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好調黒山健一、シーズン3勝目

黒山健一が快勝した。第3戦、第4戦に続く、今シーズン3勝目。3勝をあげたのは黒山ただ一人で、ランキングポイントでも2位の氏川政哉に17ポイントを離している。

黒山の強さは、シーズン3勝目ということでも明らかだが、もうひとつ、今シーズンは一度も表彰台を逃していない。第5戦 広島・三次灰塚で3位とちょっと足踏みをしたものの、それでも3位表彰台を獲得している。今シーズン、勝者は4人、表彰台獲得者は7人もいて、顔ぶれが広い。そんな中で、黒山だけが、確実にその一席をキープし続けている。


IASのランキング争いは、13年ぶりのタイトル獲得を狙う黒山と、初めてのタイトル獲得を目指す氏川の一騎打ちだ。この二人以外には、事実上タイトル争いの権利はなくなっている。二人のここまでのポイント差は12ポイントだったから、残り3戦で4ポイントずつつめていけば両者は同点となる。氏川が勝利して黒山が2位になると5ポイントの差がつく。これが3回続けば氏川がチャンピオン。これ以外の結果だと、黒山の戦績次第でタイトルの行方が変わる。つまり氏川が自力優勝をするには、ここからの3連勝が必要だった。


1年前のSUGO、黒山は4位、氏川は5位と、二人ともほろ苦い結果を残している。黒山は、このときの印象がひときわ深いという。この大会で、ヤマハは初めてTY-E3.0を投入し、黒山に託した。黒山はそこまでランキングトップにいながらも、藤波貴久に勝利されて4位に甘んじ、小川友幸に2位に入られたことで、タイトル争いから後退していった。

藤波貴久に完敗した一戦だったと黒山は振り返る。3.0のデビューを飾れなかった、その思い残しもある。今、黒山と氏川は同じ3.0に乗っているが、その時のリベンジを果たすのは黒山にしかできない仕事だった。

今回のセクションは、オールクリーンも夢ではない神経戦、という見立てだった。3人が1ラップ目にオール5点だったから、もちろん簡単なセクションではない。しかし黒山は、10セクション中9セクションでクリーンした。この乗れっぷりは比類ない。

どのセクションも、簡単ではない。だからちょっとミスをおかせば、簡単に5点になれる。3位となった小川毅士は、1ラップ目は5点ふたつだけで8つのクリーンを出しているが、2ラップ目は13点も減点を増やしてしまった。ちょっとしたミスが、そこまで減点してしまう可能性をもつセクション群だった、ということだろう。

一番の勝負どころは、ラップ中盤、中杉トライアルパークからちょっと離れた森の中にある第6セクションだった。人工物が素材のメインとなっている中杉のセクション群に対し、第6と第7は自然地形だ。第6は、さらに深い谷に設けられていて、黒山以外の全員が5点になった。難易度自体もかなり高いが、1分で走るにはちょっと長い。もうひとつポイントが少なくても勝負どころには変わらなかったんじゃないかとも思わんでもないが、氏川は残り時間わずかで出口へ向かおうとした結果、マシンが何回転もする大クラッシュを演じた。マグネットスイッチが義務になってからこういうシーンは珍しいが、時と場合によってはまだあり得る、ということだ。他のライダーも、残り時間の少ない中で走りきろうとするから、ちょっとずつトライが乱れていく。


黒山は、1ラップ目は3点、2ラップ目はさらに減点を減らして2点でここを抜けた。他は全員が2ラップとも5点だから、ここだけで7点のアドバンテージを得たことになる。まさに勝負どころだ。

1ラップ目の黒山は、第9セクションで痛恨の5点を喫した。これが黒山のこの日の唯一の5点だった。建設資材のブロックに向かうのに、黒山は止まっていこうと決めていたが、直前を走った野崎史高が止まらずにするりと抜けていったので、つい止まらずに行く選択をしてしまって、5点になってしまったのだという。ここで5点でも黒山の1ラップ目はトップ。2ラップ目は10セクションすべてに5点なしで、第6で2点、最終で1点のたった3点。オールクリーンとはいかなかったが、試合では想定外のことが起きるのがふつうだから、3点は考えられる最善の結果とも言えた。

