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トライアルのルール

全日本選手権のスタート順

 少し、というか、たいへんにマニアックな話かもしれませんが、全日本選手権でのスタート順についての解説です。
 スタート順はトライアルの定義によるものではなくて、MFJの全日本選手権特別規則によって定められているものですから、今後変わっていく可能性もあります。2015年現在は、以下のようなこんな感じで運用されています。

 トライアルは、時間との戦いのスポーツです。トライアルの解説原稿には「トライアルはタイムを競うモータースポーツではない」などと書いてしまいますが、他人とタイムを競うことはなくても、自分の時間とは戦わないといけません。
 時間との戦いというと、セクションでの持ち時間を思い浮かべる人が多いかと思いますが、1分とか1分半とかのセクション持ち時間が設定されたのはごく最近で、ノーストップルールが採用された2013年以降の世界選手権ではセクションの持ち時間はありません。
 時間との戦いは、全体の持ち時間の話になります。最近では、1ラップ目の持ち時間、そして競技全体の持ち時間が定められていて、これに遅れることなくスタートし、ゴールする必要があります。遅れると、1分につき1点ずつ減点されて、でも永遠に遅れてもいいわけではなくて、20分をすぎると失格となります。ぼんやりお昼ご飯を食べているライダーはまずいませんが、マシントラブルなどで深刻なダメージを負った場合などは、苦しい戦いとなってきます。
 そして、この持ち時間をしっかり管理するために、トライアルではよーいどんのスタートではなく、ライダー一人一人が時刻を定められてスタートしていきます。地方選手権や草大会などでは一斉スタート、どこのセクションからトライするのもご自由という制度もありますが、会場やコースの設定の都合によってこういう形式がとられています。本来的には、トライアルはオブザベーション(減点の管理)とタイムキーピングが二本柱になっていることは知っておいていいでしょう。これはトライアルがその名の通りトライアル(試験)であった発祥の時代、結果は時間内に帰ってこれたかどうかのみによっていたという歴史的な事実でもあります。
 という昔話はさておき、現在の全日本選手権です。全日本選手権は、だいたい100人程度の参加者が出場します。かつて、世界選手権では2分間隔一人ずつスタートが切られていました。これに当てはめると、全日本選手権では最初のライダーがスタートしてから最後のライダーがスタートするまでに3時間20分が必要てす。今の世界選手権は1分半間隔。これだと2時間半におさまるけれど、それでもずいぶんの長時間です。
 スタート間隔を短くするとセクション待ちの渋滞がひどくなるから、ほんとは1分半間隔あたりがミニマムなのではという気がするのだけれど(3ラップの競技だと、1ラップ目のセクション待ちの行列に2ラップ目の渋滞が重なったりして、えらいことになる)、最近の大会は競技時間を短くする傾向にあり、国際A級は1分間隔で、国際B級では二人ずつが1分間隔でスタートすることになってます。国際B級はいわば30秒間隔ということです。セクションの持ち時間が1分だから、30秒ずつ赤字が出ていくことになるのですが、実際には30秒もかからないセクションの方が多いから、なんとかなっています。
 さて、本日のお題はこのスタート順です。スタートは、あとから出ていったほうが有利ということになっています。急に雨が降ったり、最初はよかったのに誰かがラインを崩して走りにくくなったり、いろんな要因があって有利不利もむずかしいのですが、一般論として、後からスタートしたほうがいいというのは定説になっています。
 あとからスタートすると、先にスタートしたライダーのトライを参考にすることもできるし、先行者がラインを作ってくれているメリットもあります。スタート順がすべてではありませんが、勝負の結果にも影響が出ることが多いのがスタート順です。くじ引きでもじゃんけんでもいいのだけど、公正に決めないといけません。

