大きな災害が相次いでいます。災害支援にトライアルは最適。しっかり腕を磨きましょう。

東京MCショーと、トライアル

東京だけなんだけど、モーターサイクルショーでまたがり体験ってのをやってもらって、何年になるだろう。今年も3日間、たくさんの人にトライアルバイクに触ってもらった。多くの場合はさわってもらうくらいだったけど、タイミングが合えば、ここから始まるトライアルの奥深さを感じてもらうことができたと思っている。

3日間のイベント中、トライアルデモンストレーションが5回行われた(1回は風雨で中止になった。ライダーはやる気満々だったけど、おきゃくさんがかわいそうだから)。いつもはデモの時間はデモを見に行ってたりしたんだけど、今回は杉谷が1回、西巻が1回見ただけで、ご飯食べる以外はたっぷりお仕事させていただいた。デモは、今年は将来への展望を見据えて、小川友幸、野崎史高、久岡孝二、中川瑠菜の4人がパフォーマンスを見せてくれた。


このショーはモーターサイクルの楽しさを存分に展示してあるけど、実際に走ってるのを見られるのはトライアルと白バイだけで、そして実際にハンドルを握ってオートバイを操作できるのは、MFJにあるまたがり体験コーナーとキッズバイクコーナーのふたつだけだ。ほかのオートバイはまたがれても、まちがっても転ばないようにがっちり固定してある。ここのコーナーのバイクは固定されてないし、なんならスタンドをかけたまま人間にまたがられるとスタンドが曲がっちゃうので、いともかんたんに転べる状態で並んでる。これはトライアル(とMFJのこのコーナー)の特権でもある。もう何年もやってるからねぇ。


さてさて、こういうレポートがおもしろいかどうか分かんないけど、こちら側から見たまたがり体験、というのを振り返ってみる。お客さんは、整理券を持ってる人と持ってない人がいる。整理券は、去年か一昨年から出すようにしたんだけど、整理券もらったままそのまま忘れちゃう人もいるみたいで、発行した分全員が体験しにくるわけじゃない。オートバイはあるから、整理券を持ってない人も、オートバイが空いてれば体験してもらうようにしたので、整理券を持ってる人にはちょっとじっくりやってもらおうと思ったけど、くれるから整理券もらったけど、そんなに一生懸命になれない人もいるし、その気もないのにまたがってみたらおもしろくなっちゃって何度もやって来る人もいるしで、そういう人それぞれのいろんな感じを見られるのが、おもしろい。


お客さんと接してるのは、3分とか5分とか、だいたいほんの一瞬だ。牛丼屋さんなら並盛りか大盛りかを聞いて丼を出せばいいけど、こちら、その間に少しでも上手になってもらおうと思うから、まずその一瞬の出会いから、その人の技量やら癖やら性格をつかまなくちゃいけない。そんなの知らなくたって技術を教えるだけでいいのかもしれないけど、同じことを言っても、人の性格によって、まったく(おもしろいくらいにまったく! この人は耳が悪いのか、日本語が分からないのかなと心配することもあった)。

並んでる顔を見ると、たいていの人はつまんなそうに待っている。年齢を重ねた人は、特につまんなそうな顔をしている。ところがしかし、本当につまんないのかと言うと、そうでもないみたいだ。つまんなそうな顔をしたまんま、これは奥が深いですね、おもしろいですね、と引き込まれていく人もいるし、見る見る表情が生き生きしてくる人もいる。

どんぶりで統計づけちゃうと、若い人ほど楽しそうにしているし、男性より女性のほうが楽しそうに待っている。中には、他の人がやっているのをじっと観察している人もいるし、そういう人は予習が完璧でさぞすっとできるかと思いきや、そのとおり最初からちょっとうまい人もいるし、見るも無残な人もいる。もうほんとに人それぞれなのが、おもしろい。

オートバイを支えたり教えたりする方もいろんなのがいて(今回は大御所、エトスの近藤さん、ベータの門永さん、シェルコの平野さん含めて、ブースには10人くらいスタッフがいた。こんなに人がいるのは初めてで、たぶんだから、いつもより多くの人に体験してもらえたと思われる。


こっち側がどんなふうに手ほどきをするかは、なんにも打合せをしてないから、人によってきっとぜんぜんちがうことを言ってるだろうし、個人的には、こういうのも相性があるだろうなぁ、相性が合わない人とだと、お楽しみ度合もちょっとちがうだろうなぁと思う。ぼくんところへきて大当たりだった人もいるだろうし、大外れだった人もいると思う。

もっといえば、何人も相手をしていると、この人とはやりたくないなぁ、と瞬間的に思ってしまう人だっている。なんなんだろうね。一目ぼれの反対みたいな感じ。だけど一目ぼれした人とずっとうまくいくかというとそうでもない場合が多いのといっしょで、こと人苦手そうだと思った人が、やってみたら意外に相性がよかったというのもある。人の感覚なんてそんなもんですね。

年齢はともかく、カップルでやってきた人たちは、ほとんどの場合二人ともやっていく。だけど中には、ワタシはできないからいいです、と辞退される女性の方がいるし、と思えば女性だけやって帰っていくカップルもある。男女できた場合、自信たっぷりやる気満々なのは男の子ってことが多いけど、ところが女の子のほうがするっとできてしまうこともけっこうある。


見てると、スタンディングスティルができなくて往生している人は、オートバイのセンターが出せないのと(センターを出して、と言うとハンドルをまっすぐにする人がとても多かった。いういうもの?)、コントロールしてやろうとしてどったんばったん身体を動かしてめちゃめゃちなっていくパターンがまず第一。免許もない女性は、なんだかわからないままオートバイの上に立たされて(支えててあげる、手は放さないからと少しだけウソを言う)、じっとしててね、言うとほんとにじっとしている。小さな子どもだと、さらにじっとしている。だからこっちがセンターを出してあげて、そっと手を放したら、1秒や2秒、何なら5秒くらいは立っている(実はほんの少し空気圧を低めにしたら、トライアルバイクは一人でも立つ。だから素直に立っててくれればしばらく倒れないのはあたりまえといえばあたりまえだ)。機転の利くおねーさんは、そこから言われた通りのことをしゃきしゃきとこなして、男の子が七転八倒しているのを尻目にするするスタンディングスティルができてしまうのだった。

デモを見に行ったら、お客さんにスタンディングスティルをやってもらうというメニューがあった。手を上げて小川友幸号にまたがったのは、せっせとまたがりブースにやってきて練習していった彼だった。ちょっと上手にできてデモMCの万法さんにほめられていたけど、そのあともう一度おさらいにやってきたときに聞いてみたら、もっとうまくできる予定が失敗した、ということだった。練習ではうまくいくのに本番ではそれができないなんて、もう40年近くトライアルをやってる小川選手だってそうなんだから、あなたの悩みは当然です。トップライダーと同じ悩みを共有できたのが喜びでした(しかも同じマシンで、だ)。


そんなこんなで、まぁ3日間なかなかの重労働なんだけど、こっちはこっちで人間観察をさせてもらっていると思うと、なかなか有意義でお勉強になる時間を過ごさせていただいた。中に何人か、トライアルを始める人が出てきたら、それが当日せっせとマシンを支え続けたスタッフ一同の本望です。3日間、ありがとうございました。

トライアルに覚えのある人はたいていへたくそだ。
3日間で何人やったのかな? 何人か、トライアル始めてくれるかな?