世界選手権が開幕した。会場はベアナビス(Benahavís)。スペイン、イベリア半島の最南端に町で、大西洋にも近いが、この町自体は海に面してはいない。
さて今シーズン、いろいろな試合システムの改革があった。採点ルールそのものは2024年にノーストップをやめて、今年は大きな変化はない模様。変わったのは、試合をどう進めるかというところだった。

Photo:Pep SEGALES
スタートして、12セクション(セクション数は15まで主催者が増やせるはずだけど、ほとんど12で固定化されている)を2ラップ、途中でインターバルが入るというのはこれまでと変わらないが、今年からは、ラップと呼ばずにレース1、レース2と呼ばれ、それぞれ独自の順位がついて独自の選手権ポイントが与えられることになった。
これまで、1ラップ目にトップでも2ラップ目に大崩れして16位以下に落ちたら、その日はなにもしていなかったのと同じ結果になる。しかし今年からは、レース1で優勝、レース2は20位でした、という結果が残る。その日の表彰台は、ふたつのレースのポイントトータルが大きい者が上位に上がる。同点の場合は、トータル減点数が少ない者が上位となる(らしい)。
これまで、1日の試合の勝者は一人だったが、このルールだと最大二人の勝者が出る。そしてこの二人のいずれもが、最後の表彰台には乗らないという事態も起こりえる。さっきの例のように、1位と20位、20位と1位より、両レースを2位で終えた方がポイントは高いからだ。
年間タイトルを争うには、表彰台に乗るかどうかより、レース1、レース2で好成績を収めるかが重要になる(すべて好結果を残せば、必然的に表彰台にも乗るしチャンピオンもとれるのだが)。
決勝前には、以前行われていた予選が行われることもあり、レース2の後にはパワーセクションと呼ばれる日本のSSのような特別部隊が設けられることもある。今回、土曜日にパワーセクションが設けられたが、日曜日にはなし。選手権ポイントが与えられないなど、あんまり必然性のないシステムだから、もしかするとアイデア倒れで消えていくかもしれない。

Photo:Pep SEGALES
TRIAL GP
2025年、メインカテゴリーたるGPクラスは、いよいよ参加者が減って、スタートしたのはたったの8名だった。中堅のベテランの多くは、このクラスでの苦戦より他のジャンルやカテゴリーでの勝利を目指した。それでも、ヒューゴ・デュフレスに続いて、ジャック・ピース、アレックス・カナレスがこのクラスに新規参入。まずは過酷なセクションに慣れるのが仕事だ。

トニー・ボウ Photo:Pep SEGALES
王者トニー・ボウに、若いガブリエル・マルセリは追いつけるか、去年は出鼻をくじかれたハイメ・ブストのスタートダッシュはなるか。ラガの後を継いだアニオル・ジェラベルト、唯一のイタリアン、マテオ・グラタローラと、参加者が少ないだけに、それぞれの個性が際立つGPクラスだ。

ハイメ・ブスト Photo:Pep SEGALES
今回はボウが3レースを制し、ブストが1レースで勝利した。もしも去年と同じ集計をしていたら、日曜日の勝者はボウになっていた。新ルールで、ブストは1レースを勝ち取ることができたのだ。
TRIAL GP-WOMEN
女子GPは、女王エマ・ブリストがいなくなって、ずっと2番手で苦戦していたベルタ・アベランが一気にトップをぶっちぎるかと思いきや、開幕のレース1では思わぬ苦戦を強いられた。土曜日のレース1では5位。勝利はイタリアのソフィア・ラビノだった。ラビノは土曜日の勝者となったが、レース2はアベランが調子を戻して勝利した。

ソフィア・ラビノ、左はベルタ・アベラン Photo:Pep SEGALES
翌日曜日、アベランはようやく実力を遺憾なく発揮できた。逆にラビノはレース2で調子を落として4位となったので、ランキングは4ポイント差でアベランがトップとなっている。