2015第3戦の串馬さん2015年の開幕3戦を走って、話のネタ的にちょうどいいライダーがいらっしゃったので写真をご紹介しました

 全日本選手権、世界選手権でとられているのは、前回までのランキングに順でスタート順を決める、というやり方です。第2戦のスタート順は、第1戦のスタート順に準じて決められます。各クラス、第1戦の優勝者が第2戦では一番最後にスタートすることになります。第1戦は、前年のランキング順に準じます。国際Aスーパークラスは最後にスタートするのが前年のチャンピオンです。ただし国際B級と国際A級は、チャンピオンはそれぞれ一つ上のクラスに昇格するので、翌年にゼッケン1をつけることはありません。
 ランキングというのは1位から15位までにポイントを与えて、その合計点でポイントの多い少ないを競うという制度です。悩むのは、ランキングポイントが1点もないライダーをどう処理するか、ですね。
 国際A級は原則として、固定ゼッケン制となっています。1年の初めにゼッケンが定められて、そのゼッケンで1年を戦います。前の年にランキングポイントを獲得している選手は、前年の成績に準じてランキング順位が出てきますから、その順番でゼッケンが与えられます。
 1戦に15人のポイントランカーが生まれるわけですから、7戦あると最大105人のポイントランカーが生まれることになりますが、実際には毎戦ポイントを獲得する人がけっこう多いので、1年で誕生するポイントランカーはだいたい30人ほどになります。
 国際A急に限っては、ゼッケン順はこの30人ほどの次に全日本の国際B級クラスから昇格してきたルーキーたちが並びます。以前は続けてたとえば31、32……とゼッケンを与えられていたのですか、今はルーキーゼッケンといって、国際B級チャンピオンには01番、ランキング2位にライダーには02番と、ゼロ番台の数字をつけたゼッケンをつけて大会に参加することになりました。全日本以外で、地方選手権で国際B級ランキングトップになると国際A級への昇格が認められますが、この昇格組はルーキーゼッケンをつけることはありません。
 ランキングポイントを持っていないライダーのスタート順は、各主催者(MFJの地方ブロック)が決めていますが、ゼッケン順(ゼッケンの若いほうが遅いスタート)となることが多いようです。
 この際、ゼロ番台のルーキーゼッケンのライダーは、本来取得するはずだった30番前後のゼッケンがあるものとして決められます(2015年の例でいえば27番から31番で、このゼッケンは実際に欠番となっています。01番のルーキーゼッケンは見かけ上のもので、事務上は27番のゼッケンを持っている、ということになります。過去にはこのお約束が徹底されていないことが何度かあって、ルーキーがかわいそうなこともありました)。
 スタート順を文字で並べると、まず最初に前年のポイントもその年のポイントも獲得していないライダーがゼッケンの大きい順にスタートしていき、次にルーキーゼッケンの数字の大きいライダーから、そして前年にポイントを獲得したもののその年にはまだポイントを獲得していないライダー、そしてその年にポイントを獲得したライダーが獲得ポイントの小さい順にスタートしていき、ランキングトップのライダーが最後にスタートするということになります。
 一方、国際B級はまた少し様子がちがいます。国際B級はゼッケンが必ずしも固定ではないからです。国際B級のゼッケンは、前の年にポイントを獲得したライダーには固定ゼッケンが与えられます。これがだいたい30人くらい。前の年にポイントを獲得していないライダー(国内A級などから昇格してきたライダーを含む)は、毎回ちがうゼッケンを与えられます。
 一度ポイントを獲得すると、その時のゼッケンがその年の固定ゼッケンとなります。ポイントを獲得すればスタート順はランキング順となるので、ゼッケンが何番でも試合の有利不利は関係がないということになります。
 つまり前の年にポイントを獲得していないライダーは、ポイントを獲得するまで、毎回ゼッケンを貼り直して大会に参加しなければいけないことになります。めんどくさそうです。早くポイントを獲得しろよ、という叱咤激励をこめた意地悪ではないかとも思ったのですが、スタートがゼッケン順で決まるとすると、ポイント無獲得ライダーのスタート順が毎回同じというのは不公正になるのかもしれません。つまり事務局が毎回ランダムに割り振るゼッケンが、そのまま公平なスタート順となっているということです。
 世界選手権では(今はちがうようですが)スタート順はくじびき、という時代がありました。参加ライダーが順番にくじを引いて、ぼくは1番、ぼくは35番と一喜一憂するわけです。しかしチャンピオン争いをする二人があっちとこっちにいるのでは、観客にとっても利便性が悪いし、あんまり有利不利に差がありすぎる。それでトップ5の中でくじ引き、トップ5からトップ10までがくじ引き、なんて細かくくじを引いた時代もあります。でもこれをやると、くじ引きをしてからスタート時刻をプリントして公式通知として発表しなきゃいけなかったりして、これもまためんどくさいことになりそうです。こういう作業が、てててとすぐにできちゃう(裏を返せばチェックが甘いということだったりしますが)ヨーロッパのトライアルはそれはそれですごいと思います。
 というわけで、毎回ゼッケンを作って貼り替えている国際B級のみなさんが少なからずいらっしゃると思いますが、15位に入って1ポイントでもとってしまえば、今年の残りシーズンはゼッケンを貼り替える必要はありません。見る側とすれば、おまけとして、国際B級のこれから芽の出る有望株たちは、走っている写真のゼッケンを確認しさえすれば、どこの大会でのシーンだったのかを特定することができるわけです。

2015第1戦の串馬さん

2015第2戦の串馬さん

2015第3戦の串馬さん

 こちら、国際B級の串馬さん。これまでに全日本選手権でポイントを獲得したことはなく、第1戦では44番(写真上)、第2戦では39番(写真左)、第3戦では33番(写真右)が与えられました。そして第3戦で、串馬さんは12位に入り、念願のポイントを獲得。第4戦からは33番が串馬さんの固定ゼッケンとなるわけです。ポイントを獲得して、2015年シーズンのランキングを手に入れましたので(何位になるかはともかく)2016年シーズンも、何番になるかはともかく固定ゼッケンが与えられることになるでした。

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