10セクション2ラップを終えて、黒山の減点は12点、2位氏川は23点。その差は10点以上あったから、SSでの逆転は不可能だ。SSはなかなかの難セクション(難セクションというより、クリーンをするにはバクチのような走りを繰り返さなければいけなかった)で、ライダーがどう攻略するのかとの興味はあったものの、勝負はすでに決着がついていた。

黒山は、残りは2戦が2位と4位なら氏川の結果を問わずタイトルを決めることになる(3位2回では自力優勝とはならない)。黒山のチャンピオンは2012年以来。13年ぶりにやってきたタイトル獲得の大チャンス。これは黒山の個人タイトルであると同時に、ヤマハが電動マシンTY-Eで初めて獲得する全日本タイトルでもある。

ヤマハがTY-Eで全日本に参戦を始めたのは2023年からだが、黒山がTY-Eに乗り始めたのは2018年にさかのぼる。世界選手権のEクラスに参戦するために全日本を欠場して始まったTY-Eチャレンジ。その集大成が、まもなく実を結ぼうとしている。

氏川は3戦連続の2位表彰台。タイトルを獲得しようとする氏川の前には、往年のビッグネームが次々に立ちはだかってくる。


3位は小川毅士。2ラップ目の失点で2位から3位となり、さらに野崎、黒山陣を相手にSSで3位表彰台を争うことになったのだが、追撃をかわしきった。小川はこれでランキング4位に浮上したが、ここまでのランキングトップ7の中で、唯一表彰台獲得実績がなかった。ようやく今シーズン初の3位を得て、一安心といったところだ。


4位は大躍進、黒山陣が入った。1ラップ目5位、2ラップ目4位で野崎に1点差の5位でSSを迎え、SS2を3点で抜けて逆転4位を得た。


黒山陣のスコアは、じっくり見るとちょっと興味深い。1ラップ目には4つの5点があってトップグループとしてはまぁふつうだが、2ラップ目は5点一つで10セクションを走りきっている。鬼門の第6は黒山健一以外全員が5点だが、健一以外のライダーは、この第6の他に、どこかで5点を取っているのだが、唯一陣だけは、2ラップ目に5点を第6だけに抑えている。反面、細かい減点がちょっと多い。このあたりの精度が、ここから(全日本での)順位を上げていくための黒山陣のテーマとなりそうだ。SSを前に「今日は勝つ予定だったんですけど、ちょっと勝てなかったです」と試合を振り返った。このビッグマウスぶりが頼もしい。

黒山陣に逆転された野崎は5位となった。ランキング3位はまだ安泰。優勝した前戦ではどこでもピタッピタッと決まる抜群の走りを披露したが、今回はぽろぽろと足が出て、則りぶりが悪かった。


6位は久岡孝二。2ラップ目は黒山陣と同点の13点でラップ3位で追い上げ、8位から6位までは浮上したものの、もうひとつ追い上げきれずだった。久岡のランキングは7位。第4戦以降欠場が続いている小川友幸と同点で並んだところだ。


7位柴田暁は、新しいインジェクションマシンを投入したが、クリーンセクションでクリーンしきれず、久岡と同点ながらこの順位となった。


さらに低調だったのは武田呼人。1ラップ目は6位だったが、2ラップ目に調子を乱して、10セクション中7つの5点。2ラップ目だけを見ると12位と低迷してしまった。

SSにはこの他、今シーズン初めて10位以内となる磯谷玲と、シーズン2回目のSS進出となった宮澤陽斗が進んだ。今シーズン4回目の参戦となった野本佳章は宮澤に1点差でSS進出を逃して11位となった。

●国際A級

若手の高橋寛冴とベテラン平田貴裕が一騎打ち。ランキングを追いかけると興味深い。今回は平田が5点差で髙橋を下し、2勝目を挙げた。高橋もここまでに2勝をしていてここはイーブン。2位3回6位1回の高橋と、2位2回3位1回4位1回の平田のポイント争いは、ついに平田が1ポイント差まで追い上げてきた。こうなると、最終戦でどちらか上位に入った方がチャンピオン獲得、となりそうだ。