ベルタ・アベラン Photo:Pep SEGALES
A04TrialGP_Women A04TrialGP_Women-1
TRIAL 2
GPと同じくすべてのラウンドで開催されるT2。今年はブノア・ビンカスがEMに乗ったり、ミケル・ジェラベルトがホンダRTL-Eに乗ったりで話題を集めている。ガスガスTXT-Eには2023年チャンピオンのソンドレ・ハガが乗ってトップ争いを演じているから、このシーズンのタイトルはEV同士で争われるのかと目されたが、ふたをあければちょっとちがった。

ブノア・ビンカス。右のチームマネージャーはジェロニ・ファハルドだ。 Photo:Pep SEGALES
ジェラベルトとハガは、ときどきいい調子を見せるものの、2日間を通じてはもうひとつ。EV争いの中ではビンカスが最も好調だった。ビンカスは日曜日のレース1で勝利。EVでの3勝目、自身EVでの初勝利、そしてEMに2勝目を献上した。

ソンドレ・ハガ Photo:Pep SEGALES

ミケル・ジェラベルト Photo:Pep SEGALES
しかし、土曜日に両レースで勝利したのは、ビリー・グリーンだった。グリーンは日曜日も3位と4位に入って、開幕戦だけでランキングポイントで13ポイントのリードを築いた。

ビリー・グリーン Photo:Pep SEGALES
グリーンは、土曜日は勝利者となったが、日曜日には勝利を逃した。日曜日、レース1の勝者はビンカス、レース2はレース1の29位からいきなりの初優勝を果たしたチェコのダビド・ファビアンだった。そして両レースの総合ポイントで決まる日曜日の勝者は、去年のT3チャンピオン、ジョージ・ヘミングウェイだった。そして2位には兄のハリー・ヘミングウェイ。この兄弟は今年の台風の目になりそうだ。そしてランキングのトップ4を見ると、ランキング2位のビンカスをはさんでイギリス人が3人。世界一強いはずのスペイン勢はアルナウ・ファーレが5位、次なるスペイン人が、ホンダエレクトリックのミケル・ジェラベルトでランキング9位となっている。
そして今回のハイライトは、廣畑伸哉の活躍だった。廣畑は土曜日のレース1を惜しいところでノーポイントとなった後、レース2では13位となって今季初ポイント。さらに翌日のレース1では7位とすばらしい好結果をあげた。残念ながらレース2は21位と低迷してしまったが、4レース走って2レースでポイント獲得だから、大きな成長が見られる3年目の廣畑だ。

廣畑伸哉 Photo:Pep SEGALES
TRIAL 3
この開幕戦は、FIMのトライアルカテゴリーが全部開催される。GP、T2、T3の男子クラス3つが世界選手権、GP-WとT2-Wの女子クラスはFIMカップと位置づけられている。
このクラスは、黒山陣の本格参戦で盛り上がる。その黒山を退けて開幕戦勝利したのは、去年のランキング5位、ヨナス・ヨルゲンセン、ドイツ人。これが彼の初優勝となった。

黒山陣 Photo:Pep SEGALES
レース2で勝利したのはリオン・ランド、アメリカ人だ。黒山はレース2では4位。安定して上位をキープする難しさを実感した。
日曜日、トップ争いはヨルゲンセンと黒山。しかし今度は黒山がトップを守った。黒山陣、初優勝だ。
レース2はヨルゲンセンが勝利。黒山はといえば、またもレース2で調子をくずして6位。黒山はランキング2位をキープした者の、トップのヨルゲンセンには14ポイントの差をつけられてしまった。ここから巻き返しだ。

T3、2日目表彰式。黒山陣は2位 Photo:Pep SEGALES
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TRIAL 2-WOMEN
GP-Wを走っていて、お母さんになったのを機にT2-Wに活躍の場を移したイタリア人のサラ・トレンティーニが、両日ともにレース1を制してランキングトップに立つ。土曜日のレース2を勝利したのはマチルダ・アーボン、イギリス人。日曜日のレース2は、EMのマルゴー・ペナが制した。ペナもEMも、ウイメンクラスでの勝利は初めてだ。

サラ・トレンティーニ Photo:Pep SEGALES
ランキングはトレンティーニが10ポイントを離してトップだが、2位にはペナがアーボンに9ポイント差でつけている。