●トライアルGP

雨だった。それもなかなかの雨だった。
「こんなに降ったことはないんじゃないか?」とこの何年か、一緒に宿ともてぎを移動して日本GPを取材しているスペインのペップが言うんだけど、最初は、そんなことはないな、もてぎといえば雨という印象だよ、昔のことを忘れてるんじゃないの? なんて思ってたもんだけど、いやいやどうして表彰式が終わる頃あらためて考えてみるに、こんなに降ったことはなかったかもしれない。表彰式の頃には止んだりして、雨が一日中降るなんてことはまずなかった。今日は、ほんの15分くらい止みそうな気配になっただけで、それも結局期待させただけで、ずっと降り続いていた。
もてぎの土は、濡れると凶悪になる。どこもかしこも滑る、という印象だけど、セクションづくりを担当した成田亮さんによると、土質は場所場所によって微妙に全部ちがう、ひとつのセクションでもいろんな土質があるということだった。でもまぁ、雨が降ったら最後、全部滑る。場所によって、うんと滑るところとすごく滑るところとびっくりするくらい滑るところのちがいがあるくらいだ。
第8、第10、第12あたりは、岩盤セクションで、ここは(比較的)天候の影響を受けない。地獄のようだったのは第4、第5、第6。とにかく登れない。第5は、レース1でトニー・ボウが1点で抜けた以外、みんな5点。T2(トライアル2)、GPW(GPウイメン)は絶滅だった。しかも5点になってからがまた地獄で、滑り落ちればあぶないし、ゆっくり下ろす術はない。ライダーとマインダーがつっかえ棒になってマシンと一緒に泥の絶壁を滑り落ちてくる。
こんな中、第6はT2とGPにいちるの望みがあった。このセクション、GPWはGP、T2と同じ斜面を登っていくから至難極まる設定だった。とはいえ、GPのライダーが軽々クリーンするわけでもなく、あと一歩で登れずマシンともども滑り落ちてくるから、見ていても結果が見やすい。アニオル・ジェラベルトとハイメ・ブストがクリーンしたのはお見事だった。
雨のトライアルは、ライダーだけでなく見てる方も泥々びしょびしょだが、それだけに見ごたえはたっぷり、トライアルの醍醐味がそこここに詰まっているように思える。

それでも、勝ったのはやっぱりトニー・ボウだった。ボウとても5点はある。もったいない失敗もあった。しかしそれは、今日のトライアルがそういうトライアルだからだ。レース2でこそ2位のブストに5点差に迫られはしたが、レース1は16点差のぶっちぎりだった。

2位ブストは切れ味たっぷり、3位ガブリエル・マルセリの粘度の高いライディングを見せてくれたが、ボウの完成度は二人をやはり上回っていた。

4位と7位をマテオ・グラタローラとアニオル・ジェラベルトが分け合い、5位と6位をジャック・ピースとアレックス・カナレスがわけあった。両レース8位はヒューゴ・デュフレスで、9位がパブロ・スアレス。スアレスは両手首の負傷で去年1年と開幕2大会を欠場したが、もはや休んでいる場合ではないと現場復帰したが、まずは最下位からのリハビリテーションとなった。
●トライアルGPウイメン

ベルタ・アベランとソフィア・ラビノの一騎打ち、シーソーゲームのようになっている今シーズンだが、ここまでアベラン5勝でラビノ3勝と、ランキングではアベランに分がある。
しかしレース1では、またまたラビノが勝った。後半第10と第12でアベランが5点に、そこをクリーンしたラビノが、6点差でライバルを下して4勝目。アベランは3位に8点差での2位となった。
レース2、今度はアベランが調子を戻した。これも今シーズンのパターンとなっている。アベランのレース1での勝利は1回のみ、レース2ではこれが5回目の勝利だ。対してラビノは1ラップ目のアベランと同じ失敗で、しかしラビノは4位に沈んでしまった。2位表彰台には乗ったが、チャンピオンシップ争いではちょっと手痛いことになった。
両レース3位はアレシア・バチェッタ。日本にも来たイタリアの新鋭だが、GPクラスでポジションを着々と向上させている。
●トライアル2

ホンダのホームで、RTL ELECTRICに乗るミケル・ジェラベルトが、ついに表彰台の一番てっぺんに乗った。ジェラベルトはこれまでポルトガルの2レースで勝利しているが、総合優勝を果たしたのはこれが初めてになる。
それぞれのレースは、レース1の覇者がアルナウ・ファーレ、レース2がハリー・ヘミングウェイだった。どちらも1位と6位を分けあっていて、2位と3位でレースをまとめたジェラベルトが優勝ということになった。
今年、1ラップ2ラップをレース1、レース2と呼ぶようになったが、呼び方だけでなく、それぞれのレースでランキングポイントが与えられるようになった。もてぎ1回で最大4連勝も可能ということだが、表彰式は、そのポイントに応じた順位でおこなわれる。今回は表彰台の2位と3位が各レースの優勝者だったが、レース1で優勝、レース2でノーポイントのような成績だと、各レースの勝者が表彰台に現れない、ということもあり得る。ちょっと不思議なシステム。
GP級ライダーによるEV争いは、2位と3位のジェラベルトが当然トップだが、次点がソンドレ・ハガ。ハガは4位と5位で総合5位。EMでは初登場のブノア・ビンカスは9位と4位で総合6位となっている。

日本勢は、黒山健一が気を吐いて、レース1で3位! レース2では11位だったが、総合ではビンカスに次ぐ7位を得た。
日本勢2位は氏川政哉でレース2を10位として13位。野崎史高もレース1で10位に入りポイントは氏川と同一、氏川はレース1をマシントラブルでリタイヤしているが、順位をつけるのはポイント順で、レース2の成績を優先する、ということになっている。
日本勢というかなんというか、廣畑伸哉はレース2で14位となって総合17位。今シーズン3回目のポイントを獲得したが、現時点での日本人のランキング最上位は黒山に譲っている。
小川毅士は同点クリーン数ひとつ差でレース2でのポイントを逃し、武田呼人は2点差でレース1でのポイントを逃している。
●スタート順