ガスガスが、ファクトリーによるレース活動を休止すると発表した。リリースでは、この決定により、生産車の開発や安定供給に専念することができると、前向きなとらえ方をしている。

ガスガスのファクトリー活動の継続が危ぶまれていたのは、すでに周知のことだった。ソンドレ・ハガのライディングによって、EMやヤマハに先がけて優勝した電動マシンTX-Eでだったが、ハガは2025年シーズン途中でエンジンマシンに乗り換える決定をした。スペアパーツが枯渇して、レース活動が続けられないからだったという。
トニー・ボウとタイトル争いをするハイメ・ブストの活動が、予算のないままに継続されていたのも、世界選手権日本大会で見えてきてしまった。
世界選手権に活動の舞台を求めるのは、メーカーとライダーにとって、憧れであり挑戦であり、絶好のコマーシャルの現場でもある。同時にお金のかかる活動でもある。全日本の現場では、トップライダーの活動を支えるより、底辺ライダーのサービスを充実させた方が、多くのお客さんを満足させられると広言していたインポーターさんもいた。今回、ガスガスが選択したのは、こういう方向なんだと思われる。
と同時に、トライアルは他のジャンルに比べると、ごく小規模の体制で開発からファクトリー活動までがまかなえる現場でもある。そのファクトリー活動を休止するというのは、財政的な制約が、かなりひっ迫していると思うしかない。
KTMの財政破綻が報じられて以来、KTM本社については救済の手だてが進んでいるとか、充分ではないにしてもいろんな情報が届いていた。KTMジャパンからも報道向けの情報発信があった。ただ、KTM傘下にあるガスガスなどについては、情報は最小限だった。ヤングマシンがおこなったKTMジャパンへのインタビュー(https://young-machine.com/2025/08/05/666021/)にはKTMはKTM、ハスクバーナ、ガスガスの3ブランドに注力すると書かれている。KTM破綻の報道以来、KTMとガスガスの関係についての言及は、これが初めてだったのではないか。
KTM傘下のガスガスは、KTMの財政問題に際してどうなるのかと心配なガスガスファンに対して、それは「これまでと変わらない無言の回答」になったかもしれないし、MVアグスタを手放すなどの前例から、ガスガスも手放す可能性があるのではないかと、さらに不安をあおることになったのではないかと思う。
今回の発表で、ライダーのハイメ・ブストや監督のアルベルト・カベスタニーは任を解かれることになるのだろうが、彼らが今後どんなトライアル活動を行うか、すでにシーズンインをしている2026年Xトライアルの舞台などから、その答えが導かれるのではないだろうか。
なおmotorsport.comによると、KTMの再建にはインドのバジャジ・オートが買収を進めているということで、バジャジはレース活動などを含めての大幅経費削減を目指す計画だという。
