒短いのが日本の標準となる)ことを思うと、スタート進行をコンパクトにするのは利がないのではないか。しかしそれでも、オブザーバーの実働時間や全体の競技時間などを計算すると、スタート進行でもう30分試合時間が長くなるのは避けたくなる気持ちは重々理解できる。