高橋は1ラップ目にベストラップ16点をマークするも2ラップ目に3つの5点で後退してしまう。逆に平田は2ラップ目に17点の自己ベストマークして追い上げた。


「勝ててよかった。勝てないと、カミさんが不機嫌で、結果を送っても既読にならないんです」と平田の勝利の弁。

3位は黒山太陽。初めての表彰台登壇となる。平田、高橋ともに大会終盤で調子を崩したのに対して、黒山は2ラップ目後半に好調を発揮した。岩盤を登りながら美しくターンを決めた最終セクションのクリーンは黒山だけ。このクリーンで3位争いを決着させた。

8つのクリーンで最多クリーン賞をとった中里侑が黒山に1点差で4位、中里も、ラップ後半での失点が痛かった。

小椋陽が中里に2点差で初めての6位入賞を果たした。以下、村田慎示6位、森岡慎哉7位、小野貴史8位とRTL勢が続き、ちょっと不本意な9位のルーキー永久保圭をはさんで、10位がやはりRTLの砂田真彦。11位の神長叡摩は昇格以来の初めてのポイント獲得となった。

●レディース

土曜日の下見の時点では、セクションが簡単、という声が上がっていた。セクションの設定にはキマリがあって、レディースのセクションの半分はIBと同一とするもの、となっている。それに合わせて、当日は難度があげられたが、当日になって突然難度の高いセクションを見て慌てたライダーもいるようだ。レディースには地方選手権NBに参戦経験があれば参加資格があるので、それを思うとIBセクションは厳しいし、とはいえ全日本の格式というものもあるだろうとこのあたりはさじかげんがむずかしい。


そして結果は、中川瑠菜がシーズン6連勝のストレート勝ちでチャンピオンに花を添えた。ただし内容的には辛勝というべきもの。1ラップ目、最終セクションでミスがあって5点となり、ラップ順位は3位だった。トップとは1点差ではあるも、神経戦の中、気の許せない戦いが続いた。2ラップ目、中川はベストラップの5点をマークしてトップで逃げ切った。


ラップ5点をマークしたのは、中川だけではなかった。1ラップ目ふたつの5点で5位となっていた寺澤心結が、中川と同等スコアで8セクションを走りきった。これは見事なり。1ラップ目の減点があるのでトップとは5点差、2位と2点差の3位まで浮上で試合を終えたが、寺澤は2回目の表彰台獲得。中川、兼田歩佳と並んで8つのクリーンをたたき出した。


2位は小玉絵里加。もてぎ以来の2位表彰台獲得で、今シーズン3度目の2位となる。1ラップ目、減点11点のラップトップは見事だった。

ランキングは中川がトップを確定したが、ランキング2位争いは小玉と兼田が5ポイント差で最終戦にもつれ込む。

●国際B級

ランキングトップの寺澤迪志が負傷して欠場。世界選手権T3に参戦するため、今シーズン2戦を欠場している木村倭に、チャンピオン獲得の目が出てきた。31ポイント差を、残り2戦でひっくり返せるか、どうか。


その第一歩、今大会、木村は勝利。今回はオールクリーン勝負と目されていて、木村は確実にクリーンを重ねながら、早いペースでセクションを消化していった。1ラップ目はオールクリーンで文句なしのトップ。

しかし木村は2ラップ目に痛恨のミス。つるつるの森で5点になってしまった。これ以外はすべてクリーンで試合をまとめたが、減点5で試合を終えたライダーがもう一人いた。岡直樹、開幕戦で木村を破って勝利した13歳だ。岡は1ラップ目の最終セクションで5点になっていたが、2ラップ目はオールクリーン。


勝利は、超早回りをした木村のものとなった。木村は1ラップ目の8セクションを走るうちに、IBのほとんどを抜き去ってくるというペースの早さだった。

木村と岡が5点で1位2位、3位は6点が二人。5点一つ1点一つの小倉功太郎が3位で、5点はなかったが4ヶ所で減点のあった長谷川一樹が4位。長谷川は去年のSUGOで2位となって以来、2回目の出場にしてのこの結果だった。

さてタイトル争いは、寺澤が無得点、木村が25ポイントを獲得して、その差は6ポイントとなった。木村が優勝したとして、寺澤は2位に入れば1ポイント差でランキングトップを守れる。しかし現段階では、寺澤の最終戦参戦はまだ未知数という。IAに昇格できるランキング5位までの獲得競争は、寺澤、木村、岡までがポジションを確定している。